ネット上の野良犬のしつけ方
ネット上で私見を述べたりすると、場合によっては意見の異なる方に遭遇することもある。生まれも育ちも価値観も経験も立場も所有情報も異なるのだから様々な意見があるのはむしろ当然のことだ。
基本的に人は分かり合えない。だからこそ「分かりあおうという努力」は尊い。分かり合うまで行かずとも許容できる間は争いは発生しないものだ。そして分かり合うための手段に論理性というものがある。
「意見(結論)が異なる」というだけでいがみ合ったり敵対したりと言うのはおよそ「理性的な人間」のすることではない。両者ともに一定以上の論理性を有し、理性的であればこそ、前提や理由、事実や証拠を準備して結果や結論、判断や解釈を下す。そうなれば「建設的な議論」が行える。この場合はむしろ意見の異なる方とのやり取りの方が得るものが多いくらいだ。なのでちゃんとした議論ができる方であれば同じ意見はもちろん、異なる意見の方も大いに歓迎する。
だが、覚えは無かろうか? 単にその結論が異なるというだけでやたらと挑発的であったり、相手を無用に小馬鹿にしたり、大した根拠もなく相手を決めつけるような輩も多数存在する。 議論が成立しない彼らを私は「ネット野良犬」と呼ぶことにしている。 意見が異なるのは別にかまわないが、吠えてくるのはうるさいので「調教」もやむなしだと思う。 この文章をここまで腹を立てずに読んでいる方はおそらく「人間」だと思うので、そういった「野良犬」に遭遇した時のしつけ方を身に着けることをお勧めする
【野良犬は論破できない】
よくある間違いが、そういった野良犬の吠え声に感情的になってしまい、躍起になって相手を論破しようというものだ。
「自分の意見が正しければ相手を必ず論破できる!」というのは相手も一定以上の論理性がある人間の場合にのみ成立する。
野良犬相手には大間違いだ。
基本的に「野良犬」には理論が通じない。ゆえに論破は不可能だ。赤ん坊だとか動物だとか言葉が通じない存在を論破するのは基本的に不可能なことだ。
不可能なことを目標に掲げてはならない。
ではどうするか? 野良犬に必要なのは「論破」ではなく「調教」だ。
彼らはしばしば「自分と意見が異なるから気に入らない」と言う理由で吠えかかってくる。大概は人間側の意見の前提を無視している。攻撃しやすくするためにこちらが言ってもいないことを拡大解釈したり極論化したりしている場合がほとんどだ。
「自分が絶対に正しい」と思い込んでいるからこそ、他人に乱暴にあたるわけだが、そもそも「自分が絶対に正しい」という思考が既にして「傲慢にして非論理的」なのだ。人間誰しも間違いはあり得るし、前提情報が変われば結論はコロッと変わるのが論理的な態度というものだ(少なくとも私はそのつもりだ)。
乱暴な物言いをしている彼らは「自分が間違えたな」と悟っても、もはや引っ込みがつかなくなっているものだ。なので「乱暴な物言いをしている時点で動物」と思ってよい。そもそも彼らは「結論ありき」であってまともな議論をするつもりなど最初からないのだ。
ここでは主にSNS上で自分の意見を書いた日記に噛み付かれた場合を想定して対応を4段階で記す。ご参考にされたい。
【起】
いったんは、彼らの言い分を聞くのがよい。正面切って否定するとますます吠え声がうるさくなる。
ただしあくまでも認めるのは「彼らがそう思うのは彼らの勝手」としてであり、同様に「こちらが思うのはこちらの勝手」と伝える。こちらの意見の前提を無視している場合はその点は指摘しておくとよい。また、拡大解釈や極論になっている場合「そんなことはどこにも書いてないし言っていない。書いても言ってもいないことを責められてもどうしようもない」と困って見せればいい。
