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辻村深月著「傲慢と善良」/他人軸を捨てた時人生は変わるかもしれない。

noteのお友達
しんちゃんさんの記事を読んで、私も読んでみました。
ネタバレを含みますので、これから読む方はスルーしてくださいませ。


辻村深月さんの著作は3冊位読んだと思うのですが、最初に読んだ「朝が来る」が面白くて、ドキドキして夢中で読み進めた事を覚えています。

あらすじ

婚約者・坂庭真実が姿を消した。その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる。「恋愛だけでなく生きていくうえでのあらゆる悩みに答えてくれる物語」と読者から圧倒的な支持を得た作品が遂に文庫化。《解説・朝井リョウ》

帯より

しんちゃんさんは、この小説を読んで何度も鳥肌が立った と書いておられます。それは、
人が人を選ぶというプロセスが
恐ろしいぐらい言語化されていたからだと。
私は、自分が結婚に至った経緯を思い返すと、なんとなく とか流れで とか 勢いで とか そろそろしないと とかそんなワードしか思い浮かばない、トホホな感じなのだけど、
しんちゃんさんの言葉に「確かに〜!」と思いました。

相手を選ぶプロセスの中を思い返してみると間違いなく架や真実と同じように傲慢と善良が渦巻いていたと思う。

しんちゃんさんの記事より引用

映画などでは恋愛をして結婚するまでの過程を明るい背景で描かれることが多いが、
自分が結婚するまでの過程を思い返したとき、単に明るいだけの色ではなかったと思う。
色んな色が混ざり不安のような妙な気持ちがあったような気がするのだ。

しんちゃんさんの記事より引用

主人公の真実(まみ)は、一見善良の塊のような女性なのだけれど、実は根っこに傲慢も抱えていて、そこには
どこまでも自分を囲い込み干渉してくる母親の傲慢が、多分に影響していたと感じました。
サイドストーリー的に、母子密着、共依存の問題も描かれていて、
母は、事あるごとに
「あなたはダメな子。私がいないと何も出来ない。私がいないと生きていけないの。だから私が守ってあげる」といつも言っていた。
ここからは、ディズニー映画「塔の上のラプンツェル」に出てくる魔女にも似た、母親の歪んだ感情を見て取ることができました。

まさにこの母もまた一見したところ善良に見えるいい母親。(だから厄介)
本当は、子供に対する愛情と勘違いした傲慢が潜在的に心の奥底で渦巻いているのだと感じずにはいられませんでした。

そしてその「傲慢と善良」は、思い返すと確かに私の中にもあった事を私も認識したのです。(認識してはいたけれど見ないふりをしていたのかも。)

しんちゃんさん同様私も、結婚相手として決意する過程でも、全く別のその他の場面でも、そういった自分の中の傲慢が確かにあったと思うし、今も、あるのだと思います。
(人間だもの^^;)

小説では、ある大胆なプロセスを経て、真実は初めて親からも恋人からも自立します。

それまでずっと他人軸で生きてきた2人が生まれ変わっていく。
それを見ることが出来た事をとても嬉しく思いました。

文庫本で500ページという長編で、少し時間がかかりましたが
とても面白かったです。
いや〜、作家って本当凄い。
こんな長編を書くのにどれだけ心すり減らすことでしょうか。

ところで、主人公の女性が「真実」さんなのだけれど、何度も何度も「しんじつ」と読んでしまい、名前に込められた作者の意図もなんとなく感じました。

長文を読んで頂きまして
ありがとうございました❤︎

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