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映画「獄門島」の指輪 〈映画の指輪のつくり方〉第89回

「むざんやな」(1977年「獄門島」)
文・〝美根〟

「犬神家の一族」「悪魔の手毬唄」に続いて、金田一シリーズ3作目「獄門島」です!
指輪地味に見えるってぇ?いやいや!つぶつぶ一つずつ作ってるとこ見て!

【危ないから島から出なさい!】
 雨宮という友人の依頼で獄門島にやってきた金田一。雨宮からの依頼というのは、復員船の中で一緒になった鬼頭千万太という男がマラリアで亡くなったことを鬼頭家に知らせてほしいということ、そして千万太が「自分が獄門島に生きて帰らなければ3人の妹たちが殺される。」と言い残し、その3人の妹たちがなぜ殺されなくてはいけないのか、できるなら未然に防いで欲しいとのことだった。金田一は獄門島に向かう船が出る船着場に辿り着くと、獄門島にある千光寺の和尚・了然と村長の荒木、漢方医の幸庵と出会い、千万太の訃報を告げた。なんでも、ちょうど時を同じくして、戦争で供出されていた千光寺の釣鐘が戻り島へ運ぼうとしていたところだという。また、獄門島の網元である鬼頭家は、本鬼頭、本鬼頭の分家、分鬼頭と別れており、本鬼頭の分家の息子・一(ひとし)は生きて復員船で帰ってきているとの知らせがあったという。金田一が知らせた本鬼頭の千万太の訃報から程なく正式に戦病死したとの知らせが届き、葬儀が営まれたが、千万太の3人の妹たちのうち、末の花子が姿を消す。捜索する中、境内から了然が金田一たちを呼び寄せる声が。階段を駆け上ると、木に逆さ吊りにされて死んでいる花子の姿が…。

【村じゃなくて島だと少し爽やかに感じるの、私だけ?】
 金田一のお散歩番組ですか?って感じでのどかに本編が始まるので、いきなり拍子抜けするんだけど、最初っから本筋に深く関わってくる場面の連発なので気を抜かないこと!若干、言葉の発音の仕方というか、設定として御国言葉が加わってるからってのもあるのかもだけど、言葉選びが現代と多少違ったり、「傷痍軍人」「復員」という個人的には本とか教科書で知ってはいるけど口語ではあまり聞き慣れてない言葉がたくさん出てくるので、慣れるまで若干聞き取りにくさがあったんだけど、でもね、それが味わい深くて良いんだ。今冒頭を見直していて気がついたんだけど、千万太の死を聞かされた和尚と村長と医者の表情とカメラが少しずつ引いていくわりと長めのカット。これ一番最後まで見てから、もう一回見ると良いよ!これ意図してるんだったらすごい作り込みだァ。

【キャスティングも楽しい!】
若き浅野よう子さんは、最初気が付かなかった!めちゃめちゃ可愛いくてあどけないのに妖艶さもある。口を大きく横に広げた時に今の面影と一致!今は主に声優さんとしてご活躍の池田秀一さんも若い僧の役で出演されてて、びっくり。Wikiで見てやっと気がつきました。そしてピーターさんも怪しげな鵜飼という名の役で登場。「薔薇の葬列」というデビュー作を大学の講義で見たことがあったけど、この中性的で影を帯びたこの役にぴったり。また、ここまでの2作品の中で同じ俳優さんが違う役を演じるケースが多くてこれも驚き。坂口良子さんは「犬神家の一族」に続いて、おしゃべりで噂好きで表情豊かでチャーミングな床屋の娘の役。美人なのに親しみのある可愛さ、全力で活かされていて素敵なキャラクター!かんわいい…。かたやそれぞれ全く違う役柄でなんと3作品とも出演している草笛光子さん。「犬神家の一族」では美人だが策略家で口の悪い犬神家の三姉妹の梅子、「悪魔の手毬唄」では最初の被害者・泰子の母で物静かそうでいて仁礼家に負けじと家柄にこだわり、詐欺師・恩田に翻弄される女性・敦子を、そして本作では、命を狙われる三姉妹の亡き母で、旅役者のお小夜として回想シーンに登場する。本作が一番気が狂っている感じで妖艶!舞台化粧はさすが松竹歌劇団のご出身、超美しいし気迫がすごい。鬼頭家に入り込もうとする執念や狂っていく様も恐ろしい…。三木のり平さんは全作に出演しているようなので、この後の4作目、5作目も要チェックせねば。
 金田一シリーズでは必ず1人は鬼畜な人物が登場するんだけど、本作の鬼畜は、亡き本鬼頭の当主・鬼頭嘉右衛門という人物。この人を演じるのがなんと、かっかっかっ!って笑う初代水戸黄門様(東野英治郎さん)なのよ!あんなに!素敵な!水戸光圀公であらせさられたのに!「獄門島」ではめちゃ怖い。…などなど。名優たちに圧倒されながら、若き頃のご活躍も拝見できる楽しみもあるぞ。

【未然に防がない名探偵】
 横溝正史作品をオマージュしまくっている「TRICK」というドラマでよく「手間のかかることを!!!」というセリフが出てくるのだが、「獄門島」でもそんなシーンが出てきてちょっとツッコミどころになったりして面白い。今回はその辺りの場面を指輪にしてみました。どうゆうことかは映画を見てね。また、あいも変わらず事件を未然に防がないことで有名な金田一が頭をぽりぽり真相を暴いていくのだが、石坂浩二さんのあの声と語り口の説得力の高さが丸く収めていて、逆にすごいなと感嘆。納得させられちゃうんだからしようがない。人情派ではなく淡々と最後に真実を語る、飄々としていて自分のことは多く語らない金田一像にピッタリ合うし、金田一シリーズなのに、金田一が物語を邪魔しない絶妙な立ち位置にあるという、その絶妙な立ち位置でも独特な存在感を絶妙に放つことができる…これってすごく面白い。他の俳優が演じる金田一ももっと沢山見てみたくなってきたぞ!

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モチーフ:釣鐘とその中の雪枝
音楽:前田曜子「愛のテーマ」

オルタナティブ・シンガーソングライターの〝美根〟です。
作詞作曲をして、ギターとピアノの二刀流で唄い、自分の世界を届けています。
「みねこ美根」名義で活動していた2018年から、OKMusicさんにてweb連載を続けてきた「映画の指輪のつくり方」。
たくさんお世話になったOKMusicさんのサイト運営終了に伴い、noteに移行して連載を続けています。
毎月、大好きな映画から一つ選んで、それをテーマに指輪を制作。
勝手に皆様へお薦めするレビュー文章、制作作業動画を公開中。動画では劇中歌のカバーも。ぜひ、楽しんでいってください。
私の本業である音楽活動など、さまざまな情報はこちらのリンクからがとても良きです。
私を知るためのキーワードは・・・
オルタナティブ、ライブ活動、ランプ、弾き語りスタイル、バンドスタイル、耳と脳にこびりつく作品たち、心火、焔心の砦、美術館でも展示された指輪たち、自作ストップモーションアニメ、「バズリズム02」BUZZ CLIP出演、MV、毎週水曜生配信番組、2025年1月23日のフルバンドワンマンライブ・・・
知りたくなってきた?→ https://lit.link/minelink

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