見出し画像

梶山正著「ベニシアのおいしいが聞きたくて」

書店で見かけて購入し一気読みしました。


2023年6月に天に召されたベニシアさんを献身的に支えたご主人梶山正さんの介護の記録です。

辛い執筆だったことが伺えました。
今まで、ただぼーっと(ベニシアさんごめんなさい)「ネコのしっぽカエルの手」を素敵な暮らしだなぁと眺めていただけの私なのに、
まるで身近な人の死に接したような感覚が襲ってきて、読み終わって何日も経つのにまだ私の脳裏から彼女の笑顔が消えません。

2015年、64歳の時に目が見え辛くなり白内障という診断で手術を受けたものの回復せず、
2018年にようやくその原因はPCS(後部皮質委縮症)つまり後頭葉が委縮するアルツハイマー病の一種だとわかります。
2020年、コロナ禍突入の頃、ベニシアさんの視力はどんどん衰え正さんの介護が限界に達し、コロナの影響によりケアマネさんと全く接触できないまま正さんは自力で介護施設を探し2021年、グループホームへの入居を決めます。

自分が楽をするために追い出したと自分を責める正さんは、なるべく毎日彼女に面会に行って献身的に支えていたものの、コロナの影響で何ヶ月も会えないということが何度かありその度に彼女は孤独に陥り心も体も衰弱して行きました。

2022年8月、グループホームでクラスターが発生。ベニシアさんも陽性となり入院。
回復後自宅に戻り、正さんや多くの友人やお子さんに囲まれ 最後はせん妄の中でも「人を助けたい」と叫んでいたベニシアさん。

2023年、装着していたカテーテルに細菌が付いて感染症を起こしカテーテルを外したが、この時に、正さんがそれまで考えたことがなかった「延命」という問題に突き当たります。
胃ろうをしなければ死んでしまう。しかし既に胃ろうも無理な状態。
結局誤嚥性肺炎を起こし
退院13日後の6月21日、静かにこの世を去りました。(享年72才)

ベニシアさんを見送ったあと生きる望みを見失い自分も死のうと思った正さんでしたが、
生き抜くことの尊さを教えてくれた彼女の最期を伝えたいと、気力を振り絞ってこの本を執筆されたということでした。

✳︎✳︎✳︎

大原での彼女の暮らしをテレビでご存知の方にとっては、読むのが辛い本かもしれません。
今本をパラパラとめくりながらまた涙が滲みます。

人が死ぬということはこういうことなのかという現実を突きつけられた気もしましたし、延命措置についても考えさせられました。
何故なら、延命措置は、その処置において本人がかなり苦痛を味わうものだからです。それでも生きていたいか。
それを周りの人が決めるのは酷であり、衰えてしまってからでは本人もどうしていいかわからない。元気なうちに、自分の意思を伝えておくことの重要性を教えてもらったように感じました。

今はまだベニシアさんの最期が頭に残っており悲しみに覆われている私ですが、
でも、大原で自然を愛し人を愛しそんな暮らしを愛していたベニシアさんの姿は、いつまでも人々の心を温かくさせてくれることでしょう。

ベニシアさん、壮絶な人生でしたね。でも、あなたに会えたことは幸せな体験でした。

彼女の英語の朗読が
今でも脳内で聴こえるようです。


ベニシアさん安らかにお眠りください。


最後まで読んでくださり
ありがとうございました❤︎

この記事が参加している募集