ものがたり) 夢路にて#2
ガス燈が照らす街路は、もう人影もまばらだった。深夜に近い大通りには、汐見と冬月を乗せた車のほかに、走っている車はほとんどない。
後部座席で汐見はさきほど終わったばかりの夜会のことを、というよりは、冬月の舞台のことを思い返していた。
汐見家の客館で行われた今夜の舞台は成功だった。
叔母の千津子をはじめ、女性客たちは冬月の姿を見ただけで狂喜していたし、芝居好きの財界人はもちろんのこと、さして興味のなさそうだったお歴々も、気がつけば冬月の優美な所作に釘づけになっていた。すべ