「逃げ方」「負け方」を考えられる人間はしぶとい

こういう「前向きな逃げ」「戦術とし『逃げ』だが、戦略としては戦ってる」という発想が私は大好きだ。

以下、コピペ
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ワッツのIR説明会での社長のおもしろプレゼンの中で、私が特に気に入ったのが、「ローコスト出退店」というキーワードです。別業態の既存店舗を改装して自社店舗とすることで出店コストを抑える「居抜き出店」というのは、よく聞く話ですが、「出店時に退店コストを最小化することを考える」というのは、なかなか他の多店舗展開の業態では見られない発想です。

 ワッツの店舗は、町のスーパーの一角の天井にポップをつけ、什器を並べただけのような、70坪程度の小規模なものが中心です(筆者撮影画像参照)。居抜き出店が普通ですから、店舗内装にはほとんどお金をかけません。
 その上、出店前に、①退店の時の敷金償却をできるだけ少なくする、②退去告知後、できるだけ早く退店できるオプションを獲得するといった交渉を家主と徹底的に行うようです。

 ワッツがこのような「退店のしやすさ」をあらかじめおりこんでおくのは、「ダイソーが来たらすぐに逃げる」という彼らの会社の戦略を着実に実行するためであるそうです。
 
 ワッツの店舗は比較的小規模なもので、扱っている商品特性上、最大手のダイソーと客層がほとんどかぶります。このため品ぞろえ豊富なダイソーの大規模店舗が近くに出店してきた場合には、ワッツの店舗は、まずまちがいなく売上が激減し、競争に敗れることになります。

 ワッツのビジネスモデルの勝ちパターンは、業界大手が着目していない、アクセスが不便なショッピングセンターやスーパーの一角に、いち早く小規模な百円ショップを作って淡々と稼ぐことであり、業界のガリバー企業とガチンコで勝負するつもりは毛頭ないわけです。ですから、「毎年100店出店して、同時に50店閉める」ということを当然のように行って、利益を確保しています。

 ビジネスの世界では、商売がうまいライバルがいると、すぐにそのマネをしたくなりますし、皆が集まる魅力的な主戦場で、ガチンコの勝負をしたくなります。でも、自分が有する資源や能力を考えた場合、「あえて主戦場での勝負を避けて、ライバルがいない場所を探して生き残る」という努力の方が何十倍も大事な場面は、多々あるように思います。(コピペ終わり)

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昨今、隆盛を誇る「最初から主人公が強大で『俺ツエー』をやる」のには、「薄っぺらさ」を感じる。なぜなら、何も工夫せずとも「勝利と言う結果」は転がり込むわけで。その場合彼らが考えるのって「勝利という結果への過程や演出」でしょう。 私は「まともにやり合うと負ける」状況から「考えて勝利と言う結果を勝ち取る」のが好みだ(むろん、負けることも多いけど、それすらも楽む)。ここに存在意義(レーゾンテートル)がある。

「自己満足できるかっこいい演出過程」よりも「客観的に第三者に認められる泥臭い勝利と言う結果」がほしい。


項羽と劉邦を想起する。

軍事的天才である項羽(たとえるなら「戦術にも長じた呂布」みたいな存在で 彭城の戦いでは3万の兵で50万の兵を撃破している)に当初劉邦はまるで勝てなかった。ただ負けつつもしぶとく致命傷を避けて逃げ続け、最後には「垓下の戦い」に勝利して天下人となった(多少誇張した書き方だが)。

なぜ「弱い劉邦」が「強い項羽」に勝利できたかと言えば「戦略眼があった」ことに尽きる。同じ「逃げ」や「負け」でもちゃんと将来につながる布石を置きつつ「逃げる」「負ける」ということ。許容できる損害を即座に積極的に判別し、一部に積極的に受け入れる負けを設定する。ただしくれぐれも致命傷は負わない。「逃げ方」「負け方」をちゃんと考える人間はしぶとい。

まともにやり合って勝てない強敵や問題は世の中にゴマンとある。「逃げ」や「負け」が続いても「リーダーがどこを見ているか?」というビジョンで組織の命運は決まる。

また相手方の項羽のリーダーシップの問題もあった。

項羽は「西楚の覇王」と名乗り、支配体制をしいたが、その基準は「功績」ではなく、項羽との「関係が良好か否か」であった。多大な「功績」がありつつも、耳触りの悪い諫言を行った者(例:范増)を遠ざけたりした。

「功績」という事実を見ずに「己の好き嫌い」「聞きたくない言葉は聞かない」という態度をとっていれば最終的には負けるのも当然だ。全ての分母(獲得したすべてのリソース)と分子(権利者、むろん過去にさかのぼって)を整理し、分配基準や手法を確認、合意の上で分けることが項羽にはできなかった。そりゃ、滅ぶべくして滅ぶというものだ。


CIA(内部監査人)や行政書士資格から「ルールについて」、将棋の趣味から「格上との戦い方」に特化して思考を掘り下げている人間です。