ずーしーほっきーの話
本記事はやえしたみえ様主催の「カニ人アドカレ2024」18日目の記事として参加しています。17日目の記事はこちら。
どうも皆さんパゴパゴです。一昨日カニ人がめでたく6歳の誕生日を迎え、本年のカニ人アドカレも節目を過ぎました。まさかのデス化してましたね。更新頻度が下がると発現するってどんな理由だ。
クリスマスまであと一週間。せっかくこんなに楽しいイベントを企画していただいているのですから、参加している身としては微力ながら最後まで盛り上げるお手伝いができればと思っております。
……というような前置きを書いておきながら、今回の記事内容はカニ人とは1㍉も関係ありません。本当に、今回はマジで関係ない。書こうと思ったきっかけですが、以前合同誌に二次創作SS(手野ひら太名義)を寄稿させていただいた突撃レーザーさん(以下、突レさん)の旅行記がnoteに投稿されておりまして、そこで取り上げられていたとある「ゆるキャラ」に触発されたのが執筆の動機となります。
突レさんは語尾に(白目)をつけることで有名な、基本的にいつも白目を剥いて生活している漫画家さんです。嘘です。でも語尾は本当です。あとめっちゃ飯を食う。
突レさんは「ロマンチカ」という独自の物語世界(一次)を構築することに成功している稀有な非商業作家さんです。非常に面白い漫画作品をいくつも描かれておられます。
これは実際に一次創作で物語を作った経験のある方にしか共感していただけないと思うのですが、自分だけの世界を構築するのはそれだけでも非常に困難です。ましてや他人を惹きつけられる(=一定の読書を獲得できる)レベルの物語世界を一から創り上げるというのは、これはもう並大抵のセンスではできません。
私が思うに、「作家の才能」とはこの「他人を惹きつけられる物語世界を構築する能力」だと思っているので(もちろんそれが全てではありませんが)、初めて突レさんの存在を知ったときはそれこそ激烈な嫉妬をおぼえました。構築している世界観の広さと強度とがプロ並みだと思ったからです。
それに比べれば二次創作は簡単です。すでに原作者によって確立された世界観があり、魅力的なキャラクターたちがいる。カニ人がまさにそうですよね。二次創作を求めるファンもいますから読者もつきやすいですし、「書いたものが読んでもらえる」という作家を志す者にとって喉から手が出るほど欲しい環境が最初からある程度整えられている。
そして実際には消費が形を変えただけに過ぎないのですが、二次創作をすることで「自分はいま『創作』をしているぞ」と思い込むこともできる。だからみんなこぞってやるのです。カニ人の二次創作をやってる私だってその一人です。しかし一次創作はそうはいきません。全部自分でやらなければいけない。誰かに読んでもらいたければ、他者にとっても面白いものを書かなければならない。
これが本当に本当に本当に難しい。
現に私のカニ人二次創作小説はありがたいことに一定数の方々に読んでいただいておりますが、一次創作である童話やホラー小説はそうではない。noteは閲覧数が明確に可視化されますので、どれが読まれていてどれが読まれていないかがハッキリわかる。そして数字は人の精神をストレートに抉っていきます。抉られているのに書かざるを得ない、それでまた数字に傷つけられるのに、それでも書いていなければ落ち着かないのが我ながら如何ともし難いところではありますが……。
突レさんの作品は、絵柄はやや人を選ぶかもしれませんが内容はどれも文句なしで面白いですので、未見の方はぜひご一読されることをお勧めします。面白いと感じるにせよつまらないと思うにせよ、氏の作品に触れずに一生を過ごすのは非常にもったいないですから。
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さて本題に入ります。皆さんは「ずーしーほっきー」というゆるキャラをご存知でしょうか? ご存知ない方は字面だけ見てもどんなキャラだか見当もつかないと思いますので、まずは実際に姿を見ていただきましょう。
この写真は、かつて私が関東に居住していた頃にたまたま上野駅で撮影したものです。ご覧になっていただければわかると思いますが、見る者に強烈な印象を与える姿をしております。
