【全社戦略】PPM/アンゾフのマトリックス
こんにちは、白山鳩です! クルッポゥ!
マガジン『能ある鳩はMBA② ビジネススキルで豆鉄砲』での、ビジネススキルにまつわる情報の紹介です。
前回の記事はこちらです。↓↓↓
ここからは、それぞれのフレームワークの具体的な使い方を見ていきます。
今回は「全社戦略」の策定に関するフレームワークです。
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全社戦略で検討するものは何か
「全社戦略とは何か」は以前の記事でも確認しましたが、ここでもう一度おさらいです。
・自分たちはどんな領域で事業を営んでいるのか
・経営資源を、それぞれの事業にどの程度投入するのか
これが全社戦略策定にあたり検討する要素です。
さて、これを受験勉強でたとえてみましょう。
来年に高校受験を控えた中学生が、国語・数学・英語・社会・理科を受験するとします。
これが自分たちはどんな教化(≒事業領域)で勝負するのか、にあたります。
また、この中学生は「5つの科目(≒事業)」を抱えています。
しかし、この子が参考書に使っていいお金は1万円、毎日家で勉強できる時間が5時間だとしましょう。
そうすると、金や時間(≒経営資源)を全教科へ無限に配分するわけにはいきません。
「得意科目をもっと伸ばす」のか、
「不得意科目を手当てする」のか、
決断する必要があります。
ここまで鳩が丁寧に説明したにもかかわらず
「ケッ、俺は勉強なんかに時間を使わなくても合格したもんね~」
などという不届き者はいませんね?
くれぐれも刺し殺されないよう気を付けてください。
このように、抱えている複数の事業に対し、どのように経営資源を配分して、自社を成長させるのかを考える……これが全社戦略です。
もちろん、自社が抱えている事業が1つしかない場合、「全社戦略」を考える必要はありません。
鳩も、受験科目が国語しかない世界を生きてみたかったものです。
経営資源の配分:PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)
さて、「自社の経営資源をどう配分するかを意思決定する」ためのフレームワークに
「PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)」
と呼ばれるものがあります。
網倉久永・新宅純二郎(2011)『マネジメント・テキスト 経営戦略入門』(日本経済新聞出版)より
〇縦軸:市場成長性
縦軸の上の方は成長市場です。
積極的な投資が必要ですが、その分今後大きな売上が見込めます。
縦軸の下の方は成熟市場、衰退市場です。
新規参入は少ないため投資はそれほど必要ないですが、今後大きな売上は見込みにくいです。
〇横軸:相対マーケットシェア
横軸の左の方では高いシェアを築いています。
すなわち、たくさん売れている分、1個あたりにかかる費用が抑えられるので、生産コストが下がる分、利益は高くなります。
横軸の右の方ではシェアが低くなっています。
すなわち、それほど売れていないため、1個あたりの生産コストが高くなる分、利益は下がります。
〇それぞれの円の大きさ:各事業の売上高
これの円の大きさのことを
「その事業が生み出しているキャッシュ」だとか
「その事業が生み出している利益」だとか
いろいろな定義をしている人がいますが、基本的には、
「その事業が生み出している売上高」を円は示しています。
たとえば、円が大きくても「負け犬」の象限にいるのなら、
「ああこの事業は負け犬だから、売上が大きくても利益が出てないのかあ」
「負け犬のくせに売上が大きいから、利益が出てないくせに手がかかる事業なんだなあ」
ということがわかります。
というわけで、次からは各象限の特徴について見ていきましょう。
4つの象限の特徴
各象限にはそれぞれ
「問題児」
「花形」
「金のなる木」
「負け犬」
という名前がついています。
RPGだったら、「花形」がボスだと思わせておいて「負け犬」が真のラスボスだったというパターンになりそうでしょうが、
経営学は基本的にユーモア欠乏症なのでそんなどんでん返しはありません。
さて、それぞれの象限の特徴を見ていきましょう。
〇問題児(右上)
・市場成長性が高い魅力的な市場にいますが、マーケットシェアが低い事業です。
・これを成長させられれば将来的に大きな利益が見込めますが、自分自身はまだ利益を出していないのでほかの事業からの再投資が必要、ゆえに「問題児」というわけです。
