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亡くしてしまった悲しみを、今日ゆるキャラでこえにいく

金曜の朝、娘を園に送り届ける支度をしていたら、メッセンジャーに松井至監督からメッセージが届きました。ロケ地からの進捗かと思って開くと、内容は共通の知人が亡くなったというお知らせでした。

松井監督とは、映像制作ユニット「つぎの民話」として一緒に作品を作らせてもらっているのですが、昨年の夏から群馬県前橋市の障がい福祉サービス事業所・麦わら屋を撮った、「うたうかなた」というドキュメンタリーを制作していました(今年2月に完成)。

その映画でも大活躍してくれた麦わら屋のメンバーで、アート作家の方の1人が今朝方に亡くなったとお知らせでした。

福祉サービス事業所の人を撮るにあたって、各々が特別な難病や疾患を抱えていることはもちろん知ってはいたものの、夏にも元気な姿でご本人と会っていたこともあって、突然の別れに言葉を失ってしまいました。

娘を園に送り届け、監督に電話をし、それからしばらく、映画での元気な活動シーンや、事業所の中でアート作品制作をする際に見せていた真剣な眼差しを思い出していました。

映画パンフレットをデザインをするときに何度も彼の顔を見ていたので、なんだか特別にその光景が思い出されます。

今日やらなくてはいけない書類制作があったのですが、手を付ける気力がまったく湧かないでいたところ、ふとSNSのXの方に来ていた返信通知に気がつきました。

「今日やっているイベントにウサヒの着ぐるみで来れませんか?」

という書き込みでした。この日、山形県寒河江市にある障がい福祉サービス事業所で行われていたお祭イベントへの当日参加オファーです。

よく、うちのゆるキャラ・桃色ウサヒのイベントに顔を出してくれる方がこの施設の入所者さんで、オファーは彼のお母さんからの投稿であることもわかりました。

弊社で運営を委託されている桃色ウサヒのは朝日町の非公式PRキャラクターです。べつに予算が出てないから非公式なわけではなく(むしろ充実の待遇です)、出動が必要と判断した場合、町の許可ハンコ無しでも出動していいように、あえて非公式という設定にしてもらっています。

今日はこの仕事をやるための日なんだなと、思いました。

祭イベントの主催者や、スタッフさんからのオファーではないため、たぶん会場に行ったら、所長さんとかにいろいろ説明しなくてはいけません(そもその事業所がある町のキャラじゃないし)。

でも今日は、そんな事をやりたくなる日でした。

元気な笑顔が見れる今、この一瞬を本当に大切にしないといけないのだという気持ちが、いつもよりもずっとリアルに感じる日でした。

「これから向かいます。」と返信を送ってすぐに出発しました。

映画制作を通してたくさんの感動をくれた知人の死と、この仕事のオファーは全くの無関係です。
でも、この悲しみの向こう側から差し伸べられた手のように僕には思えてならなくて、救いを求めるように車を走らせました。

カーオーディオからは、書籍の読み上げをしてくれるSiriの声が流れていて、「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だったんだ」を読み上げてくれていました。障がいをもった家族と共に生きるこの本の著者・岸田奈美さんの軽快で笑える文章を聞きながら、本のお話と今の心が不思議なくらいリンクしてちょっとだけ涙がでました。

現場に着き。案の定まったく事情を知らない所長さんに事情を説明しました。

返信をくれたお母さんがドジっ子なのか、イベントの終了時間を3時間も間違えていて、余裕を持って着いたつもりが、あと1時間で終了だということもわかりました(僕からの返信も見ていなかったそうで、一番驚いてくれました)。

事業所のスタッフさん、ウサヒが好きな入所者さん(オファーくれた方の息子さん)のことはよく知っているので、すぐに事情を察して着替え場所を用意してくれて、到着から説明時間込みで15分後には会場に桃色ウサヒが立っていました。

ウサヒファンの入所者さんと一緒に

お祭イベントだったので、いろんな入所者さんや出店の人たちと記念撮影ををして、30分ほどすごして出番は終了となりました。

帰りがけオファーをくれたお母さんから、いろんなお土産をもらいましたが、息子さんが施設で作った膝掛けをもらったのが、この日の自分にとっては一番価値を感じました。

自分で誘っておきながら「今日まさか来てくれるとは思わなかった〜」と言うお母さんに、もしかしたら、今日こうやって来た事情を聞いてもらえるかもってちょっと思ったのですが、それは事情が違うよなと考え直し、いつもウサヒにたくさん課金してくれることへのお礼だけいって帰路につきました。

帰り道でやっと気がついたのは、知人の死が今日を頑張れない理由にならなくてよかったという、僕の本音でした。

舞い込んできたちょっと無茶目のオファーがあり、それに頑張ることへの理由が出来たこと、それが障がい福祉事業所だったこと、この偶然に向かって救われた気持ちになりに行ったんだと。

結局は自分のためな訳だけど、でも、群馬で出会ったあなたのおかげで、今日の仕事はしっかりと誰かを笑顔にできました、と胸を張って感謝の報告はできそうです。

心からのご冥福を祈って。

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