アナ雪感想考察 -2人のヴィランとその役割-
※『アナと雪の女王』の観劇感想&考察です
※四季版はもちろん、映画1.2のネタバレを含みますので、ネタバレが嫌だよ!という方はそっと記事を閉じてください
※妄想も多分に含むことをここに宣言します
はじめに
上記記事の後編中編になります。
もしよければ、先に前編からお読みください。
前編では、劇団四季版全体の感想や感嘆、男性陣やアナにも少し触れました。
本記事では、映画版1および劇団四季版のヴィランについてと、この3人メインで主軸の進行は行けるよね???と思っているキャラクターに触れて、最終まとめまで……いけたら……いいなと、思っています……(希望系)。
※ヴィランの話だけで本記事は終わりました。
2人のヴィラン
アナ雪を語る上で外せない注目点は、ヴィランが2人いるという点だと思います。
また、人々(物語の内のキャラクターたちと、物語の外の観客たち)から見た時に、表向きのヴィランが入れ替わるというのも、面白い点だと思います。
物語後半で「あいつが実は!」みたいな展開はよくありますよね。
物語内外で気づくタイミングが異なったり、最終的に全員の敵あるいは味方になる、というのも、まぁまぁよくある展開だと思います。
私がアナ雪のヴィランに関して特に面白いな、と思ったのは、
序盤からほぼ終盤、ほぼ終盤からラストにかけてヴィランが異なる
物語外の観客に向けてのみ、明確に真のヴィランを示している
ヴィランとヒーローとヒロインが同一人物である
という3点でした。
まずは1点目から参りましょう。
序盤からほぼ終盤、ほぼ終盤からラストにかけてヴィランが異なる
どういうことかと言いますと、
まず序盤からほぼ終盤、これはもうわかりやすくエルサがヴィランでした。
(なんかステップがすごいおじいちゃん、ぱっと見ヴィランな方いましたが、あの方は賑やかし役だと思うので今回はスルーします)
民から慕われる王女であり、両陛下亡き後に女王となったエルサは、けして故意ではないとはいえ、生来持っている魔法を制御しきれず、他者に害を与えてしまいます。
その結果、物語内的には、両親、そして民達から、害のある魔法を使う恐るべき人物として描かれていました。
物語外的には、生来の魔法で妹を意図せず害してしまい、後悔と制御に悩み苦しみながら努力を重ねたものの、再び妹を害そうとしてしまい、実際に害してしまう存在として描かれていました。
物語内外共に、他者を害する恐るべきヴィランとして認識できるような構成になっていたと思います。
そしてほぼ終盤からラスト、アナがハンスに会いに行った先で、本作の真のヴィランはハンスだったことが判明します。
しかし、この時点ではアナと観客しか知らない情報です。
「まさかお前が…!」をアナと観客だけが先に知るわけですね。
主人公であるエルサまでもが、四季版でいうなら<つのる寒さ>以降のマジマジのラスト前までこの情報を知ることがありませんでした。
物語内の人々はラスト前まで、本作の真のヴィランがハンスという情報を与えられないわけです。
(ヒントは前半時点からあったと思いますけど)
真のヴィランがハンスだったとはいえ、完全にエルサがヴィランではなかったのか、というと、まぁ違うと思います。
生来のものかつ、環境的に致し方ないとはいえ、妹へ、他者へ、少なからず害を与えたエルサはヴィランとしての要素を持っている存在と考えて良いと思います。
序盤からほぼ終盤のヴィラン→エルサ
ほぼ終盤からラストのヴィラン→ハンス
このように物語内でヴィランが変わり、また真のヴィランを知るタイミングがアナと観客/物語内のキャラクターたちとでまったく異なる構成になっている点が面白いと感じました。
「構成自体はあるあるじゃない?」と言われるとそうなんですけれど、ディズニーの長編作品は
男性のヒーローが多い傾向にあると思います。
そして、ヒーロー候補として描かれていたはずのハンス(しかも口約束とはいえアナと婚約している)と、主人公のひとりであり実質のヒーローかつヒロインでもあるエルサ、
この2人がヴィランとして描かれていることがとても面白いと思いました。
物語外の観客に向けてのみ、明確に真のヴィランを示している
いわゆる大衆作品、特に子供をメインターゲットにふくめている作品のヴィランは(あんまり見てないので偏見かもですが)、物語内外共に共通の認識としてハッキリ描かれている傾向が多いように思います。
まぁ、要するにわかりやすさ重視的な。
特にディズニーの長編作品は、ヴィラン側に理由があろうとも、最終的にヴィランは徹底排除慈悲はない、とする傾向が強いように思っているので、よりいっそうわかりやすさ重視が顕著かなぁと……。
先述したとおり、アナと観客は同じタイミングで本作の真のヴィランはハンスだという情報を得ます。
なんなら、この時のハンス、目的も自白してます。
きっと、もうすぐ目的が達成できるぞ!と油断していたんでしょうね。
ディズニーのヴィラン、調子乗って油断して失敗するケース多すぎ問題(ジャファー様とか最たるものですよね。私は好きです)。
しかし、アナと観客以外の物語内の人々は、エルサとクリストフも含めて、物語で最も盛り上がる(私調べ)エルサとアナ姉妹愛の大勝利場面が終わるまで、ハンスがヴィランだとは知りません。
<フィナーレ/ありのままで>まで、物語内の人々はハンスがヴィランであることも、なぜヴィランだったのかも、ヴィランとして何をやったのかも、理解できていないのではないでしょうか。
基本的に物語内の人々、特にアレンデールの国民は、次々起こる異常事態にあたふたしていたら、なんかエルサ女王とアナ王女が解決してくれたし、2人とも幸せそう!よかったー!
