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Suite Escapism -ATAMI セカイエ-
国内の場合、旅の目的地はだいたい神社とホテルで決める。
神社参拝は趣味のひとつで、くりかえし呼んでいただけるところもあれば、行きたくてもなかなかお呼びがかからないところもある。
今回は熱海、来宮神社に数年来の願いがかなって参拝。今回はすんなり到着して正式参拝も貸し切りだった。境内で枝を払われるたびに飛び散る樟脳の香りが、さらにここをパワーアップさせていると感じる。樹齢2000年の大楠は圧倒される存在感だけれど、入り口近くにも大楠があり、参道にも楠々。これだけあれば、お守りにもなっている「虫除け」の効能も確かには違いない。
来宮神社から激しい角度の山道というか崖の道を上がっていったところに、『ATAMIせかいえ』はある。びっくりするほどの急斜面は今から約60万年前に噴火した多賀火山(一部は湯河原火山)の東側斜面が波と風雨の浸食を受けて、できたらしい。崖は非日常の舞台には打ってつけだと思う。
せかいえ屋上のテラスから見る相模湾。久しぶりの晴れ、夏になりかけの空。
夕食まで時間があったので、部屋の温泉に入ってからニッカのFROM THE BARRELでハイボールを作って、だんだん色が濃くなる海を見ながら待つ。
鎌栄螺(かまサザエ)を、ご存知だろうか。400g以上の大ぶりなものを指すそうで、伊豆近海で獲れるらしい。今が旬。甘味があって、歯応えと柔らかさの同居が極上。先付けは、その鎌栄螺とホワイトアスパラと原木椎茸、クレソンを合わせて栄螺の肝ソースでいただく逸品。自分で入手できない食材だったり絶妙な火入れかげんによる食感に出会うと、一気にテンションが上がる。
コースで最も印象に残ったのはこの鎌栄螺と、椀ものや鍋に使われていた出汁の複雑な旨味とそれを引き立てるほんの少しの塩。舌が味を探しに行く、穏やかで複雑な旨味。あいなめの葛打ちも、黒毛和牛と芹も、出汁がいちばんの主役で、魚や牛の味わいと香りを引き立てていた。おなかいっぱいになりつつ、もうすぐそばからおなかが空いてくるような繊細かつ満足なコースはATAMIせかいえ つくし料理長 山口さんのお料理。
二次会は部屋でFROM THE BARRELのロック。
タイトルは今回の旅で聴いていた曲 Suite Escapism: in between から。これまたロックで大好きなHiromiちゃん。非日常の空気がご馳走をさらにおいしくしてくれた、甘い逃避行でした。(つづく)
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