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付加価値が“負荷の価値”になるとき

つい最近まで

付加価値

という言葉を
ビジネスの場で多用してきました。
それも、嫌っていうくらい。
さまざまな意味を持つ言葉ですが、
私の場合はまさに、プラスアルファのメリットを指してました。
要するにオマケ
それが相手の心をふるわせるに違いないと思っていたのです。

この企画が実現したら
さらにSNSものせます。拡散狙いましょう!

オンラインマガジンに3回ご出稿くださったら4回掲載します!

出血大サービスなんです、頑張ります、おトクです、ちょっとくらい無理しちゃいます……と言い募ることで、
なんとなく相手との距離が近まるような気もしていました。

しかし最近、これを覆す名言を聞いたのです。

付加価値に、言うほどの価値はないよ。

そう口にしたのは、美しいデザイン家電で知られる
バルミューダの社長、寺尾玄さん
この会社の製品は私もいくつか愛用しているのですが
モノそのものが持つ機能は超絶シンプル。
それを包むデザインの美しさが「付加価値」なのかと思っていたらちょっと違ってて、

パン焼き器を目指したのではなく
「最高に美味しい朝食とは何か」を突き詰めていったら
あのオーブントースターになった。

ということでした。

テクノロジーだこだわりだ、何だかんだあるとは思うのですが、
消費者である私は単純に、
飽きの来ない美デザインと焼き上がりの圧倒的な美味しさにただただ感動し、使い続けています。

で、前述の付加価値に意味はあるのか発言
果たして私は自らの商品に、
付加価値ナシで満点の完成度をもたらしてるだろうか?
それで相手を納得させられているだろうか?

この場合、
出版社で編集者として働いてきた私の「売りもん」とは、
企画力だったり文章だったり、タイトル、キャッチコピー、フォトグラファーやスタイリストに対するディレクション、人脈などです。
電化製品に比べるといささか、ふにゃふにゃしていて商品としての体をなしていないかもしれない漠としたものたち。
これらを相手に受け入れてもらえるよう、
今までの私は
「気に入ってくれるようなキャッチ案を10個くらい出します」とか
「カメラマンさんにはすべて3バージョンずつ撮ってもらうようにしますね、念のため」とか、
付加価値フルスロットルでプレゼンに挑んできてはいなかったでしょうか? きましたとも。

ミニマムでシンプル、本質的なものをみんなが探し求める時代、

たくさんの付加価値は

負荷の価値になっているかもしれない。

そんなことを考えると、
今後、誰かに何かを提案するとき、目指すべきものが見えてきます。
付加価値なんて不要なくらい、最適な価値を、ただひとつ。
「これ、お気に召さないなら他社に売ります」的な(言えませんけど)。

働き方が変わる時代、
自分の武器も戦い方も、変えていきたい。
いい食材満載の渾身フルコースディナーを提供し終わった後に
もう一品オマケのデザートをつけるような、
そんなビジネス戦略は辞めないとね、
……と心から思うのでした。

#付加価値 #働き方改革 #プレゼン下手

フードトレンドのエディター・ディレクター。 「美味しいもの」の裏や周りにくっついているストーリーや“事情”を読み解き、お伝えしたいと思っています。