ってなってそう。
ぶっちゃけ、アナ雪って、
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生来の能力を制御できず心を凍らせていたもののついに爆発してしまったエルサを、アナが長年エルサを想い続けた大きな大きな姉妹愛(ビックラブ)で心を解かし、姉妹間のすれ違いが解消されて、国の危機も救えてハッピーエンド!
ついでに、クリストフは新しいソリもらえたし、オラフは自分だけの雪雲もらえたし、国民たちは両陛下生前の時から急に閉ざされた城の門が開いたし、王族姉妹の仲は良いし、夏も戻ってきたし、みーーーんなまとめてウルトラハッピー!
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って感じですよね。
倒されたあとのヴィランに対して「あ、キミの出番もう終わったんで!」と言わんばかりに放置しがちなことに定評があるディズニーさん(私調べ)、今作の真のヴィラン・ハンスに対してもそんな感じでしたね。
うんまぁ、あのおじいちゃんも、ヴィランのブラフって役割があったんでしょうけれど、ほっとんど賑やかし役だけで終わりましたしね。
まとめると、物語外の観客には、真のヴィランがハンスであり、その目的そしてヴィランとして起こした行動が明確に示されますが、
メインキャラクターで唯一明確にハンスが真のヴィランだと知っているアナさえも含めた大半の物語内の人々は、ハンスのヴィランとしての全容を把握していません。
なぜなら、ハンスの言動全てを把握している人が物語内にいないからです。
(本編後に情報のすり合わせをしたら、メインキャラクターたちは把握できそうですけどね)
それはつまり、アナと雪の女王という作品において、ハンスがヴィランであること自体はある意味重要ではなく、姉妹間のすれ違い解消のためのきっかけを作る役割の方が重要だったとも考えられるのではないかと思いました。
そしてその役割は、オラフでも担えたはずです。
しかしオラフでは、おそらく劇的な展開にはならないので、よりエンターテイメント性を高め、姉妹愛を強調するために、ハンスという存在が必要だったのではないでしょうか。
このエンターテイメント性や姉妹愛の強調は、誰のためのものなのか?
まぁ、単純に考えれば、物語外の観客のためでしょう。
だからこそ、ハンスが真のヴィランであることを観客にしか明確に示していないのではないか、と思いました。
……なんか、自分で考えておいてアレですが、ハンス推しの方には申し訳ないですね。。。
私はヴィランしてるハンス好きですよ!!
ハンスのヴィラン顔超好きー!
詰めが甘いところも、ディズニーのヴィランらしくて良いですよね!
ヴィランとヒーローとヒロインが同一人物である
さあ、ラスト、これはもうまさしくエルサのことです。
先述したとおり、エルサはヴィランとしての要素を持っており、本作中の大半で、理由あるヴィランとして描かれていました。
それと同時に、アレンデールの危機を最終的に救うヒーローであり、絶望に身を委ねあわや真のヴィラン・ハンスに命を奪われるところをアナに救われたヒロインでもあります。
これまでのディズニー作品において、アリエルやベルをはじめとした意志が強い系行動力特化型ヒロインや、モアナの様にフィジカル強め系ヒーロー型な女性主人公もいました。
けれども、ヴィラン・ヒーロー・ヒロインを下記のように定義した場合、
ヴィラン→他者へ害を与える役割
ヒーロー→他者を救う役割
ヒロイン→他者に救われる役割
こんな主要な役割3点セットを1人で担ったキャラクターがいたことあります!?
いや、ないでしょう!?きっと!おそらく!多分!
(こんなキャラクターいますよ、と記憶にある方は是非コメントくださいまし。作品見ます)
性別関係なく、
・ヴィランとヒロイン
・ヒーローとヒロイン
・ヴィランとヒーロー
といった具合に、2つの役割を兼任していたと言えるキャラクターは他にもいると思います。
どう解釈するかは受け取り手の自由ですしね。
でも流石に3役担うのは珍しくない!?
なにそれおもろー!!!と思いました。
いやぁ……なんかもう、姉妹愛最強!姉妹愛の前には男性キャラクターはひとえに風の前の塵に同じ!的な。
互いに救い救われるヒーロー・ヒロインという関係性は、よくある構成だと思いますが、
姉妹愛最強!男どもはすっこんでろ!
的な描き方をまさかディズニーさんがしてくるとは思ってもいませんでした……。
自分達で作り上げてきた定型を崩すことで、新たな描き方に挑戦し、最高な作品を届けてくれる。本当にディズニーさんは、観客を楽しませ続けるクリエイター集団なんだなぁと思った次第です。
終わらなかった
いやまって、ここまで書いて4千字いきましたがな。
私どんだけヴィラン好きなんでしょう。。。いや好きなんですけれども。。。
この記事で後編とする予定でしたが、思った以上にヴィランの話で盛り上がってしまったので、本当に語りたくてしょうがなかったエルサとアナ、2人の姉妹愛と、キーパーソン・オラフについては、また次回に。
なんでか気がついたら文字数増えてるんですよねぇ……。
これって考察オタあるあるなんでしょうか?
ではまた次回の記事でお会いしましょう。
ここまでお読みくださいありがとうございました!
ヘッダー画像は下記からお借りし、作成いたしました。
素敵な写真とその提供に感謝御礼申し上げます。
【Bonnie KolarikによるPixabayからの画像】
▼修正履歴
2022/09/19:ヘッダー画像/目次/改行追加、加筆修正、タイトル修正
前編と合わせてタイトルを修正しました。
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