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トロントが舞台のピクサー映画「私ときどきレッサーパンダ」をトロントで観た
久しぶりの映画鑑賞日記。
観たのはちょっと前のこと。「ピクサーが、トロントを舞台に映画を作っている」と、発表された時に当地では話題になっていて、楽しみにしていた。
そんな事もすっかり忘れていたある日。
ディズニープラスのトップ画面で「レッサーパンダ」と目が合った。
「あ、これ観たい!」と申し出た私の横で「ちょっと中華感が強いな…」と、難色を示していた台湾出身のパートナー。「でもこれ、トロントが舞台のやつだよ。観よ」と丸め込み、鑑賞。
始まってすぐ、上から降りて来たうちの小学生が「Oh, you guys are watching this. It's good. How did you know about this movie?」と聞いて来た。「あ、これ観てんの?良かったよ。なにでこの映画知ったの?」って聞かれ、固まる我ら。「新作…だから?」と答えたのだが、小学生って、やたらなんか自分が発掘した的なポジションを取りがちである。オレのお墨付き的な。小学生っていつの時代もそんな感じ。そして小学生も隣のソファにどっしりと座った。
2002~2003年のトロントが舞台
という事で、今はもう見ない旧型のストリートカーが走っていたり、主人公がたまごっちを持っていたり、主人公+友達らがボーイズバンドに夢中だったりと既視感があった。そう。私が歩んできた人生そのものだった。
監督はDomee Shi、中国からカナダに移民した両親のもとでトロントで育った32歳。
なるほど、同世代である。
と、いうより年下。ディズニー&ピクサー作品の監督が年下、という世界線で生きているのかぁ、となんだか感慨深い。彼女はインサイドアウトやトイストーリー4などに関わった後、短編「Bao バオ」で監督デビュー、アカデミー賞を受賞している。初めての女性、また、白人以外の受賞であったそうだ。
彼女は色んなインタビューで「coming-of-age story(大人になっていく成長の過程)を描きたかった」と語っている。
真のトロントを描いているか
東京タワーのような立ち位置なCNタワーや、東京ドーム的な存在のスカイドーム現ロジャースセンターなんかが登場。また、オンタリオ湖、チャイナタウン、などトロントに訪れた事がある方にとっては「あら~懐かしいわね~」みたいになる事間違いなし。
私と言えば、もうテレビに釘付け。「うちらの街がテレビ映っちゃってるぅ!」的な感情を持ちました。
故郷の横浜は、割と映像作品の舞台になりやすく、卒業した小、中、高校全てがテレビドラマや映画のロケ地として使われていたりする。なんとなく、誇らしい気持ちになりますよね。
それから小さなポイントとしては、本当に小さすぎるけれど、主人公の住んでいる部屋の窓枠すらリアル。ドアノブも。
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画質があんまり良くないから分かり辛いかもしれないけれど、この、トロントの古い住宅あるあるな窓枠。この窓をこう力強く「ググッ」と開ける感じ。身体が覚えている。
さて、それからもっとガツンと、鑑賞の序盤で(いいね!)と思ったのが、主人公の友達グループである。
ザ☆トロントそのものと言える、主人公の友達の輪
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赤のセーターを着ているのが主人公Meilin "Mei" Lee、中国系カナダ人。そして、写真の左から全身紫の女の子はAbby Park、韓国系カナダ人。オレンジのシャツを着ているのがインド系カナダ人Priya Mangal。緑のシャツのトムボーイイッシュと紹介されているMiriam Mendelsohnは特にバックグラウンドは説明されておらず、ファンサイトによると、苗字からしてAshkenazi Jews(ユダヤ系)ではないか、と推測されている。
また、物語の鍵を握る、クラスのいじめっ子男児Tyler Nguyen-Bakerはアフリカ、ベトナム系カナダ人とのこと。
