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詩『はちみつ天国』

さっきまではちみつ湯が入っていたマグカップ

ふと目を離したすきに

いつのまに闖入ちんにゅうしたのか

とても小さなハエがとまっていた

いっしょけんめい、はちみつをむさぼっている

夢中になって、はちみつをむさぼっている

逆さにして振っても飛んでいかない

息を吹きかけても飛んでいかない

ならば仕方ないから、そのままにしてあげよう

ハエはしばらくはちみつ天国

嬉々としてしばらくはちみつ天国

まるでさいごの晩餐ばんさんみたいに

ハエはうっとりはちみつ天国

それからしばらくしてベランダに出てみて

マグカップをかるく揺らしてみたら

ハエは重たい体をふらふら起こし

柔らかな風吹くすみれ色の空のなか

のったりのったり飛んでいった


お読みいただきありがとうございます。