週末お遍路さん(42):先達さんからいただいたラブレター
今回の週末お遍路さんで、最後となる59番国分寺さん。広い駐車場に車を停めて、白衣を着て境内に向かう途中、黒い白衣(なんか矛盾してるな)の先達さんがいらっしゃった。
「黒もあるんだね」
「めっちゃカッコいいね」
「でも1週目の人間が来てたらめっちゃ恥ずかしいヤツだよね」
3人で小声で話しつつ、どうしても我慢できなくなって、「黒もあるんですね」とお声がけ。
「あるんですよねぇ。●番(忘れた……)の前で売ってるんですよ」
「カッコいいですねぇ、黒」
「黒だけじゃなくて、ムラサキとかもあるんだよ」
「へぇ~!」
と、ここではあまり会話が盛り上がらず。
そのまま本堂・大師堂と進み、納経を終え、境内の「握手修行大師」のもとへ。
お大師さまと握手して、ひとつだけお願い事ができるらしい。「お大師さまは忙しいから欲張っちゃダメよ」みたいなひと言も書かれてました。
納経も無事に済ませ、駐車場に戻ってからが今回のメイン。
私たちより先に駐車場に戻られていた先達さんは、お知り合いのお遍路さんと談笑中。その姿を見たOちゃんから、こそっと耳打ちが。
「さっき、納経所で納経帳しまってるところが見えたんだけど、先達さんの納経帳、すごい膨らんでたんだよね」
「マジ??」
「私たちのも、納経印が増えてきて、最初よりちょっとだけ膨らんできたじゃん?でも比じゃなかったの」
「そうなの!?見せてもらいたい!!」
こそこそ話していると、先ほどの先達さんもお知り合いとのお話が終了。
ということで、すかさず再度、話しかけることに。
「あのー……納経帳見せていただくことって可能ですか…?」
「え?納経帳?」
「すごい分厚くなられてて、見せていただきたいな、って思って」
どうぞどうぞ、と快く見せていただいた納経帳、全ページが重ね印で真っ赤。
お遍路さん、2周目以降は、新しい納経帳にしてもいいけど、最初の納経帳に、印だけ重ねていただく「重ね印」をもらうのが一般的。先達さんの納経帳は、印の形も分からないくらいに真っ赤に染まっていました。
「すっっっっご!!!」
もう開いたとたん全員で驚愕。
何回重ねられてるか分からない納経印で、納経帳が一面、朱肉色なんだもの!
すっご!!!
先達さんて、すっっっっご!!
ちなみに「先達(公認先達)さん」とは、お遍路さんの指導者や模範として、霊場会から認定されている、プロお遍路さん。バスツアーでは先達さんも一緒に巡って、お経を唱える際はリーダー的存在になってたり、ガイドさん的なお仕事もされたりしてる。もちろん、ご自身でも何周もされていたりする。
お遍路さんを4周以上周れば先達さんの資格を取れる権利があるらしいんだけど(ほかにもお寺から推薦してもらう、とかいろいろ必要らしい)、今までお話した先達さんたちは、絶対に4周なんてもんじゃないレベルで巡礼されている方ばかりだと思う。
4周とか、そんなちょろいもんじゃないと思う。
だって貫禄が違うもの!!!
「え……これって、何周とか覚えてらっしゃいます??」
「20回くらいまでは重ね印も数えられるんだけどねぇ。もう分かんないよね」
そして、「さっき本堂で納経してる姿を見たけどね」と、いろいろと教えてくだいました。
私たちは、お経読ませていただきまーすの「開経偈」にはじまり、「般若心経」、「ご本尊のご真言(本堂)/お大師さまに帰依しますのお経(大師堂)」の若干の略式納経なのですが、「ご本尊以外のご真言を唱えるのもいいよ。誰かがリーダーになって、そのあとに残りの2人が続けてお経読むのもいいよね。お寺ごとにリーダー変わったりとかね」などなど。
どれも「ほぉ~」と思うことばかりだったんだけど、いちばん「なるほど!」と思ったのは、各お寺のご本尊である仏さまのご真言は、全部唱えるといいよ、ということ。
でも、基本ご本尊っておひとりじゃん?別の仏様のご真言も唱えるのってなんで??と思っていたら、その理由もしっかり教えてくれた。
仏教には初七日とか四十九日とか一周忌とかの法要があるけど、人は亡くなったあと、7日ごとにいろんな仏さまがお迎えに来てくれるらしい。初七日から三十三回忌までの区切りごとに、毎回違う仏さまが来てくれるそう。で、いろんな仏さまが極楽浄土に行けるよう導いてくれる。
だから、全部のご真言を唱えるといいんだよ、と。
「十三仏」って言うらしいですね(帰ってから調べた)。7日ごととか、けっこう頻繁に迎えに来てくれて極楽浄土へ送迎してくれるとか、超親切!(故人が極楽浄土に行けるよう、生きてる人間がそれぞれの法要で祈る、ってことだろうけど)
でもお遍路さんの納経帳は「極楽浄土へのパスポート」でもあるし、私たち結願したら、「アイツらはパスポート持ってるから、迎えに行かなくても大丈夫っしょ」みたいにならないかな?
ちゃんと迎えに来てくれるかしら……?
いやぁ、今回は最後までいろいろ教えてもらえる回だな!
しばらく立ち話をしつつ、お別れする直前、「これもご縁だから3人にラブレターをあげるよ」と、渡してくれたのは、なんと銀と錦の納め札!
各お寺の本堂や大師堂で、納経した証として置いてくるのが納め札なのですが、巡礼回数によってその色が変わります。
お遍路さんデビューの私たちは、(ぺらっぺらな)白。そこから結願の回数ごとに色が変わっていくんだけど、銀は25回以上、錦は100回以上!
「錦の納め札を持ってると、私と同じだけ周ったご利益があるって言われてるんだよ」
納め札をもらったら、こちらからもお返しするのがお遍路さんマナーなのですが、マジでぺらぺら納め札返すの恥ずかしいよ!!
「私たちもお返ししないと!」と、慌ててごそごそしていたら、「いいよいいよ」と、颯爽と立ち去られてしまいました。
ちなみに、銀の納め札が四国八十八カ所、錦の納め札が知多四国八十八カ所とのこと。
車に戻って、「なんか最後にすごいものもらっちゃったね」と、なんとなく休憩。
今回も最後にすごいの持ってきてくれたなぁ、お大師さま。
我らの最推し、やっぱりやることが違うぜ。