愛犬とはじめての旅行
子どものころ、愛犬とはじめて一緒に長野県の軽井沢へ旅行したときのことだ。
当時は今のように犬も一緒に泊まれる宿は少なく、両親がようやく見つけてきたのは、森林のなかに佇む貸し切り一棟のコテージだった。
すごい!コテージだって!と、当日、父の運転する車でワクワクしながら宿へ向かったのだったが、到着して目の前にあったのは、みるからに古びたおんぼろ小さな一軒家だった。
なにこれ、聞いていた話と全然違くない…?と家族みんなで蒼白になっているなか、愛犬だけが大はしゃぎ。尻尾ふりふり、小さな家のなかを興奮状態でくまなく探検しはじめ、押し入れのなかにあるカビくさい布団をだせば、無我夢中でそこを穴掘り。そんな姿をみていたら可笑しくなって、「ま、いいか」と家族みんなで笑いあった。
翌日の朝、朝靄立ち込める木立のなか、愛犬と一緒に散歩をした。愛犬の瞳はいきいきと輝き、緑や土の匂いを興味深く嗅いでは、自然を満喫して嬉しそうだった。
いま思い出してもあれは最低の宿だったけれど、最高の旅行だったと思っている。
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お題企画「忘れられない旅」をみかけたので(募集は終了していますが)、ハッシュタグ(#忘れられない旅)だけお借りしました。
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