物語の育み方 #シロクマ文芸部
書く時間という「香」に火をつけると煙が立ちのぼりなんとも柔らかい香りが立ち始めました。
机に座り頬杖をついて
あれこれと妄想を膨らませながら
片っ端から思いつきをノートに書き始めます。
書いて書いて書いていると
言葉たちがノートから浮き上がり
空中を漂い始める時が来ます。
言葉が漂い始めたら
私はノートに書くのをやめて
漂う言葉をよく観察して
その中からきらりとひかるものを見つけては
そっと丸い広口瓶の中に入れてゆきます。
誰にも秘密ですが、実はこれが物語の素なのです。
しばらくすると
すぅーっと煙が消えて香りが消えました。
燃え尽きたお香は灰になっています。
漂っていたけれど、瓶に納まらなかった言葉たちも消えてゆきました。
そして、本日の書く時間はこれでおしまい。
私は本棚の裏にある隠し部屋に行くと
棚に出来立ての物語の素、
先ほどの丸い広口瓶を置きました。
棚には沢山瓶が並んでいます
瓶の中身は何やら色のついた液体になっているもの
砂のようになっているもの
一見空っぽのような透明なもの...
色々あります
ふと、1週間ほど前に置いた瓶の中身が気になって観察して見ることにしました。
パステルカラーの星の砂のようなものが底に溜まっていますが、まだ、言葉の断片が残っています。
そっと数回振ってみると、シャラン♪と音をたて少し崩れましたが、まだ、もう少し時間がかかりそうです。
もう少し寝かせておきましょう。
ひとりつぶやくと
隠し部屋の扉を閉めて部屋を後にしました
シャラン シャララン♪
誰もいなくなった部屋から
瓶の中で物語が育まれてゆく音がします
<おしまい>
#シロクマ文芸部 参加作品です。
今週も素敵なお題ありがとうございます。
今週は本当に締切時間ギリギリでした(⌒-⌒; )
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