パートナーが「Queer」についての授業を受けている
まず、「Queer」という言葉にあまり馴染みのない方も多いと思う。私もそのうちの一人だった。
さて、タイトルでも申し上げた通り、私のパートナーが大学の授業で一コマ新しく取り始めたのがこちら。授業は依然、オンラインで行われているので課題資料や課題映像などを事前に観て、それについて授業が進められたり、話し合いの場が持たれたりするようだ。
Queerとは
彼曰く、最初の授業で教授が説いたのが「Queer」の意味だったそう。日本語ではこちらのサイトが詳しく分かりやすいと思う。
教授は、何もセクシャルマイノリティだけの事を指すのではないとも言ったそうだ。社会においての「マイノリティ」が「クィア」なのだそう。
クィアと言えば、近年、こちらのNetflixのショーが世界中で人気だと思う。私は観た事がないのだが、出演しているTan Franceは大好き。
パートナーと学ぶQueerについて
授業で課題として与えられる、いくつかの映像を一緒に観た。彼は「今日はこういう話を観るんだけれど、一緒に観たい?」と聞いてくれた。歴史ドラマやドキュメンタリーが苦手な私だが、この時ばかりは「折角だし…」と、そっと隣に座って鑑賞する。
こうした映像を一緒に観ている時、私はふと「異性のパートナーとQueerについての映像を観るのって、なんか興味深いわ」と思った。まあ、と言っても、我々は異性のカップルとして存在しているが、セクシャリティとは揺らぎがあるもの、だと私は信じている。
以下の映画で主演を務めるアメリカ、ブルックリンで生まれ育った俳優のルーカス・ヘッジズは6年生の時に、性教育で「セクシュアリティーとは白黒、2パターンに分けられるようなものではなく、ある範囲の中で揺れ動くようなものだ」と教えられたと話している。(筆者意訳)
私はこの感覚がとても好きだ。そして、この映画もとても良いので是非。
カナダの光と闇
カナダは同性婚を認めている国。事実婚の同性カップルも同じように法的効力を持つという。更に、カナダ在住の武村さんのこのnoteを読んでもらって分かるように、採用時におけるこれらの差別的質問を禁止している。
オンタリオ州では、これらに加えてジェンダーアイデンティティや性的指向等を聞くことが禁止されている。
こうして我々の権利が守られている事は、当地で生きていて素晴らしいと思ううちの一つだが、カナダは負の歴史もある。この歴史故に、今の生きやすさがあると言えるだろう。
日本語だとこちらのサイトが分かりやすい。
(この話題に全く無関係である”首相がイケメン”というキャッチが不必要、と思えて仕方ないが)
もともと古来のキリスト教的価値観が強かったカナダの刑法では、同性愛は犯罪とされていた。さらに、東西冷戦の深まった1950年代には、政府がLGBTQ2の公務員や軍の将兵を「国家の安全保障に対する脅威」とみなすようになった。 ーー上記サイトより抜粋
フルーツマシーンの時代
こちらはカナダのニュースサイトCBCから抜粋。
(筆者意訳)多くのカナダ人と同じように、映画監督のサラ・フォディは当時「フルーツマシーン」について知らなかった。
彼女は、オタワにカナダ初のゲイ&レズビアン老人ホームを開設しようとして失敗したことを題材にしたドキュメンタリーの構想について話し合っているうちに、フルーツマシーンの存在を知った。「フルーツマシーンの時代に育った人達は、自身の性的指向を隠し続けて来た。それ故、そうした施設に住む事にためらいがあるのだろう」と、聞いたのだった。
「フルーツマシーンの時代」とは、果たして一体どんなものだったのか?
