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父が妻に望んだであろうこと

父は、集団の中でいじめられている人がいると、必ず手を差しのべます。

転勤である職場へ赴任した父。

1人、皆からいじめられている青年がいました。

そこで、父は、いじめている人達に毒をお見舞い。

でも、父がいじめられることはありません。

とぼけた顔をしていても、何故か一目置かれる運命の人なのでした。

父の庇護の下、青年はいじめられなくなりました。

父はそんな彼を誘って、旅行など、よくお出かけをしていました。

ちなみに、彼は、父よりも20歳以上年下。

彼は、会ったこともない父の娘を狙っていた様なフシがありましたが…。

父が、言いました。

「彼は育ちが良くて、いかにも人が良さそうなんやけど…」

「あんな感じでは、厳しい世の中を生き残れるかどうか不安だな…」

この数年後、父は転勤。

守ってくれる人が居なくなった青年は、またしてもいじめられることに…。

再び父がこの青年と同じ職場に異動した時には…。

ストレスからなのでしょうか…。

脳溢血で倒れ、寝たきりになっていました…。

でも、意識はしっかりしていたそうです。

職場の誰にも会いたがらない彼。

そこで、父が名乗り出ます。

「ひょっとしたら、自分なら会ってくれるかも知れない…」

彼は、父なら会うと言ってくれたそうです。

当時結婚していたこの青年。

お子様は、まだ幼児でした…。

変わり果てた青年に会った父は、とても悲しそうでした…。

彼は、機械を使って父と会話。

聞けば、入院先の病院でも、患者から酷いいじめを受けたそうです…。

看護師さんは、重症の青年を手厚くお世話。

これが、他の患者の妬みの対象となり…。

夜中に同室の患者達に取り囲まれて、怖い思いをしたのだとか…。

それにしても、寝たきりでモノも言えぬ人間に向かって、そんな事をするとは…。

苦労人の父と母は知っていました。

人間の淵の底を…。

それ故、醸し出される「強さ」に今でも圧倒される私。

「優しいだけでは、ダメなんよ!」

そう言う時の父の目の奥に、怪しい光が宿っている様に見えるのは、気のせいなのか…。

この青年に一つだけ良いことがあったとするならば…。

それは、人が良い故に、高額な保険に入っていたこと。

おかげで、経済的には、随分助かっているそうです。

父が、大変メンタルの強い母を妻に迎えたのには、それなりの考えがあってのことなのかも知れません…。


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