〇花形(左上))
・「スター」とも呼ばれます。市場成長性が高い魅力的な市場におり、マーケットシェアも高い事業です。
・マーケットシェアが高いため利益は出ているものの、生存競争が激しい成長市場にいるため、他部門へ経営資源を振り分ける余裕はありません。
〇金のなる木(左下)
・市場成長性が低いため魅力がなく、生存競争は緩やかとなっています。
・相対マーケットシェアは高いため利益が出ていることから、事業単体で創出された利益を他部門へ配分できます。
・つまり、「金のなる木」から「問題児」へ再投資するのが、成長戦略には求められます。
・「金のなる木」の事業が少ない、又は円の大きさが小さいと、問題児の事業へ回すための資源が足りなくなってしまいます。
〇負け犬(右下)
・市場成長性もマーケットシェアも低い事業です。
・市場は今後衰退に向かうため、大きな利益は生み出せないでしょう。
以上、4つの象限について説明しました。
事業とは基本的に
「問題児」⇒「花形」⇒「金のなる木」⇒「負け犬」
という、ライフサイクルを送ります。
企業は、
「できるだけ多くの事業を『金のなる木』に送り込む」
「既存事業が『金のなる木』として成熟しきったときは、そこから得た利益を『問題児」へ送り込み、次なる事業を育てていく」
ことが求められる、というわけですね。
何を残し何を諦めるのか
企業によくあることですが、
「新しい事業を始める」ことはできても、
「不採算事業を整理する」ことはなかなかできません。
しかし、PPMにおいて
「負け犬」事業が多ければ多いほど、
利益が出ない事業にかかりきりとなっている経営資源が多数ある
状況にあります。
全社戦略の策定に際しては、
「どの事業を残し、どの事業を諦めるのか」
の覚悟が必要、というわけです。
一方、PPMのフレームワークでは、円(=事業)同士が互いに連関せず独立しあっているのを前提としています。
つまり、PPMは製品間の相乗効果を考慮していません。
たとえ負け犬事業であっても、他の事業と相乗効果を見込めるようなものであれば、完全に廃業するではなく事業再編などを通して存続させることを検討してもよいでしょう。
全社戦略の成長戦略策定:アンゾフのマトリックス
さて、全社戦略において戦略立案するためのフレームワークに「アンゾフのマトリックス」と呼ばれるものがあります。
これは、イゴール・アンゾフと呼ばれる経営学者が考えたフレームワークです。
野上眞一(2017)『マーケティング用語図鑑』(新星出版社)より
アンゾフのマトリックスは、
既存事業が成熟し踊り場にいたったとき、どんな新規事業を打ち手とするか
を検討するためのフレームワークです。
縦軸は既存顧客(市場)を深掘りするのか、新規顧客(市場)を開拓するのかを表しています。
横軸は既存の製品・サービスを深掘りするのか、新しい製品・サービスを開発するのかを表しています。
この組合せで、新規事業の方向性を検討します。
「既存顧客×既存の製品・サービス」では現状維持なので、このマトリックスを使う意味はあまりありません。
踊り場に達している事業なのに、いつまでも同じ方法で斬り込んでも
返り討ちに遭うことでしょう
・「新規顧客×既存の製品・サービス」で市場を開拓
・「既存顧客×新規の製品・サービス」で新商品を次々に既存市場へ投入
のいずれかが、アンゾフのマトリックスの常套手段です。
既存の顧客に対し、新しい方法でアプローチをするのなら、
こういうイメージでしょうか。
なお、「新規顧客×新規の製品・サービス」は大きな冒険を伴う上、既存の経営資源をあまり活用できないことに留意する必要があります。
ここまでは「全社戦略策定に用いるフレームワーク」として「PPT」「アンゾフのマトリックス」をご紹介しました。
さて、次回は事業戦略策定に用いるフレームワークについて見ていきましょう。
to be continued......
まとめ
・全社戦略では「自分たちはどんな領域で事業を営んでいるのか」「経営資源を、それぞれの事業にどの程度投入するのか」を検討する
・経営資源をどのように分配するかは「PPT」で検討する
・PPTには4つの象限があり、「金のなる木」で生まれた経営資源を「問題児」へと投入することで事業を成長させる一方、いくつかの事業は諦める
・新規事業の検討に際しては「アンゾフのマトリックス」で打ち手を検討
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