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美味しい記憶 ルームメイトが作ったグリーンカレーとルンピア

こんにちは。

昔話ばかり書いていますが、今回も。
まだ学生のとき、ワーホリでカナダのバンクーバーにいた頃に出会ったルームメイト「Kちゃん」のことと、彼女が作ってくれた料理の話を書いてみたいと思います。
お付き合いいただければ幸いです。

ホームステイ先の契約期限が切れるため、わたしは街の中でルームシェアができる物件を探していました。

ネットで空きの物件を見つけ、いざ内見へ。
その時がKちゃんとの初めましてでした。
Kちゃんは日本人女性で当時22歳。わたしはいっこ下の21歳。
「話しやすそうな人だな、ここに住めたらいいな」と感じたのでほぼ即決。
Kちゃんの当時のルームメイトが帰国するため、その入れ替わりで住み始めました。

Kちゃんは元々ベッドルームを使っていたので、わたしの賃料を少し安くしてもらって、カーテンで仕切られたリビングルームで暮らしはじめました。

リビング部屋でも厚いカーテンで仕切れば完全個室。
テレビもテーブルも既にあって、窓からは美しい夕日が見れる。座れば沈むほどのクタクタに使い古されたソファ、ベッドには「一応ファブリーズしときました」の置きメモ。
ここに住んできた人たちの残していった空気も含めて、21の私には上等でした。

共有するのはバスルーム、キッチン、冷蔵庫。
入居時から感じていたことは、Kちゃんのインテリアの工夫が可愛いことでした。
裂き布で編まれたおしゃれなバスマットは彼女の手作り。洗面台には一輪のガーベラ。わたしはそんな、あらかじめ出来上がったセンスのいい
“女の子であることを存分に楽しんでいる”
インテリアの中に運良く住みはじめました。

ある休日の朝、わたしが髪型をオールバックのポニーテールにして、キッチンに立って自分のごはんを作っていたら、Kちゃんが
「前髪上げてるの可愛い〜」と言って、後ろから覗き込むように声をかけてくれたときは、まるで自分が小さな子供になって、うんと大人のお姉さんに褒めてもらえたような気持ちになって、嬉しかったのを覚えています。
(へえーあたしにもそんなチャームポイントがあるのか)みたいな。照れくさい気持ちになりました。

小鳥がさえずるような(マジで)柔らかな声で、英語を流暢に使いこなす彼女はトルティーヤのお店でバイトをしていて、現地の外国人にも沢山愛されていました。

部屋にはいつも友達が出入りしていたし、
メキシコ人の女の子が、帰国するからと彼女に約束なしで会いにきて、プレゼントをしていたり。
部屋からは別れを惜しむ鳴き声が聞こえてきました。

なにせモテるので、彼女の職場の隣にあるスタバで働く日系人の男の子が、店のお菓子をふんだんに抱えて彼女を口説きに来てたこともあったな。

手先も器用で、帰国していくバイト仲間には手編みのニット帽を編んであげていたり、手作りで人に気持ちを伝えることを日常からやっているひとでした。


自分をご機嫌にする方法を沢山もっているひとで、ひとりのときは鼻歌を歌いながら朝ごはんを作っていたり、
共有スペースのテーブルでは日本にいる友達と楽しそうにチャットしていたり。
あるときは自分の枕カバーに花柄のアップリケをアイロンでつけていたり。
かと思えば、お弁当を作ってピクニックに出かけて行ったり。
彼女の後ろ姿からはいつも「るん♪」が漏れていました。
彼女がルームメイトとして共に暮らしていることは、わたしの心に日に日に栄養になっていき、生きるpowerをその姿で見せてもらっていました。

裸足にヘンプ編みのアンクレット、ピンクのミニスカート、フラガールのように長いロングヘア、海外ドラマ好き。ものづくり好き。
乙女心と愛のかたまりみたいな人。
彼女が裸足で床を歩くと、まるで床が喜んでるようだったし(大袈裟でもなんでもなく)、Kちゃんの持つ要素は自分にはないものだらけで、刺激的でした。

そんな彼女が作ってくれたごはんの中で一番印象に残っているのが
グリーンカレーと、ルンピア(フィリピンの細長い春巻)でした。

ここでやっと料理の話です。

日本で英会話教室の先生をしながらベトナム料理屋でバイトもしていた彼女はエスニック料理が大好物で、
ある日一緒に出かけた外出先でグリーンカレーのペーストをみつけては、うきうきとココナッツミルクも買い、その日の夜ごはんに美味しいグリーンカレーを作ってくれました。

もう一品のルンピアというのは、挽肉だけを包んだ細長い春巻きのようなものです。
Kちゃんはルンピアを日頃から沢山作って冷凍ストックしていました。
スゥィートチリをつけて食べるのです。スゥィートチリの美味しさを教えてもらったのも彼女から。

6階の角部屋、窓を開け放したキッチンで夕方の風を感じながら、ココナッツの香りに「癒される〜♪」と言ってご機嫌に鍋をゆっくりかき混ぜる彼女はとってもいけていて、可愛く、憧れました。

彼女のどの友達よりも贅沢なシーンに出くわしてるのではないかなと思うくらい、彼女の家での時間を目の当たりにするのは心地よかった。

食べながら色んな話をしたけど、年齢的にやっぱり恋愛系の話が一番多くて、その時間が好きでした。彼女は外国人日本人問わず常に男の子にモテていたし、日本に大好きな彼氏もいて、その彼の話を聞くのがすごく楽しかった。

彼女の部屋で一緒に食べて過ごした時間。グリーンカレーの甘やかな香りと、彼女のご機嫌なムード。楽しいお喋りからくる彼女のハートの温度。全部あったかかった。

家族ではなく、プライベートも被らない者同士が、「おはようー」「おかえりー」って言いあえることって、不思議で素敵なこと。

カナダに行ったことの何が成功って、英語を使えたことももちろんだけど、彼女に出会えたことが成功だったと言っても過言ではないくらい。

自分で幸せを見つけること。自分の人生を愛し、女の子であることを存分に喜びながら自分をご機嫌にする工夫を、そこかしこに散りばめて生きること。そして笑顔のpower。Kちゃんと過ごした日々からはそんなことを教わりました。

わたしの宝物。大きな出会いのひとつです。


読んでいただきありがとうございました。


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