創作 vol.2 「顔」
「ママー、朝顔と夕顔ってどう違うのー?」
娘に聞かれ、
「確かに見た目は同じね。朝顔はね、朝にだけ花を咲かせるの。それに対して、夕顔は夕方にだけ花を咲かせるのよ。」
と説明した。
その時ふと思った。
そういえば、私の朝の顔と夕方の顔って…?
朝は起き抜け。
寝ぼけ眼で、今日も娘を保育園に預けて、仕事に行って、あれやこれややらなきゃいけないことが山積み。
考えるだけで憂鬱だ。
ひどい顔をしている。
夕方は仕事終わり。
仕事を終えて、娘を保育園から連れ帰って、家に着いてからも夕食を作って。
そんなことを考えただけでゲッソリする。
ひどい顔をしている。
あ、朝顔と夕顔といえば、確か昼顔と夜顔もあったな。
昼は仕事用の顔を作っている分、一番まともか。
いや、作り笑顔こそ、実は一番怖いんだぞ。
ひどい顔をしている。
夜こそ、やるべきことから開放されて、活き活きした顔をしているのでは?
いや、明日のやるべきを事を考え、ずっと寝ていたい、もう嫌だ、と思っているよな。
ひどい顔をしている。
なんだ、私って、いつもひどい顔をしているじゃないか。
そう思いながら下を向くと、娘の満面の笑みが広がっていた。
「ママー、このお花、すごいきれいな色してるね!」
はっとした。
花がきれい、そんなことでこんなに幸せそうな顔ができるのか。
私の心は、いつの間にこんなに汚れてしまったのだろう。
「あれ、ママどうしたの?苦しそうなお顔だよ?
…ママ、パパがいなくなってから、よく変な顔してるよ?」
私は何言わず、ただゆっくりと娘の頭を撫でた。
大丈夫。
きっと大丈夫。
この娘のためならば。
私は大輪の笑顔を咲かせられるから。
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