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Photo by
goma_cheese
猫は実家のにおいがした
今朝、実家の猫が虹の橋のたもとに旅立ちました。
16年前。
雨上がりの空き地で鳴いている子猫を見つけたのは母でした。
まだ手のひらにおさまるサイズで、生後1か月ほど。
顔は目ヤニで汚れていました。
あまり長くは生きられないかもしれないと思ったけれど、子猫の叫び声は必死で。
指先でふれると、母猫の乳を求めるようにちゅぱちゅぱと吸いついてきて。
周囲を見回しても、母猫もきょうだい猫も見当たりません。
どうしたらよいか悩みましたが、このまま放置しておいたら明日にも死んでしまうだろうと保護しました。
子猫は男の子でした。
彼は最初の弱々しさが信じられないくらい、やんちゃに育ちました。
よく先住わんこの不意をついて大きな顔に飛びかかっていたので、いつか噛まれてしまうのではないかとハラハラしたものです。
わんこは優しい女の子で、迷惑そうにしながらも穏やかに対応してくれましたが。
そんなわんぱくな彼も、両親や私、またのちに家族に加わった私の夫には甘えん坊でした。
あごの下や眉間を撫でたり、おしりを叩いてあげたりすると、グルグルと喉を鳴らして。
実家を出た私が数か月ぶりに帰ってきても、すぐに鼻チューしてくれて。
そんなとき、彼のつやつやした毛皮からは実家のにおいがして、帰省の実感が湧き上がるのでした。
ただ私が飼っていた猫たちとは折り合いが悪く、お互い警戒しあっていましたが(笑)。
猫としては孤高だった彼ですが、向こうではあの子たちとのんびり日向ぼっこをしていたらいいな。
16年前。
雨上がりの朝、しっとりと濡れた草むらの中で。
一生懸命鳴いて、ここにいるよと教えてくれてありがとう。
うちに来てくれてありがとう。
たくさんの思い出をありがとう。
いずれ私たちもそっちに行くから、そのときはまた遊んでね。