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東京お散歩日記#23(自由学園明日館)

お散歩日記(自由学園明日館)
・・・11月△日 晴れ ・・・ 

ずっと行ってみたいなあと思いながらも、なんとなく行かずにいた自由学園明日館。ドラマ『名建築で昼食を』でも取り上げられていて、ずっと気になっていました。

そこで秋晴れとなった今日、ようやく見学しに行くことにしました。ということで池袋に到着。メトロポリタン口を出て、案内板に従って自由学園明日館へ向かいます。

途中、頭にふくろうの人形をのせた赤いバスを見かけました。池袋の街をまわるミニバスだそうです。かわいらしい見た目。いつか乗ってみよう。

この先にあるの?という住宅街の小道を歩いていきますが、案内板がところどころにちゃんとあるので道に迷う心配はなさそうです。

この道をまっすぐ行った先にあるそうで、

歩いていくと、「明日館の梟」なるものが目に入りました。池袋といえばふくろう。街のいろんな場所で見かけますよね。

さて、自由学園明日館に到着しました。受付で見学料を支払い、早速なかへ。ちなみに今日は喫茶付見学を選びました。

木漏れ日模様の芝生の先にみえるのが、国の重要文化財でもある自由学園明日館です。天気が良いのもあって、屋根の緑色が目に鮮やかです。

この自由学園は、大正10年(1921年)にジャーナリストである羽仁もと子・吉一夫妻によって女学校として創立されたそうです。生徒数増加により昭和9年(1934年)に自由学園は東京都東久留米市に移転したそうですが、その後、残ったこの建物は「明日館」と名付けられ、そして平成9年(1997年)に国の重要文化財に指定されたそうです。

設計は、アメリカの近代建築の巨匠であるフランク・ロイド・ライトとその弟子の遠藤あらた。羽仁夫妻は友人である建築家の遠藤新を介して、当時、帝国ホテル設計のために来日していたライトに校舎の設計を依頼したそうです。ライトは帝国ホテルの仕事で多忙だったようですが、羽仁もと子の話すこれからの女性のための教育理念に深く共感し、この校舎建築を快諾したといわれているそうです。

こちらは大教室。天井が屋根型になっています。歩いていると、教室の床板がギシギシ音をたてました。木造ならではの木の匂いもします。

今日は天気が良いので自然光がたっぷり入っていますが、説明によると、当時、教室に照明はなかったそうです。となると、曇りの日や雨の日は、そうとう暗いなかで勉強していたのだろうなあと想像してしまいます。

こちらは玄関のひとつ。窓枠のデザイン、ドアのデザイン、どれをひとつとっても素敵だなあと思います。年数の経った木材の雰囲気も味わいがあります。

中央にあるホールへ。

明日館を象徴する幾何学模様の美しい大きな窓。

女学校当時、毎朝の礼拝がここでおこなわれていたそうです。

朝の光注ぐ静粛さのなか、静かに祈りをささげていたのでしょうね。

座ると小さな窓からは芝生を眺めることができました。

見上げると吹き抜けの高い天井。教会のような雰囲気です。

壁面には、自由学園創立10周年を記念して生徒が描いたという壁画がありました。旧約聖書「出エジプト記」の一節を描いているそうです。

戦争時には漆喰で覆い隠されていたようですが、修理工事の際に見つかり修復されたとのこと。もしかしたら当時の生徒たちの思いや祈りがこの壁画を守っていたのかもしれませんね。

そしてこちらも同じく創立10周年記念に生徒が制作した作品。「思想しつつ、生活しつつ、祈りつつ」という自由学園のモットーを体現したものだそうです。たくさん光が入って、ちょっと神秘的な写真になりました。

ホールには使い込まれた暖炉もありました。「火のあつまるところに人は集まり、団らんの場を共有するのだ」というライトの考えによるものだそうです。

では、喫茶付見学なので、そろそろお茶をしに行こうと思います。短い階段をあがった先にあるのが、

食堂です。落ち着いた雰囲気のぬくもりある空間。当時は全校生徒がここに集まり、自分たちでつくった温かい食事を食べていたそうです。そして今はこちらでお茶をいただけるそうです。

