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新生児はまさに『生命力』の塊である

あの、生まれたばかりのはかなげな新生児。

そっと扱わないと壊れちゃいそうで…
目を離すと消えてしまいそうで…

新生児にはそんな不安定さを最初は感じるものです。

しかし…この新生児たるや実は素晴らしき生命力の塊!


私は助産師になって37年です。
その間、私の手の中で新生児の産声を2,000人以上受け止めて来ました。

今はその場から離れ後輩育成にシフトし始めています。

そこで
「助産師はどんな基礎教育を受けてきたんだっけ…」

久しぶりに助産学の教科書を広げてみました。

ところが…
私の物は1980年代でもう古書(笑)!

教科書は現場から10年は古いので
中身は1970年代の医学レベル。
もう歴史書だ~!

今どきそんなこと言わないし、しないし…ばっかり(笑)

それでも今も昔も変わらないのは
“新生児の胎外生活適応への劇的な仕組み”。

細かいデーターは医療機器が発達したのでより客観的になりました。

でも、その仕組みは人類が誕生して以来変わってないのです。

今日おさらいしたその仕組みの一つ『呼吸・循環』

胎児の肺は常に羊水で満たされています。

ちょうどブドウが果汁で満たされて皮と皮がくっつかないような感じ。

一旦水が抜けてくっついてしまうと膨らますのが大変なので常に羊水で満たして一定の圧がかかることになっています。

しかし、生まれたらこの水が抜けないと肺の中に空気を入れられないので水を抜く必要があります。

そこでママの産道を通過するときに胸を圧迫して羊水を搾りだし水抜きをします。

体が外に出ると胸が外圧から解放されるので元の形に戻ろうと肺に空気が入ります。

すると胸の圧が高まるので息を吐こうと“おぎゃ~”と泣く。

これが”産声”の仕組みです。

その後も吐いて空気圧が減ると又吸い込んで…泣いて吐くを繰り返します。

生後30分後には羊水がほぼ抜けて肺全体が膨らむことになっています。

こうやって肺呼吸が確立します。

一方、血液循環

胎内でママの胎盤から酸素の豊富な血液が送られてきて
右心房から卵円口という穴を通り左心房、左心室、上半身へと巡ります。

上半身を巡った血液は又右心房に戻り右心室、肺動脈、動脈管というバイパスも使って下半身に流れ胎盤に戻ります。



ところが産道を抜け肺から酸素が入ってくると
肺動脈から左心房に酸素の豊富な血液が入ってきます。

そして左心房から左心室、上半身、下半身へと血液が流れ右心房に戻ってくるという循環に変化します。


胎児期では酸素の豊富な血液はまず右心房に入ってきてたので
左右逆転現象ですね。

その他、血流の方向と圧も変化するので今まで使っていた臨時の穴(卵円孔)や通路(動脈管)が必要なくなり3日から2週間後には閉鎖します。


なんと劇的な呼吸・循環の確立でしょう!


心臓の大きな手術をするときに人工心肺装置という大きくて複雑な機械を何人もの大人が取り囲みます。
その他、色んな物を使って慎重にそれまでの心臓や肺の循環を変えます。


そんな大変な作業を
あの生まれたての新生児は私の手の中で
ほぼ一瞬で一人でやり遂げてくれていた…。

久しぶりに教科書を広げてみて…

新生児の生命力に改めて感動と感謝です。


又…お産に立ち会いたくなってきたな…。

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