
さようなら、渡辺さん。
名字が変わってしまった、らしい。
まだ実感なんてものはなくて、未だによく分からないのだけれど、わたしは渡辺ではなくなったらしいのだ。
あんな紙切れ1枚を出しただけで。
子供の頃から、あまり名字が好きではなかった。だって、たくさんいるのだ。全国で五番目に多い名字。渡辺さん。
学年に何人も渡辺さんがいて。「なべちゃん」なんて鉄板のあだ名をつけられる。毎回出席番号は最後で、自己紹介も健康診断も卒業式も、最後までドキドキしないといけなくて。いつも真ん中くらいの「た行」になれたらなぁ、なんて思ってた。
クラスに何人も渡辺さんがいた時期もあって、先生に呼ばれるときは常にフルネーム。わたしの主たるアイデンティティは名前だけだった。「わたなべって呼ばないで!!」なんて反抗してたなぁ。
だから、珍しい名字に憧れた。
西園寺、とか小鳥遊さん、とか。かっこいい!!!
結婚するなら、絶対珍しい名字の人!って憧れて。好きな人の名字と、自分の名前をくっつけて妄想してた。中学生あるあるだよね。笑
でも、旧姓になってしまった今は。
「渡辺」にとても感謝している。
学年の始め、絶対名前順になる机。
自己紹介は毎回最後だったけれど。今でも仲がいい友達は、出席番号が近くて、初めて話した人たち。や行の友達が圧倒的に深い。
これが例えば、わたしが「田中さん」とかだったらこんなに仲良くなってるか分からないよなぁ、て思う。
そんな「や行」の友達が、「渡辺じゃなくなって寂しいね。渡辺じゃなかったら、こんなに仲良くなってないかもね」ってわたし以上に寂しがってくれて。
嬉しかった。
嫌だなぁって思ってたことも、それによって得られてたことって必ずあるんじゃないかな。て無くなった時にいつも思う。
どんなことにも、いい面と悪い面がある。マイナス思考のわたしは悪い面に囚われがちだけど、いい面も、ちゃんと忘れずにいたい。
渡辺さん、たくさんの友達をありがとう。
#まいにち日記 #まいにち日記部 #ドットコロニー #エッセイ #結婚 #20代女子 #人生の節目 #名前
いいなと思ったら応援しよう!
