日本のアート市場が揺らいだ、歴史的瞬間
12月5日〜16日、12日間に及ぶ現代アーティストの小松美羽さんの個展「大和力を、世界へ。」が日本橋三越本店にて開催された。
シンガポール、香港、台湾、中国、タイ、フランスやアメリカから、多くのアートコレクターが日本に訪れた。日本の美術館の理事長や館長が来店したのみならず、北京の現代アートで有名な美術館の副館長やニューヨークタイムスの記者までも来日した。
個展が始まり、僅か2日でほぼ完売した。来場者数は約3万人。
そして、展覧会の売り上げは3億を大幅に超え、上客からは外商に買えなかったとクレームが出たほどだ。これはバブル期の日本画・平山郁夫展に次ぐ、日本橋三越の記録となった。
今まで、百貨店では現代アートが取り扱われていることがあまり知られていなかったが、小松美羽さんの展覧会は百貨店らしからぬ異様な空気を感じた。
そこで今回は、小松美羽さんの総合アートプロデューサーを務める高橋紀成さんに日本のアート市場の変化に関するお話を伺った。
[高橋さん お写真]
日本橋三越で、大々的な個展を行うにあたって、高橋さんのリアルな心境について聞くことができた。
池田
「なぜ今回、これほど大規模な個展を百貨店で行うことになったのでしょうか?」
高橋さん「理由は、百貨店でも現代アートは売れるということを証明するため。」
現代アートは、百貨店であまり取り扱われていないようだ。
高橋さん「今までの日本国内では、良くも悪くも絵画の販売の役割を大きく担ってきたのは百貨店だ。にも関わらず、百貨店は現代アートの販売に躊躇している。
だが、今回の展覧会で現代アートが百貨店の利用層にも受け入れられる事を証明できた。
これがきっかけとなり、全国の百貨店が現代アートを扱うようになり、全国の富裕層が日本で生まれたアーティストの作品を所蔵し、才能あるアーティストが国内でも活躍できる場が増えたらと思っている。」
その後話は盛り上がり、今回の個展を通じて、百貨店に思うこともお聞きした。
池田「百貨店が現代アート販売に本気で取り組めば、日本のアート市場が変わりそうですか?」
高橋さん「日本橋三越では、全盛期は絵画販売だけで年間200億円以上も売っていた。バブル期は異常だとしても、実は昨年度でも日本画、洋画を約50億も売っているのです。
国内のギャラリーで年間50億売るところを聞いたことがない。
扱い高だけで語ってはいけませんが、百貨店が国内最大手になるということであるならば、現代アートに対して、全国の百貨店が力を本気で入れたら、日本のマーケットが変わるのではないかと思っている。
欧米だけではなく、日本でもアートの市場は間違いなくあるんです。そのためにも美術に対する税制改革を進めるのは急務だと思います。」
https://comemo.nikkei.com/n/n56f433fa1da9
池田「そうなのですね。私も日本には、絶対に可能性があると思います。」
高橋さん「事実、担当役員が
『洋画、日本画ではなく、我々が苦手としていた現代アートにおいて今回の挑戦が大成功をおさめることが出来ました!
また日本橋本店には素晴らしいお客様がいることを再認識出来ました。
今後も本格的に現代アートに乗りだします。』
と三越伊勢丹グループ全体の経営会議において発表したと聞く。
三越本店で、現代アートで圧倒的実績を出した。この結果を肯定的に捉え、全国の百貨店が現代アートに乗り出すきっかけとなって欲しいと思っています。
日本に現代アートマーケットが活性化する日も遠くないと確信しています。
そしてその先にアートの税制改革があると、一つの要素になると確信しています。
日本でアートのエコシステムを築くことは、並大抵のことではない。だが、それでも諦めてはいけない。
いつか必ず、日本人が自国の文化に誇りを持ち、日本人に生まれたことに誇りを持てる時代をつくれると信じています。
士魂商才、サムライの魂を持った商人でありたいと思っているので!」
高橋さんの、日本のアート市場を変えていくことへの強い信念と情熱を感じた。
今後、日本のアート市場もますます活性化するであろう。
〈最後に〉
私は、日本のアート市場が変わる事に希望を見出せずにいた。日本のアート市場を根本的に改善する事は、税制という大きな壁が存在すると気づいたからだ。
だが、高橋さんはそれでも屈せずに闘い続け、日本のアート市場を変える大きなきっかけを築いていた。
高橋さんとお話をしていて、自分が情けなく感じた。闘いもせずに、諦めていたと気づいたからだ。
私はまだまだ駆け出しの現代アーティストではあるが、当事者として日本のアート市場と向き合っていきたいと思う。
[日本橋三越 小松美羽さんのライブペイント会場の様子]
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