フリーランス保護法、運用詳細固まる~就業環境の整備報告書提出
2024年10月にはじまるフリーランス保護法(正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」)について、骨格となる法律の血肉となる運用詳細が、固まり始めています。
1.どこがポイント?
現在厚生労働省で検討されているのは、フリーランス保護法のうち、第12条から第16条にわたる「特定受託業務従事者の就業環境の整備」に関する部分。
以下の赤枠のところです。
該当の法律は以下の部分です。
このうち、以下の黒字部分について、どんな方法なのか、期間はどのくらいなのか、また、指針について検討が行われていました。
第12条1「文書の掲出又は頒布その他厚生労働省令で定める方法(次項において「広告等」という。)」
第12条1「特定受託事業者の募集に関する情報(業務の内容その他の就業に関する事項として政令で定める事項に係るものに限る。)
第13条1「業務委託(政令で定める期間以上の期間行うもの(当該業務委託に係る契約の更新により当該政令で定める期間以上継続して行うこととなるものを含む。)」
第14条2「特定受託業務従事者の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものに関する言動によりその者の就業環境を害すること。」
第15条「厚生労働大臣は、前三条に定める事項に関し、特定業務委託事業者が適切に対処するために必要な指針を公表するものとする」
第16条1「ただし、災害その他やむを得ない事由により予告することが困難な場合その他の厚生労働省令で定める場合は、この限りでない。」
第16条2「当該特定受託事業者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、遅滞なくこれを開示しなければならない。」
第16条2「ただし、第三者の利益を害するおそれがある場合その他の厚生労働省令で定める場合は、この限りでない。」
具体的な部分は、ほぼ、厚生労働省令・政令となっていることがわかります。
このようになっている理由は、具体的なことまで法律で決めてしまうと、変える場合に国会での審議が必要で時間と手間がかなりかかってしまうためです。
フリーランスの働き方は、これからますます変わっていくと思われます。
そのときに時代の流れにあまり遅れず対応できるようになっているわけです。
ですが、具体的な例示がないままだと、いったい何を守ればいいのかわからなくなってしまいます。
有識者(日本商工会議所部長、大学教授、フリーランスの一般社団法人等9名、男女半々ほど)が、全9回かけておこなった結果の報告書が、以下にまとめられているものです。
2.結果はどうなった?
上に掲げた厚生労働省の施行令のポイントについては、以下の結論が出され、報告書として提案されました。
第12条「文書の掲出又は頒布その他厚生労働省令で定める方法(次項において「広告等」という。)」
① 書面を交付する方法
② ファクシミリを利用してする送信の方法
③ 電子メールその他のその受信する者を特定して情報を伝達するために
用いられる電気通信(電気通信事業法第2条第1号に規定する電気通
信をいう。以下「電子メール等」という。)の送信の方法
④ 著作権法第2条第1項第8号に規定する放送、同項第9号の2に規定
する有線放送又は同項第9号の5イに規定する自動公衆送信装置
その他電子計算機と電気通信回線を接続してする方法その他
これらに類する方法
第12条1「特定受託事業者の募集に関する情報(業務の内容その他の就業に関する事項として政令で定める事項に係るものに限る。)
① 業務の内容
② 業務に従事する場所、期間及び時間に関する事項
③ 報酬に関する事項
④ 契約の解除(契約期間の満了後に更新しない場合を含む)に関する事項
⑤ 特定受託事業者の募集を行う者に関する事項
第13条1「業務委託(政令で定める期間以上の期間行うもの(当該業務委託に係る契約の更新により当該政令で定める期間以上継続して行うこととなるものを含む。)」
6か月
第14条2「特定受託業務従事者の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものに関する言動によりその者の就業環境を害すること。」
① 妊娠したこと
② 出産したこと
③ 妊娠又は出産に起因する症状により業務委託に係る業務を行えないこと若しくは行えなかったこと又は当該業務の能率が低下したこと
④ 妊娠又は出産に関して法第13条第1項若しくは第2項の規定による配慮の申出をし、又はこれらの規定による配慮を受けたこと
第15条「厚生労働大臣は、前三条に定める事項に関し、特定業務委託事業者が適切に対処するために必要な指針を公表するものとする」
→「特定業務委託事業者が募集情報の的確な表示、育児介護等に対する配慮及び業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等に関して適切に対処するための指針」
第16条1「ただし、災害その他やむを得ない事由により予告することが困難な場合その他の厚生労働省令で定める場合は、この限りでない。」
① 災害その他やむを得ない事由により予告することが困難な場合
② 他の事業者から業務委託を受けた特定業務委託事業者が、当該業務委託に係る業務(以下「元委託業務」という。)の全部又は一部を特定受託事業者に再委託した場合であって、当該元委託業務に係る契約の全部又は一部が解除され、当該特定受託事業者に再委託した業務(以下「再委託業務」という。)の大部分が不要となった場合その他の直ちに当該再委託業務に係る契約の解除(契約の不更新の場合を含む。)をすることが必要であると認められる場合
③ 基本契約に基づいて業務委託を行う場合又は契約の更新により継続して業務委託を行うこととなる場合であって、契約期間が短期間(30日間以下)である一の契約(個別契約)を解除しようとする場合
④ 特定受託事業者の責めに帰すべき事由により直ちに契約を解除することが必要であると認められる場合
⑤ 基本契約を締結している場合であって、特定受託事業者の事情により、相当な期間、個別契約が締結されていない場合
第16条2「当該特定受託事業者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、遅滞なくこれを開示しなければならない。」
① 書面を交付する方法
② ファクシミリを利用してする送信の方法
③ 電子メール等の送信の方法(記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る。)
第16条2「ただし、第三者の利益を害するおそれがある場合その他の厚生労働省令で定める場合は、この限りでない。」
① 第三者の利益を害するおそれがある場合
② 他の法令に違反することとなる場合
3.意見募集にはどんな意見があったか
法律や施行令の変更には、かならず、市民の意見を聴取しなければいけないことになっています。
この施行令についても、2024年の4月21日から5月11日まで、意見募集が行われ、114件の意見が寄せられたということです。
「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令(案)」等に関する意見募集 (パブリックコメント)に寄せられた御意見の結果について(就業環境の整備関係)」にまとまっています。
これをみると、さまざまな意見があります。
・「広告」の範囲をひろげるべき
・妊娠出産育児介護にかんする配慮について、育児する子の対象年齢をひきあげるべき、同性パートナーも対象にするのか明確化すべき
・ハラスメントは中小規模の発注事業者は体制整備が難しいため、行政によるサポートが必要
・継続的業務委託の期間は6ヶ月ではなく短縮すべき、いや、妥当
などなど。
結果の報告書をみたところ、あまり多種多様な意見が反映された形跡はなく、素案のままのようです。
ですが、施行令は、一度定まっても、今後、柔軟に変えていこうという意思をもってこその施行令です。
フリーランス関係の現状は個々でかなりの違いがあります。
まず今回決めたことで、何がうまくいって何がうまくいっていないのかをしっかり見据え、現場も声をあげていき、現実に即していなかったものには変更をうながす動きをしていきたいものです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?