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圧倒的な自然美~ブータン 山の教室

編集部のエイミーです。
「映画館で見る映画の良さを多くの人に伝えたい」。
そんな思いで映画と映画館愛を語ります。

ブータンの小さな村が舞台の映画「ブータン 山の教室」を見てきました。

松の廊下の襖絵が出迎えてくれる広島の映画館「八丁座」での鑑賞です。

松の廊下

歌手になりオーストラリアへ行くことを夢見ている教師のウゲン(シェラップ・ドルジ)は、仕事に対する情熱が全くない怠惰な生活を送っていました。そんなある日、標高4,800メートルの地に位置するルナナという村の学校に赴任するよう告げられます。1週間以上かけ、泥だらけになりながら険しい山道を登り、やっとの思いで村に到着。そこは、電気もほとんど通っていない、現代的な暮らしから完全に切り離されたへき地でした

スマホのある生活が当たり前のウゲンは絶望し、「私はここで教師をすることができない」と、早々に村長に告げます。そんな中でも、村の人々は新しい先生となる彼を尊敬し、温かく迎え入れてくれます。いやいやながら生活を続けるウゲンでしたが、荘厳な自然とともにたくましく生きる村人の姿や、伝統歌を歌う女性の清らかさ、子どもたちの純真さに触れることで心に変化が少しずつ生じてきます。そして村人と心がやっと通じ合ったそのとき、一つの大きな決断を迫られるのでした。


ルナナの村人たちは、実際に村で暮らす人々が演じているそうです。クラス委員の女の子は、まるでいくつものオーディションを勝ち抜いてきたかのように愛らしい。そんな子どもたちのはじける笑顔と、自然の美しさが極上のスパイスとなり、物語に深みを与えます。

ある生徒は、「先生は未来に触れることができるから将来、先生になりたい」と話します。この村に住む人たちの大半は、村から一歩も外へ出ることなく一生を終えるのでしょう。そんな中、先生という職業は知識を皆に伝え、自らも勉強することができ、可能性が無限に広がる、まさに未来に触れることのできる仕事。幼い子どもたちの可能性を、少しでも広げてあげたいという村人たちの願いと愛情が詰まっています。

圧倒的な「自然」の美しさも感じることができました。こんなにも壮大で威厳があり、神々しいものかと。カメラをぐっと引いて、山の中に小さな人々が点在する姿をとらえます。自然に比べて、人間とはなんと小さいものなのか。でも山や草木、風に体をゆだねることで、優しく包み込んでくれる自然界の感覚が映像から読み取れます。「人間は自然に生かされているんだ」と心の底から思える作品でした。

チケットブータン

・映画館が日常になりますように・

【映画館の醍醐味】
ある時は教師ウゲンの気持ちに寄り添い、ある時は村人たちの悲しみを感じて、どこからともなく、すすり泣く声が聞こえます。楽しいシーンでは、クスクスと笑い声が漏れ聞こえ、歌手になりたいという子どもが歌うシーンのかわいらしさに館中の人が微笑んでいるのを肌で感じます。見ず知らずの人と一緒に同じものを共有する妙、不思議な空間がなせる技。まさに一期一会です。


(編集部・エイミー)

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