嶋中労著「コーヒーの鬼がゆく〜吉祥寺『もか』遺聞」/コーヒーおたく道を極めた偉人たち
風邪で寝込んでいた後半、体が楽になって来た頃読んだ本です。
これは、嶋中氏の別著「コーヒーに憑かれた男たち」と共に私の愛蔵書です。
かつて吉祥寺井の頭公園近くにあった幻の喫茶店「もか」店主 標交紀(しめぎゆきとし)氏をご存知でしょうか。
私は前著「コーヒーに憑かれた男たち」を読んで彼の存在を知りました。
読み終わった時「こんな凄い人がいたんだ…」としばし脱力したことを覚えています。
珈琲道に血道をあげ命を削るように対峙した亡き標氏に対して深い畏敬の念を抱いた私でした。
標氏は、寝る間も惜しんで
ストイックに、それはそれは常軌を逸するほどに焙煎に真剣に取り組んでおられた方でした。
精神を病むほどに。まるでとり憑かれたように。命をかけて毎日珈琲豆と格闘する様は、周りから見たら気狂いじみていたほどだったと思われます。
一瞬の煌めくような最高の焙煎度合いを求め苦しむ彼を案じ
妻は気晴らしに旅行に誘い、2人は世界中を旅したそうです。
しかし、全ての旅において、
旅先で皆が行くような名所名跡には目もくれず、ひたすら朝から晩までカフェを巡る旅であったといいます。
旅の間に買い集めたミルなどの展示会が何年か前にあったようです。知らなかった〜行きたかった見たかった〜😭
ところで、
嶋中氏の前著「コーヒーに憑かれた男たち」では、日本の焙煎家御三家と言われている3人の方が描かれていました。
その3人とは、
吉祥寺「もか」標交紀氏(故人)
南千住「カフェ・バッハ」田口護(まもる)氏
銀座「カフェ・ド・ランブル」関口一郎氏(故人)
この「コーヒーの鬼がゆく」は主に標氏にスポットライトを当てた著作なのですが、その周辺に存在していた珈琲焙煎の名士についても多く語られていて、
珈琲好きにはたまらない名著だと私は思っています。
理想の味を追求してやまない珈琲の求道者たちが、どんな焙煎器を使っていたか。どんな思いで焙煎に向かっていたか。
また、抽出にどんな拘りを持っていたか。などなどの逸話が満載です。ここでは詳しくは触れませんが、少しだけ寄り道してみましょう。
御三家以外の巨人たち
「大坊珈琲店」大坊勝次
岩手から上京して33年間、東京青山と表参道の交差点近くに開店した小さな店で、来る日も来る日も手廻しの焙煎器を回し客に提供して来た大坊氏は、上京して間もない頃井の頭線沿線に住んでいて毎日のように「もか」に通っていたそうです。
標氏とは1度も言葉を交わすことはなかったが、彼はいつもカウンターから見える奥のスペースで真剣に焙煎をしていた標氏をただじっと眺めていたといいます。
残念なことに、「大坊珈琲店」は2012年12月に、ビル解体のため閉店しました。
私は、その1ヶ月ほど前に上京した際滑り込みでお店で珈琲を飲む事ができました。
あの時のことは今でもよく覚えています。(大坊氏は残念ながらご不在でしたが。)
この時のことは、またいつか書けたらと思います。
「北山珈琲店」北山富之
上野バイク街を抜けたT字路にポツンと佇むこの店は、
「30分以上お断り」「待ち合わせお断り」「読書携帯お断り」「おしゃべり禁止」という貼り紙がしてある、驚きの店です。
かつて店主が心を病んでいた時期には「飲み残したら倍額」とか「15分で帰れ」などといった過激な貼り紙がしてあったというから客は寄り付かなかったのではないかと思われますが、北山氏は、経営のことなどお構いなしで、とにかく自分の淹れた珈琲に対する思いが熱い方であり、その思いが報われないことが我慢ならなかったのでしょう。
今はだいぶ丸くなり15分は20分、30分と増えたようですが、
Google mapでお店を検索してみると、その姿勢は今も貫いておられるのが見て取れます。
私はこの話を前著で読んだ時、そんな店絶対行きたくないと拒否反応が起きたのでしたが、
今は、生きている間に(店主さんも私も。)北山氏の珈琲を是非とも味わってみたいという思いがムクムクと湧いています。
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幻の喫茶店「もか」マスター標氏の話に戻りますが、
昭和37年にオープンした「もか」は、平成13年、客席サービスをやめて豆売り専門店となった。
標は既に還暦を迎え、午前中に焙煎して午後のみの営業をしていたが、
平成19年4月、脳出血で突然倒れ、同年12月のクリスマスイブの日に息をひきとった。そうです。
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私は、
ストイックに道を追求する人が好きです。その狂おしいほどの情熱に、自分には欠落している何か尊いものを感じるからかもしれません。
(何故か全然そうじゃない人と結婚してしまったよ~これが現実🤣)
あー、幻の珈琲を飲んでみたかったなぁ~☕️
お隣山形に、彼のお弟子さんがお店を構えておられるようなので、機会があったら行ってみたいな。
(「コフィア」というお店です。)
ちなみに、「もか」があった場所は、今は「チャイブレイク」というお店になっているそうで、こちらもいつか行ってみたいな。
行ってみたいお店を全部周るには、
あと30年はかかりそう😂
困ったな(笑)
長文を最後までお読み頂き
ありがとうございました❤︎