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この感じ、トロント感がある。チャイナタウンに住んでいるからもっと中華系が多いのでは、という気もしないでもないけれど。
私の職場もこんな感じ。そして、小学生の友達の輪も、こんな感じである。彼の親友は、ケベック出身のフレンチカナディアンの母とジャマイカ出身の父を持つ編み込みヘアの男の子。そして、よくオンラインゲームをしている他の友達は、お家ではスペイン語を喋る男の子。
私の思うトロント感
ちょっと、このトロント感について記しておきたいと思う。ご存じの方も多いと思うが、カナダの公共語は英語とフランス語。トロント市民の多くは英語を共通語として話す。第二言語として、子どもの頃からフランス語を勉強することが多い(日本でいう英語がフランス語のそれ)
少し前に、スーパーでの出来事をTwitterで呟いたらちょっと面白い返信を頂いた事がある。ある日、スーパーで高齢の女性が近付いて来て「ajo? ajo?」と、ガーリックパウダーの容器を差し出しながら尋ねて来たことがあった。なんとなく聞いた事があったので「Yes!Actually wait…let me double check 」などと、身振り手振りを駆使しながら彼女の問いかけに対応。iPhoneでササッとググり、スペイン語でajoはニンニク、という事実を手に入れた。
彼女は英語を全く話さないよう。
この話を呟いた所「カナダのご高齢はフランス語を話すものかと思っていたらスペイン語なんですねぇ」と返信を頂いたのだ。正解は、フランス語でもスペイン語でもない。みんなが皆、それぞれ色んな言葉を話す。それがトロントだと思う。
こんなエピソードは山ほどある。地下鉄駅構内にある端末の前で、英語を一切話さないアジア系の高齢女性に完璧な身振り手振りで「この交通カードに10ドルをチャージしたい」とお願いされた事もある。
同僚が休憩時に電話口で「あはは!いえ、私は彼の弁護士ではありません。彼は私の父で、彼は英語が第一言語ではないので、私が代わりにこうして電話で問い合わせています」みたいに説明していたりもした。
こんな感じで私の周りにはどこかの国や地域出身の一世さんや二世さんが沢山いる。また、母国の政治や紛争、戦争によって国を離れざるを得なかった市民も多い。
今、私が住んでいるのはユダヤ系が多い地域で、宗教施設も近くにあるので正装をしている人々も多く見る。
これが、私の知っているトロント。だからこそ、たまにワーホリでホームステイを予定している方などが「ホームステイ先の家族の国籍が気になる」などと言っているのを聞いてしまうと、国籍…はカナダかもしれないし、他の国かもしれないけど、だから何だ?と思ってしまう。ちなみに、私のパートナー家族も台湾出身ではあるが、カナダ人でもある。私は、日本が多重国籍を認めておらず、日本のパスポートを諦めるつもりはないので、カナダに住んでいる日本人であるが。
トロントに来る前は「金髪の彼を見つけてハーフの子どもを産むんだろうね」とか、語学学校でアジア系の教師に向かって「あなたはカナダ人ではないですよね」とか言ってしまう日本人留学生を見たりもしたけれど、そういう感覚がアップデートされればいいな、と思っている。私がnoteで当地の情報を書いているのは、こうした理由もある。
アジアンペアレンツのステレオタイプ
話を映画の話に戻そう。映画では、親のコントロールや期待を過度に受ける、その期待に応えようとする、またそれに葛藤する子どもの姿が見られたりする。
私は幼少期から学生時代にかけて、両親に「勉強しろ」「ホワイトカラーの仕事に就け」と言われる事なく、割と伸び伸びと過ごした。ドラマや映画などで、アジア系の両親のエリート志向、または親からの期待を背負った子の姿を見て(あまり実感湧かないなぁ)と思ったりしていたくらい。
来加し、仲良くなった同年代のアジア系の殆どはみんな会計士やエンジニアなど、専門職に就いていた。既にコンド(日本でいう高層マンション)の一室を買い、一人暮らししていたりする人も少なくなかった。そう、彼らは Yappie (Young Asian Professional)と呼ばれる人達だったように思う。ちょっと前によく聞かれていた言葉で、最近はあまり聞かないけれど、もっと古いyuppieと掛けているのだと思う。
上のシリーズは、ちょっとこのかわいいピクサー映画とは外れるけれど、ご興味があったら是非。日本語字幕も作られていた。
