「ニンテンドーオオサカ」でのブランド体験
こんにちは!mctの小幡です。
やっと春が来た!と思っていたら、梅雨の足音、というか台風がやってきたなんて、季節感がバグってしまいそうですね。
さて今回の【勝手に分析!Good CX】は、異様に暑すぎた去年の夏休み、帰省途中に任天堂の直営オフィシャルストア「Nintendo OSAKA(ニンテンドーオオサカ)」に立ち寄ることになった時のお話しです。
“妥協案”で行くことを決めた「Nintendo OSAKA」
その日は、平日の早い夕方でしたが、さすがの夏休み、海外からの家族連れもたくさんで大盛況。
実は、「ニンテンドーのオンラインストアでも買えるグッズやゲームがほとんどだし、わざわざ行かなくてもなあ・・・」と思いながらの訪問でした。というのも、子どもが出発する前に「Switchを持っていきたい!」と言い出したので、「わざわざ旅行に持っていくのもなあ」と思った私が、Switchを持っていかないための「妥協案」として、ストア訪問を提案したのです。
ストアに入ると、店員さんが「My Nintendoアプリ」でチェックインできることを教えてくれました。スマホを取り出してチェックインすると限定ステッカーがもらえます。「ここでしかもらえないステッカー!」というよりは、子どもにしたら「タダでステッカーくれた!」という感じだとは思いますが、喜んでいるのでよしとししましょう。
そのまま進んでいくと、別の店員さんが子どもに近づき、しゃがんで声をかけました。
「わー!その時計、かっこいいね!」
と、子どもがお気に入りの『スプラトゥーン3』腕時計を褒めてくれています。
ストアで買ったわけではない、ストアで売っているわけでもない、子どもがガチャガチャで当てた腕時計です。それが目に入るやいなや、店員さんは声をかけてくれたのです。
子どもはうれしそうに、そして、満足そうに、腕時計の機能について実演しながら(自慢しながら)説明します。
それを聞いた店員さんは、「おー!いいじゃん!」とさらに褒め上げてくれます。
そんな、時間にして2-30秒の出来事によって、私の気分も少し上がってきます。
自宅でもできる「体験版」のために並ぶ30分・・・
目に入るグッズすべてに「これ、ほしい!」「あれ、いいな!」とコメントする子どもの手をぐいぐい引っ張りながら進んでいくと、Switchの体験ブースが。当然「やりたい!」と言うので、列に並ぶことに。
しかし、そこでプレイできるタイトルは体験版で遊べるものばかりで、すでに自宅で体験しているタイトルもチラホラ。「(家でも遊べるよー・・・、家よりもモニタが大きいだけだよー・・・)」と心の声を聞きながら列に並びます。
一組あたり10分ほど楽しめるようですが、すでにプレイしている二組の後ろに三-四組ほど並んでおり、「30分程お待ちいただくことになると思います」と店員さんに笑顔で告げられます。流行りのタイパ的に見ると、なかなかよろしくないタイパだなあと思っている父を横目にすることもなく、店員さんは子どもに、どのタイトルで遊びたいかを確認しています。
そんなこんなで、やっと子どもの順番がやってきました。選んでいたのは、まだやったことのない『スーパーマリオ 3Dワールド+フューリーワールド』です。
店員さんのセッティングが終わると、消毒済みのコントローラーが手渡され、簡単な操作説明をしてくれました。
「(よし、あとは10分間遊ぶだけだ)」と思っていたら、引き続き、その店員さんが子どもの横に座って遊び方を教えてくれます。
「(最初だけかな?)」と思っていましたが、子どもがつまづいている部分があったら、そっと「こうしてみたらどうかな?」とサジェスチョンもしてくれています。
クリアできたら「やったねー!うまかったよ!」と嫌味なく褒めてくれます。
我が家の前に並んでプレイしていたのは海外の親子連ればかりだったので、どうやら、そういった対応ができていなかったみたいです。(とはいえ、店員さんは皆さん流暢な英語で対応されていたので、「いまどきだなあ!すごい!」と思いながら見てはいました)
結局、ゲームを体験している間中、店員さんはずっと子どもの横についてさりげない応援やフォローをしてくれていました。モニタ横のアナログなタイマーが10分を知らせてもストップではなく、キリのよいタイミングまで遊ばせてくれて、体験終了。
「楽しかったー!!」と大満足な子どもと共に、カービィのぬいぐるみとスプラのカトラリーを購入して、Nintendo OSAKAを後にしました。
ソフト自体はオンラインストアでも購入できるけど、ストアに行くだけの価値はあるかもな、と思い直しながら、メイン予定である帰省のため特急に乗り込むのでした。
実は、ニンテンドーブランドの楽しさを“体感”できる場所だった!
この体験をCX観点で考察してみます。
感じたことは、Nintendo OSAKAが、ゲームやグッズを売っている“単なるショップ”ではなく、“ニンテンドーブランドの楽しさを体感できる場所”だったということ。
そう感じさせる要因として大きかったのは、店員さんの立ち居振る舞いです。
一目で店員さんとわかるニンテンドーカラーの真っ赤なポロシャツ。「いらっしゃいませ」ではなく、気さくな「こんにちは」。
皆さんが嫌味のない笑顔だったのも気持ちよかったのですが、最も印象深かったのは子どもへの接し方です。
前述したエピソードから、子どもたちは「一人の顧客、一人のプレイヤーとして扱ってもらっている気分」になれるのではないでしょうか。
おそらく、「お客様に楽しんでいただく」など最低限のルールだけ決まっていて、あとのコミュニケーション全般は、店員さんの裁量にある程度任されているような印象を受けました。
後日、任天堂について調べてみると、中興の祖となった山内溥氏は、社是や社訓という「枠」をあえて用意しないことで自身や従業員の行動を抑制せず、自由な発想をもたらすことを意識していたようです。その結果、当時伸び悩んでいたカード事業からの脱却を図り、「ファミコン」を起点に、世界的認知度を誇る大企業に成長させた、と。
そんなDNAが、ストアの店員さん一人一人にまで根付いているのかもしれませんね。
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以上、個人的な体験をCX視点で勝手に分析してみました。
ちなみに帰省の帰り道、子どもが「カービィ買って続きがしたい!」と言い出したので、帰宅後、『星のカービィ ディスカバリー』をダウンロード購入しました。
この(試用から)購入までの流れも「いまどきだなあ」と思ったことを含めて、期せずして体験できたゲーム購入のカスタマージャーニーが、とても面白かったです。
・・・あれ? ストアで体験したのは『スーパーマリオ 3Dワールド』だったよね??
子どものゲーム購入カスタマージャーニーには、意外な要素が仕掛けられているようですね。
(小幡 友:エクスペリエンスデザイナー)
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