カウンターでチケットを出して、本日のお茶セットをいただきます(コーヒーか紅茶を選べます)。こちらは生徒数増加にともない、当時バルコニーだった部分を使って増築された小食堂です(小食堂は遠藤新設計、中央の食堂はライト設計)。今日はこちらの席でお茶をいただこうと思います。

紅茶とチョコパウンドケーキ

ピアノ音楽流れるなか、歴史ある建造物でゆったりとお茶をできるのはしあわせですね。ちなみにこの明日館は、建物は使ってこそ維持保存ができる、という考えのもと、動態保存のモデルとして運営されているそうです。なので、今日も教室のひとつでは何かの講座が行われていました。

では、ゆっくりお茶もできたので、もう一度食堂をぐるりと見学。天井には、少女たちが食事をするときの天井の高さを考慮し、当初の予定を変更してライトが一晩で設計したという特徴的な大きな照明が吊り下がっていました。

食堂からまた短い階段をあがり、次にミニ・ライト・ミュージアムを見学します。

自由学園の教育やライトの設計についての話、またライトと羽仁夫妻の交流にまつわるエピソードなどが紹介されていました。

では下に降りて、ほかの部屋を再び見学していこうと思います。

こういうディテールも建物と調和したデザインで凝っていますね。

こちらは記念室。

大正10年の4月、26人の生徒を集めてここで最初の入学式が行われたそうです。工事を着工してまだ一か月ちょっとの頃で、まだ黒板もなく荒壁のままだったそうです。

創立当時に生徒たちが使っていた机と椅子もありました。この机にふたりが座っていたとのことで、今の机と比べるとかなり小さく、ましてふたりで使うとなると互いに距離感に気を配る必要がありそうだなあと思います。

では建物を一周したので、そろそろ外に出ようと思います。こちらは廊下にあったダウンライト。なんだか洒落ています。

こちらはまた別の場所の照明。自然光を上手に使っていて、こちらも素敵ですね。

建物を出て、外観をしばし眺めます。屋根を低く抑えて、建物が地面に水平に伸び広がるように建てられています。この様式はプレーリースタイル(草原様式)と呼ばれる、ライトに代表される建築様式だそうです。

きれいな緑色の屋根や窓枠。ですが、保存の決定時には建物はだいぶ朽ちて果てていて、木部の塗装は茶色だったそうです。その後見つかった転用材や生徒の絵から当時の木部は緑色だったと判明し、今のこの緑色に塗装されたそうです。たくさんの人の努力や思いがバトンのように受け継がれて、今、この歴史ある建物を自分は見学できているのだなあとしみじみ思います。

ちなみに芝生に広がる木漏れ日模様の主は、桜の木。春の満開のころに来たら綺麗でしょうねえ。そして最後に講堂をみていこうと思います。(日記、だいぶ長くなっちゃいましたが、まだもうすこし続きます)

道を挟んで向かいにあるのが、明日館講堂。

生徒の増加により中央ホールでは手狭になったため、当時、テニスコートだった場所を敷地にあて建てられたそうです。ライトはすでに帰国していたので、設計は遠藤新に託されたそうです。

木調の落ち着いた雰囲気のある講堂。明日館ではウェディングもできるとのことで、ここで挙式を挙げることもできるそうです。

屋根裏みたいな二階。天井が低くてここはここで落ち着く雰囲気です。

美しい幾何学模様の窓。本館と続いているような印象で、ライトの意匠を汲んだデザインになっているように思います。

講堂を出ると、ここにもふくろうが。ちょっと話題は逸れますが、池袋でふくろうを探したら一体いくつ見つかるのでしょう。そのくらい、池袋にはふくろうが沢山いますよね。

それではこれですべての見学を終えたので、この場所をあとにしようと思います。

今日はずっと気になっていた自由学園明日館を実際にこの目でみて、肌で感じることができて、とてもよかったなと思います。たくさんの人に愛されている建物は、美しいだけではなく、ほっと落ち着ける温もりのようなものも感じられました。

それでは来た道を戻って、駅の方へ向かおうと思います。
今日のお散歩日記、長くなりましたがここで終わろうと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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お読みいただきありがとうございます。