母たるもの
母の実母(祖母)の嘆き。
「あんたのお母さんは、母親らしくないな~」
(そう、言われてもね…)
世の中の母親像をよく理解できていない私。
盛んに首をひねる祖母を、「ふ~ん」的な感覚で見つめるしかないのでした…。
「何言うとるんか!」
「あの婆さん、自分の手で私を育てなかったやないか!」
「母親文化の断絶やな!」
開き直る母(笑)。
「私は、子供を捨てんかったモンね!」
(ああ、そうですか…)
物心が付いた母の側に、両親はいませんでした。
幼き日を怒りの中で生きてきた母が、心がけているであろうこと。
「家族に、嘘はつかない」
「自分が経験したこと、考えてきたことを全て子供に伝えきる」
「家族には、本音を話す」
「たとえ不都合な真実であっても、それは知っておくべきだ」
何でもかんでも、直接話法で話す母の教育方針は、祖母にとって受け入れがたいものに違いないのでした…。
祖母もまた、苦労人。
それ故、自分の子供さえも信用しておらず、秘密主義で、本音で生きることを良しとしていません。
世間で言うところの、普通の目立たない女性でいることが、祖母の目指すところ。
自分の考えを表明した途端、他者からの攻撃にさらされることを恐れる祖母。
ひたすら、耐える人生を歩んで来ました。
祖母とは、全く生き方が違う母。
「あの婆さん、変な我慢をしてからに!」
「それも、子供のためとか、人のせいにしとるやろ!」
「気に入らんかったら、あんなの(祖父)とサッサと別れてまえ!」
「世間が、何してくれるんじゃい!」
妙に迫力のある母。
お目目は、ギラギラと怪しく輝いています。
一方、いつも死んだ様な目をしている祖母。
どっちの生き方が、正解という訳でもないのでしょうが…。
結局、人は、自分の信じた道を歩いて行く他はないのでした…。