Well, as Fodey would find out that day, the fruit machine was created as an ostensibly scientific way to detect homosexuals, so they could be fired from their government jobs or pre-screened before being offered employment in the first place. This was during the Cold War, and the prevailing fear was that homosexuals would be at a greater risk of blackmail by Russian spies. They needed to be identified and removed, the thinking went, so they wouldn't reveal the nation's secrets. ーー上記cbcニュースサイトより抜粋
フルーツ・マシンは、表向きは科学的に同性愛者を検出するために作られたもので、政府で働く人解雇したり、そもそも雇用前に事前審査をしたりするためのものだった。当時は冷戦時代で、同性愛者はロシアのスパイに脅迫される危険性が高いと考えられていました。国家の秘密を漏らさないためには、同性愛者を特定して排除する必要があると考えられていたのです。(筆者意訳)
ドキュメンタリー映画「The Fruit Machine」について
いくつか観た作品の中で、特に心に残っているのがこちら。
注意;この映画と私のこの後の解説に、LGBTQ+の人々に対する残忍な魔女狩りや、性的暴行などの描写があります。
上記のサイトで、無料で映画が見られるようになっている。
「The Fruit Machine」 Sarah Fodeyによるドキュメンタリー。
ここから、このドキュメンタリー映画の内容をかいつまんで記入していこうと思う。多くの人に知ってもらいたい、内容だから。今も、こうして辛い思いをして生きていたり、この生きづらさや苦しみ、偏見と共に生きている人も多いから。社会から疎外している人に目を向けて欲しいから。
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とある男性は言った。
当時バレないように、座り方を気にしなければならなかった。足を組むのはゲイっぽいかもしれないので(片足のヒザの辺りに、もう片方の足首をのせる座り方)こんな風に座るようにしていた。バインダーを両手で胸の辺りに抱えるのも良くないと考えられていたので、片手で身体の側面でぶら下げるようにして持つようにしていた。
同じくゲイの友達を言え、と言われた。特に政府で働いている人の名前を言うように強要された。
バーなどには広げた新聞に穴を開けて観察しながら、そこにいる人達全員を写真に撮って記録する人もいた。後でファイルを作るためだ。
机がやっと入るような小さな、裸電球が一つぶら下がった窓無しの部屋で「詰問」は行われた。その様子を記録した映像や写真も残っている。全裸、または半裸の同性の写真を見せられた時の、瞳孔の動きや汗のかき具合を見て、LGBTQ+かどうかを判断するというものだった。
この映画では、主に軍隊で従事した退役軍人のインタビューが多い。また、それは国を守ろうとしていたのに国に裏切られた、というメタファーのようなものでもある、と思うが、私は戦争反対の意思があるので、兵器について、またそのトレーニング等を嬉しそうに語る彼らに違和感を覚えた事も記しておきたい。その部分は心が痛かった。
基地の中で働く女性からのインタビューも多い。彼女たちの中には、勤務中に急に誘拐のように連れ去られ(中には目隠しされた人もいた)「調査」された人もいる。小屋の中の部屋には何も置いてないテーブルと椅子に座った二人の男性。
「あなたはレズビアンですか」「はい、そうです」と認めたら終わる調査ではなかった。それは、「誰と、何を、何処で、いつ、どのように」を全て打ち明ける必要があった。それは数時間にも及んだ。同じ質問をずっと聞かれ続けるのだ。とある人は毎週、そして三日間続いたと言った人もいた。
一人の女性はそれらの質問を拒否続けた。その後に「もし何も言わないのなら、妹を追い詰めるしかないな」と言われた。当時、彼女の妹も同じく基地でトレーニングをしていたという。彼女は「分かりました。全て言います。でも妹には関わらないで」と話した。
彼らの中には当時10代や、20代の若い世代も多かった。
セクシャルオリエンテーションについて、ただただ繰り返し聞かれたり、性的な質問(鏡を見ながらマスターベーションするか?ディルドは使ったことがあるか?など)など、当時それが何なのか知らなかった問いに戸惑った。
