マカロニえんぴつ隠れた(?)名曲「OKKAKE」が素晴らしい
最後の晩餐ならぬ、「最期の奏楽」の1曲に選びたいのは、マカロニえんぴつの「OKKAKE」という曲です。
隠れた名曲として、ぜひみなさんにも紹介したいと思います。
メロディがいいのはもちろんだが、歌詞が最高にいい。なんてったって、歌い出しから
「大事なお知らせにまた 大事にされなかった」「信じてたのにあなたの事 あなたたちの音楽」「腹立つなぁ」
ですよ? アイドルヲタなら一度は必ず言ったことがあるセリフ。はっとりさんは、バンドマンなのになぜわかるのでしょう。
経験者でなければ書けない歌詞です。
公表してませんが、ハロプロだのAKBだのにハマってた時期でもあるのでしょうか。
はっとりドルヲタ説が、私の中で濃厚になってます。
こうしたちょっと皮肉が効いた笑えるフレーズがいくつも散りばめられていて、いちいちツボにはまるのです。
この曲は、ファンクラブ名の「OKKAKE」とつくだけあり(この曲からファンクラブ名を取ったのかもしれませんが)、ファン(OKKAKE)とバンドの関係をブラックユーモアあふれる"あるあるネタ"満載で仕上げております。
不思議なことに、この曲を聴いていると、胸がときめく。そのときめき方は、なんとも言えず、高揚感すらあるのです。
例えるなら、こんな感じ。
期待してなかった飲み会に行ったら
「あ、この人わりとタイプかも?」とか思う男の子を見つけて、飲み会が終わるまでチラチラ見続け、
「え、結構カッコよくない? 待って待って、彼女いないのおかしくない? もしかして、私すごい掘り出し物見つけちゃった的な?!」
とか気の抜けたビールちびちび飲みながら鑑賞を堪能。
一人盛り上がり、話しかけるタイミングを逃して、しゃべる機会を持てないまま会が終わってしまうやつ。
あーあ、とガッカリしてトイレから出たら、なんとばったり鉢合わせてそのメンズからこんなことを言われます。
「さっき、あんまり話せなかったし、2人で2軒目行かない?」
戸惑いながらも、ガッツいてると思われないように、私は極めて控えめにこう返します。
「えっ……あ、はい(2軒目オーダー入りましたァァァァ!)」
みたいな流れで夜の街へと消えてゆく際の胸キュン感にすごく近い。(注:フィクションです)
まず、前提を整理しますが、私をはじめ、アイドルなどその対象に「リア恋(リアルに恋愛対象と捉える)」してない大多数のファン心理のインサイトは、
「コンサートは最前列で見たいけど、プライベートの時間では本人に近寄りたいと思ってない」
だと思うのです。
だから、「ステージに立つ人」と「それを見る人」を繋ぐものは、作品およびコンサート会場が主戦場となります。
アイドルがよく「会えて嬉しいよ!」とか言うのはリップサービスでもなんでもなく、心から思って言ってる言葉なのです。
ファンがコンサートに行く前に美容院へ行くのも、他人が聞いたら「メンバーから見えるわけないのに、無駄なことしてるな」と思うのですが、コンサートに参戦する側からすると「見えてるとか見えてないとかじゃなく、好きな人に"会いに行く"ための身だしなみ」として、おめかししているわけです。
ですが、一方で過激な行為でメンバーを困らせるファン(ジャニーズ界隈では"やらかし"と呼びます)や金品の授受を行うリア恋勢もいるとかいないとかまことしやかに囁かれてますので、はっとり氏は、それを見抜いてか牽制するように、
「ずっと二人の距離は埋まんないよって笑っておしえて」
と言ってのけます。でもそこへかぶせるように、
「待っていてあげる一生ね、ごめん凄い好き」
と続きます。
もう一度言いますね。
なぜ、わかるんだ!!!!
この歌詞を見たとき、はっとりは人の心が透視できるSPECの持ち主なのだと確信しました。
ここで気になるのは、「待っていてあげる一生ね」というフレーズです。嵐やBTSのファンのために作られた曲かもしれないと、ここまで書いてて新説が浮上しました。予見してたんですね、活動休止を。
やはり、はっとり氏は透視のSPECホルダーだったと断定してよさそうです。
「ごめん凄い好き」のフレーズが特に私は好きなのですが、これもオタクの気持ちを大変端的に表しています。
たった7文字にオタクの人格を凝縮させ、非ヲタの人々へ知らしめています。
よく考えてください。好きであることは、一般的にはいいことなのです。それなのに「ごめん」と頭についてますよね?
「凄い好き」だけでも充分にその好き度は伝えられているうえに、ファン心理を表す上では合格点と言えます。
以下のように、好きにもグラデーションがあります。
【好きのグラデーション】
好き<わりと好き<けっこう好き<
かなり好き<大好き<<<凄い好き<<<<<<<<<<<ごめん、凄い好き⇔尊い
「ごめん凄い好き」とは、凄い好きを遥かに突き抜けてしまった想いを、自分でも抱えきれなくなっている状態なのです。
その溢れまくってる好きを、アーティストやアイドルに対してぶつけるしか方法がなく、楽しみながら苦しんでいる。
だから、「ごめん」と謎に謝っているわけです。
「もう、降参ですわ」というこんな心情、わかります? 無条件降伏です。
だから、2番以降の歌詞では、非ファンから「なんか昔流行ったよな」と言われて「黙ってダッセェ歌ばっか聴いてろよな」なんて唾を吐きかけ暴言でののしる行為にでるわけです。
つまり、無条件降伏したのちの日本のようなものです。アメリカ様の傘下に入り、他国からなんらか揶揄されてもキレ返し、今もって米国への崇拝を続けるマインドに近いです。
「酔っていてその才能にクサイ台詞に」へとつながり、「まだ鳴り続けるあたしの青春が」というのも、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」ともてはやされた過去の栄光を引きずる日本の経営者の気持ちすら表しています。
「全世代対象バンド」と言って活動されてるマカロニえんぴつですが、まさかヲタから経営者までその心理を表現できるバンドだったとは……おそるべし、はっとりのSPEC。
「グッときた瞬間から 正義なんです 永久に」
「まだ流行らない名曲を叫んでいる」
という歌詞で結ばれる「OKKAKE」。
ここも、私の気持ちそのもので、最後だけは、もう流行ってる名曲に変わってしまったけれど、マカロニえんぴつが活動し続ける限り、私の正義はマカロニえんぴつが歌う音楽だ。
そして、彼らを好きだと言うこの想い、そしてそのおかげで人生が遥かに楽しく、豊かになったことが、正義なのである。