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アナクシマンドロスの無限

アナクシマンドロスの無限は多義語である。

無限者は土・水・空気・火を産み出すが、いかなる物質的性格によっても規定されていないという意味で無規定的であり、限定されていないということは、ある意味では無限である。これは無規定的すなわち質的無限である。

「世界は無数」であり、この無数もの世界の物を生むために生成者も無限であるが、この無限は無限の数の物を生むので無限の数の物をその内部に孕む。数的無限あるいは量的無限である。

また世界は無限という場合であるが、その無限なる世界をも生んでいるので、無限者は空間的無限でもある。

そして無限者は「不死不壊」であるので無限的時間を存在しており、時間的無限である。

要するに、アナクシマンドロスの無限者は、無限なる時間を〔時間的無限〕、無限の大きさで存在し〔空間的無限〕、それ自身は質的無限でいかなる質的規定をも受けないのであらゆる質的存在を自らの内部に含み〔質的無限〕、無数もの世界の事物を無限に生み続けるので無限的量である〔量的無限〕。

無限者は無限なる大きさの存在でありながら、なぜ無数もの世界や無数もの物とともに存在できるのか、という問いがあるかもしれない。その答えとしては、無限者はいかなる質的規定も受けないので、大でも小でもなく、物質的でも非物質的でもないのであり、ゆえに無数もの物質的世界と共存できるのである。つまり、無限者は具体的なる質的規定を欠くので、「AでもBでもなく、CでもDでもない」というふうに否定を通してその姿がようやく垣間見えるだけなのであり、合理的思惟を超える、と言っても差し支えないかもしれない。

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