焦点の合っていない大きな目、サカバンバスピスを彷彿とさせる感情が読めない顔、ぴっちりしたタイツに包まれた長い手足、そして腹部にある謎の白い粒々……そのインパクトは当時の私の脳内にきわめて曖昧ではあるものの存在していた「ゆるキャラ」の常識的イメージを根底から揺さぶり、一緒にいた妻ともどもしばらく呆気に取られておりました。そのときの心境を言葉にすれば「なんだこいつは」の一語に集約されます。
ずーしーほっきーは北海道北斗市の公式キャラクターです。北斗市は北海道西部に位置する人口約43,000人ほどの自治体で、地理的には函館市に隣接しています。
制作を担当した市職員の中に、ダマスカス出身のアラブ人が記した魔道書を所有しているオカルト愛好家でもいたのかと思いましたが決してそういうわけではなく、北斗市の魅力をPRするために市と公立はこだて未来大学が共同でデザインし、複数の候補の中から投票で選ばれたとのことです。
モチーフはホッキガイのお寿司。寿司モチーフのキャラクターといえば、パッと思いつくのはポケモンのシャリタツですが、ずーしーほっきーはその先駆けみたいなものかもしれませんね。ホッキガイというのはウバガイ(標準和名)の北海道での呼び名だそうです。
ちなみにウバガイを以前のデスモスチルスの記事にならって分類すると、真核生物ドメイン→動物界→軟体動物門→二枚貝綱→マルスダレガイ目→バカガイ科→ウバガイ属→ウバガイ(種)となります。デスモスチルスは脊索動物門でウバガイは軟体動物門。並べてみるとかなり根本的なレベルで異なるグループの生物だということがわかります。こうやって分類学の視点から生物同士を比較するのも楽しいですよね。
話が脱線しました。ずーしーほっきーのお腹にある白い粒々は、どうやらシャリを表現しているようです。これは本体から分離することもできます。さきほどの写真をもう一度よく見てください。
両手に一つずつ楕円形のものを持っていますね。これが分離したシャリです。私が見たときには、足を止めた通行人に渡そうとしていました。シャリだけ渡されてもそれはただの酢飯であり渡された方も困るのではないかと思われますが、あれはひょっとしたらずーしーほっきーなりのおもてなしや親愛の気持ちの表現だったのかもしれません。だとしたらニンゲンと人外との価値観の違いが想定されていて意外に奥深いですね。
設定も面白いです。あまりゆるキャラに造詣は深くないのですが、公式資料に「何を考えているかわからない」と記載されるというのはよくあるのでしょうか? 鳴き声は「ホキホキホキホキー!」。癖が強すぎる。語尾に「〜ホキホキ」とつけるとありますが、これは長すぎたのか現在は「〜ホキ」に変更されている模様ですね。ここはちょっとカニ人と共通する部分です。彼らも語尾に「〜カニ」とつけますからね。
専用のWEBページもあります。その名も「北斗市公式キャラクター・ずーしーほっきーinformation」。
画像データも用意されていますので、せっかくなので本記事でもありがたく使わせていただきましょう。ガイドラインもしっかり整備されているあたり、北斗市がどれだけこのキャラクターに力を入れているかがわかります。
思ったよりも画像の差分が多いというのにも驚きましたが、やはり攻めたデザインですねぇ……焦点の合っていない目もそうですが、微妙にひょろ長くてヒトっぽい手足も見る者に言い知れない不安を与える要因になっている気がします。あと動きも独特です。
ちなみに焦点が合っているバージョンもありました。
見つめられるとそれはそれで怖いですね。後ろから見ると目やシャリなどの特徴が全部消えるので、もはや何者なのかすらわかりません。
……という感じで紹介してきましたが、北斗市のゆるキャラ・ずーしーほっきー、いかがでしたでしょうか? 独特なデザインだとは思いますが、個人的には好きです。ただし生活を共にしたいタイプかと言われるとそうではなく、キャラとしては好きですがグッズとかを手元に置いておきたいわけではない。
皆さんの前にもいつか現れるかもしれませんので、そのときは本記事の内容を思い出していただければ嬉しいです。運が良ければシャリを分けてもらえるかもしれませんよ。とはいえ公式に「何を考えているかわからない」と明記されているので、何かの拍子に機嫌を損ねないとも限りません。怒らせて寿司ネタにされたとしても当方は責任を持てませんので、どうかそこは自己責任でお願いいたします。
ホキホキホキホキー!