動物にすれば、反発されるはずの自分の意見を聞き入れられてしまうので「肩透かし」を食らう。正面切っての乱打戦を望んだのに認められてしまうので争点を失う。ただ、そこで動物なりに(笑)思い直すと「こちらが思うのはこちらの勝手」という攻撃目標を見つけそこに噛み付いてくる。
誘いの隙とも知らずに(笑)。
馬鹿呼ばわりなども「貴方がそう思うのは勝手ですが、おそらく第三者が決めることですね」としておけばよい。
動物の吠え声だと思っていちいち気にせず、感情的にならないことが肝要だ。
【承】
彼らがなぜわざわざ他人の記事にコメントに来たのか「目的」を問いただす。まっとうなところでは「間違った意見を広めるお前やお前の賛同者の間違いを指摘するためだ」などもありえるが、これはもし本当にあなたの意見に誤りがあった場合、素直に聞き入れればいい。(この時、訂正をしやすくするためにも自分の意見の言い方は攻撃的表現や断言を避けるのがよい。それが論理的態度どいうものだ)。
多々、大概の動物は「自分と異なる意見が気にいらないから難癖を付けに来ただけ」「上下関係の確認(マウンティング)」「論破するためだ」「お前の意見の間違いを認めさせるためだ」
これを述べさせておくのは重要だ。彼らの「戦略目標」「勝利条件」を明確にすることで行動を制約できる。
お気づきだろうか?この戦略目標はあなたが同意しない限り絶対に達成できないものだ。この時点で負けはなくなる(厳密には議論に勝ち負けなどないんだが)。
マウンティング目的の相手には「罵倒」よりも「心配」がクリティカルする。「貴方大丈夫ですか?」「心配です」などの言葉こそ彼らの骨身にこたえる(笑)ので混ぜてみるとよい。
なお、ブーメラン戦法でこちらに対して目的を逆質問してきたら「こちらの目的は多様な意見を聞くことだ」くらいで良い。実際にそうだし、相手を論破するつもりなどハナからない。正確には「相手の意見をさらしものにする」という目的はあるのだが(笑)。
【転】
相手が躍起になってこちらを論破しようとしてくるが、冷静に言質を取り、逆襲の隙をうかがう。非論理的な動物にも唯一有効な論理が「自己矛盾(撞着)」である。「相手の言葉で相手を攻撃、否定する」のだ。こうなると相手はどちらにしろダメージを受けることになる。
「勘違いだった」などの「言い逃れ」の余地を先回りして潰すように相手の言い分を確認する質問をして言質を取っていく。 そもそもこちらは相手を論破するつもりもないので質問をして「相手のご高説」を拝聴するだけだ。 誰でもできる。チョー簡単。特に「絶対」「バカ」などと攻撃的に強い表現を使い断言する相手ほど「チョロイ相手」である(性格のあまりよろしくない私などは、そういう相手と対峙すると画面前で笑いが止まらなくなる)。
逆に相手からの質問にはあまり大きな答えを返さずに的確に必要最小限で答える。もし自説に誤りがあった場合は素直に認めて訂正すればよい。このあたりは乱暴な物言いをしていない方が手軽にできるものだ。人間誰しも間違いはあるものだ。
【結】
相手の矛盾点を突きつけたたみかける。最後の仕上げみたいなものだ。結果的に相手を論破する場合も多いが、別に相手に認めさせる必要すらない。なぜなら相手の論破は「こちらの勝利条件ではない」のだから。私の意見としてはここがおかしいと思いましたが・・・ってな感じである。
一方で相手はこちらの論破、説得を勝利条件に掲げている時点でなかなか退却ができない。逆襲を受けてにっちもさっちもいかなくなり捨て台詞や負け犬の遠吠えを残すのが関の山だ。論より証拠、実際にミクシィ上で何度となく用いてきた手法なので効果には自信がある。ネット上の野良犬の被害者はお試しあれ。
CIA(内部監査人)や行政書士資格から「ルールについて」、将棋の趣味から「格上との戦い方」に特化して思考を掘り下げている人間です。