若い世代はまだ自分の内面等に、揺らいでいることも少なくないだろう。
一人は一カ月スパイされた後、ショックと震えが止まらずその後、精神科病棟に入れられたという。他にも「リハビリテーション」を勧められた人らがいた。一人の女性は電気ショック療法を受けたという。
その後、多くの人が「not advantageously employable due to homosexuality」ホモセクシュアリティの為、雇用に相応しくない、という理由で除隊を言い渡された。更に、そのような基地内での調査が「一般化」とされたいた為もあったのだろう、同僚からレイプされた女性もいた。彼女は言った。「未だに、誰がやったのか知らない、目隠しされていたから。」被害にあったのは、一人ではない。
このパートは特に、涙なしでは観れなかった。
2017年の首相の謝罪と、当事者の一人の演説で映画は終わる。
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エンドロールでは、当時の資料を見ながら当事者の女性が笑う。
「私はロマンティックな話より、冒険の話が好きだ」
「自動車事故に巻き込まれる事はとても恐怖だ」
「私はいつも、学校でいい成績を収めたいと努力していた」
これらは、当時のLGBTQ+をはかる指針である。「おかしいよね、よく分かんないよね。不思議。これ考えた人、もしかしたらゲイだったのかもね、自分自身がゲイってバレたくなかったのかも」と笑っていた。
"I want people to leave this documentary angry that this injustice happened, and committed to talking about it in their own communities, says Sarah Fodey. “I also want people to cry and laugh in parts of this film. Many of the survivors have used humour as a way to cope, I suspect. They are magnetic. You want to hear more from them because they make you laugh on the heels of making you cry. It's a beautiful combination.” ーーTVOサイトより抜粋
監督のサラは「このドキュメンタリーを見た人には、このような不正義が起こったことに怒りを感じ、自分のコミュニティでこの問題について話し合うことを約束してほしい」と語っている。「また、この映画で泣いて笑ってもらいたい。サバイバーたちの多くは、ユーモアを使ってそれらと生きているのではないかと思う。彼らは我々を惹きつけます。彼らの話をもっと聞きたいと思うのは、泣いた後に笑わせてくれるからです。素晴らしい組み合わせです」(筆者意訳)
映画の最後に、退役した女性がプライドパレードを見つめる姿が映る。毎年初夏6月にあるLGBTQ+を祝福するその月間。これは市立図書館のデコレーション。
トロントでは、警察や消防士、軍など公務員の人々が誇らしげに制服でパレードする姿を見る事が出来る。
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私が初めて当地で参加した時は、ブラジルからの留学生と一緒に街に出たのだが、彼女は「ブラジルでは、警察官はパレードには参加しないかも。それから首相もあんな風にパレードで歩いたりしない」と言っていた。もしかしたら数年前の出来事なので、もう変わっているかもしれないが。
その時、彼女が私に尋ねた。「日本ではどう?警察の人も参加している?」
私は恥ずかしながら、日本でプライドパレードに参加した事がなく、その是非は知らなかった。どうなんだろうか。
どんなセクシャリティを持っていようとも、国に、社会に認められ、教育を受けたり、働いたり、結婚したり出来る社会になる事を望んでいます。
(最後ではありますが、翻訳は全く勉強した事がないので悪しからず。ご指摘等ありましたら、お知らせください)
日本の東京レインボープライドについて
追記・icarinさんから日本の「東京レインボープライド」はオンラインで開催、と教えて頂きました。4/24土、4/25日の二日間だそう。#おうちでプライド2021
トークライブには沢山の出演者の方がすでに発表されていて、特に気になるのが、SHELLYさん、水原希子さん、ミラクルひかるさん、YOUさん…などなど。
両日13時~18時までの5時間、ゲストとともに「声をあげる。世界を変える。」というテーマのもと、視聴者の皆様とともに自由にトークを行います。 ーー以下オフィシャルサイトより抜粋
私の住んでいる場所では深夜になってしまうので、参加は出来なさそうだが、どうぞ皆さん、ご参加ください♡