さて、このピクサー映画にもこのステレオタイプがふんだんに盛り込まれていた。多いか少ないかは、知らないが、これが北米で暮らす中でのアジア系家族のステレオタイプであると私は思う。
思春期、という難しい題材を扱っていることについて
実は、この映画、初潮をテーマにしているという事実もある。そんな事は全く知らずに観始めて、横には11歳の男児と、男性のパートナー。もしかしたらこれ、ちょっと気まずいなぁとか思ってしまう感もあったかもしれませんが、性教育がしっかりしている当地。そんな心配はいりませんでした。何とも「何歳くらいの子どもから見せていいか」とか「生理を面白おかしく扱っていて不快」とか「生理の話だなんて聞いてない」という声もあったりするらしいが。
Mei
完璧にわたくしごとではありますが、私の名前Mayはあだ名です。本名はメグミで、小さい頃からメイとかメーとかめーちゃんとか呼ばれていたので今もEnglish nameとして引き続き使っています。
中国語を母国語として話すパートナー父と初めて会った時「こちらがMay」と彼に紹介され「め、メイ?」とちょっと戸惑われた記憶がある。後からパートナーの解説で「中国語だと妹、って意味なんだよね」と教えて貰った。その後も、台湾出身の友達と彼が中国語で喋っていた時に「それでこないだMayがね」みたいな話を彼がしたら「え、お前、妹いたの?」みたいな返しをされたというエピソードもある。
だからこそ、この映画で主人公Meilin "Mei" LeeがMei-Meiと呼ばれていた事に結構衝撃を受けて「あれ?」となった。調べたら、美しい&梅って意味があるらしいんですよね。へえ。
多分、Mayは引き続き妹だと思うんですけど。なんて誰も得をしなさそうな豆知識。そして、更に誰も得をしない話第二弾としては、この作品が公開されてから「May-May」と呼ばれる事が増えました。
トロントに馴染むとは
そんなこんなで、これから観る予定の方にも、ディズニープラスに加入していないから特に観る予定の無い方にも、トロントに全く興味が無かった方にも、これからトロントに来る予定の方にも、ちょっと何となくそれぞれのイメージが伝わったかな、伝わっていると嬉しいな、と思っています。
さて、ふいに思い出したこのフレーズ「トロントに馴染む」
以前、日本出身の友達が「カナダに馴染めている気がしない」というような事を言っていたんです。私はトロントしか住んだことがないから、カナダ!というのはちょっと分からないのですが、トロントという市内にかけていうのなら、トロントは確実に馴染みやすい都市だと思います。
上の「トロント感」でも挙げた通り、色んな国や地域からやって来た人達が住んでいて、だからこその問題点も沢山あると思うが、現首相も「Diversity is our strength」と表明している。
私はそういう所が、とても誇らしく、この国に住む事を決心してすごく良かったな、と思っている。そんな国のこの街が舞台のこの作品、もっと沢山の人に愛されるといいな、なんて。
おまけ
SOULが公開された時に、このmemeを見て笑ってしまったが
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更新されててウケた。こういうの思い付く人本当すごい。
キャストや監督インタビューなどなど。
母親の声をしている彼女、Sandra Ohの事はあまり知らなかったけれど、この方すごく私の周りにいるchillでかつ賢く、強い女性の集大成?みたいな方だわ。このインタビューはすごく良かった。
ホストのTrevor Noahの「ピクサーはメンタルヘルスから生と死、初潮まで網羅しててすごい、もう子育てに困ったら映画館に行けばいいんじゃないか」みたいなの、私もそう思う。
4:05ら辺の「私、よくこういう質問されるのよ。あなたは女性(のフィルムメーカーら)とよく仕事をしますね、って。それは真実なんだけれど、それは何故かっていうと、まず雇われるからなのよね」という話で始まるエピソードからラストに掛けても好き。
いくつかインタビュー映像観たけれど、上に載せたこの辺りが好きだった。最後のは、トロントの市内スタジオで撮られているので、本物のストリートカーが後ろの窓の外を通るのとか見える。
長くなりましたが、最後まで読んでくださりありがとうございました。