短編小説 「ベター・コール・ソウル」へ愛を込めて #1/2
Netflixのドラマ「ベター・コール・ソウル」好きが高じて、短編小説を書いてみます。ラストシーズンの前半と後半のお休み時期、何かしたくてたまらなくなりました..
ドラマを観ていなくても分かる内容ですので、どうぞお目通しくださいませ。
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氷の入った飲み物をえらぶだろう、そんな晴れの日、
木々の葉も川の水面も風に吹かれ、太陽の光を受けて、この瞬間の輝きを放ち続けている。
土手に敷かれた芝の上に、シロツメクサをよけるように座ると、お尻に土の冷たさが伝わる。
午前10時、その日は平日なので、住民たちは忙しく、ぽつぽつと人影が見えるだけ。
仕事を始める時間も終わる時間も自由なヨゼアンは、この時間にここに座ると、川の水はどこから来たのか、どこへ行くのかに思いを巡らせるのだった。
目の前の川の水は、雲だった事もあれば、雨だった事もあり、もしかしたら、自分のシャワーだった事もあるのかも、深海の魚に飲まれた事もあるかもしれないし、渓流下りで石の間を滑った事もあるかも。ナイアガラの滝で決死のダイブをしたかも。
そして万物へと意識が広がってゆくのを一瞬感じる。
自分と全てが繋がっている万能感。
この感覚を一瞬でも感じるのがいいのだ、瞑想の一種であって、本で知った方法だ。確かに頭がスッキリするし、体にもいい気がする。
その日も、気候の良さも手伝って、リラックスしたいい気分だった。
いつもなら、そのまま15分ほど川を見て、家へ帰り、仕事をはじめる。
だけれどその日は、いつもと違った。
大声で、電話をしている中年の男性がこちらへ歩いてくる。
男性を見ると、マイクとイヤホンが一体のインカムをつけて、大きな身振り手振りで話している。その身動きに合わせてペラペラと揺れるスーツがその人物の人柄を表しているようだ。失礼な見方だが、自分の好きな時間を急に終わりにされたような気がしたヨゼアンには、そのように見えた。
男性は大声で話しながら、ヨゼアンの後方にあったベンチにどさっと座った。
ヨゼアンは、急に居心地が悪くなった。
でも立ち去る気にもなれなくて、芝生の上でゴロンと横になった。そしてなぜか寝たふりをした。
いや、ただのフテ寝だ。いい大人が一人で勝手にフテ寝とは、ヨゼアンは自分を客観的視点で見ないように努めた。
さらに自分はそのインカム野郎に負けたような気がして、屈辱的な気分でさえあった。
さっきまで、自分は万物と共にあると感じることができていたのに、なんという事だろう、今はただの砂つぶのように拭けば飛んでしまいそうな自尊心だ。
もうやめた、ここは潔く立ち去ろう、こんな気持ちは終わりだ、と起き上がろうとした時、男性がまた電話をはじめた。
「ハイ!迅速正義の、便利屋のソウル・グッドマン!」
「はい、ええ。そうです、、それは大変だ!でもソウル・グッドマンがいれば大丈夫!」
「ご住所は?」
「今日の13時ならなんとか時間が取れるかと。。。ok!」
ヨゼアンは、自分がここで寝たふりをしている意義を見つけた。
ペラペラのスーツでペラペラ喋る便利屋のソウルの話に興味が出てきた。(ただの盗み聞きという客観的視点はヨゼアンには、今はない)
また電話が掛かってきた。
随分と人気の便利屋のようだ。
「やあ、サリーかい!その後は円満かい?え?!また喧嘩しているのか!」
「すぐに駆けつけたいけど、今はこっちも立て込んでいるんだ。あっ、でももうすぐ、解決できそうだよ。夫から握手を求める感動的なシーンを見ているよ。」
「今日の夕方なら寄れるけど、それまで、彼に飲み物をぶちまけないでいられるかい? 念の為、私が行くまで熱い飲み物はやめておくんだよ、ハハ。」
「じゃあ!」
ソウルは、夫婦問題に特化した便利屋なのか。
ヨゼアンは結婚していないが、恋人との喧嘩を思い出すと、そういった問題を扱う便利屋の需要は納得だった。
ソウルのペラペラのお喋りで深刻な問題も軽くなる、といった効果もあるのかもしれない。きっと彼にとって天職なんだ、と思った。
また電話が掛かってきた。
「ハイ!迅速正義の、便利屋のソウル・グッドマン!」
「やあ、ジュンコ!え!今すぐは無理だ。」
「今は次の現場へ急いでいるところなんだ。」
「では、移動中の間だけ、電話で話を聞くよ。料金は変わらないけどいいかい?」
#2/2はこちらから
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海外ドラマ「ベターコールソウル」のラスト6シーズン、前半が衝撃的に幕を閉じました。
7月からの後半が楽しみでなりません。
そんな、ベターコールソウルへの愛を短編小説で表してみたいと思い、書いたものです。
ソウルの職業は弁護士ではなくて、便利屋にしました。
舞台は、自分の近所の川で、そこにソウルがいたら、、という、自分が喜ぶ内容です。
ソウルに対して、最初は皆、眉をひそめるけれど、付き合ううちになぜか巻き込まれている、取り込まれている、という流れを書きたいと思いました。
お付き合いくださりありがとうございます。
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