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1年単位の変形労働時間制を便利に考えるのは危険~給与計算勉強会より #0209/1000
今日は、「1年単位の変形労働時間制」という働かせ方のお話です。
この制度は、表面だけをみれば、「忙しい時期に残業代を払わずに残業させられる」「休日にも割増手当を払わずに働かせることができる」という見方もできる制度です。
でも、実は見るべきところはそこではないよ、というのがポイントです。
では、そもそも、労働者の労働時間はどのように決められているのでしょうか?
1.労働時間は何で決められている?
使用者が労働者を働かせることのできる時間は、法律で制限されています。
「日本国憲法」では第27 条 【 勤労の権利及び義務、勤労条件の基準、児童酷使の禁止 】第2項に、「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」とあります。
その「法律」とは労働基準法のことで、労働基準法第32条には、こうあります。
使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて 、労働させてはならない。
1週間についての上限と、1日についての上限があるわけです。
「あれ?自分はもっと残業しているけど・・・」と思う方もいるかもしれません。
事情主は、サブロク協定という、労働基準法第36条にもとづく協定を労働者代表と結ぶことで、実はそれを超えて働かせることができるのです。
2.1年単位の変形労働時間制は、1年で「ならして」みる制度なのでしばりが多い
1年単位の変形労働時間制とは、1週40時間、1日8時間と決まっている労働時間を、対象とした期間で平均して1週40時間を超えない範囲内では、ある特定の期間について、週40時間、1日8時間を超えて働かせることができるという制度で、労働基準法第32条でさだめられています。
これを行うためには、もちろん、労働者代表(労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者)との書面による協定が必要です。
また、対象となる労働者や、平均して労働時間を見る対象期間、対象期間のうち特に忙しい期間である特定期間などを定めて、労働基準監督署に届け出る必要があります。
つまり、ざっくり言えば、「忙しい時期と忙しくない時期があるから、それをならして、週40時間超えなければ残業代をはらわなくてOK」という会社側にメリットの大きい制度のため、間違った使いかたをされないよう、労基署がちゃんと目を光らせているということです。
その間違った使いかたのひとつが「振替休日」。
1年単位の変形労働時間制は、忙しい時期に労働者を長く働かせることができる制度のため、忙しい時期とそうではない時期をあらかじめきちんと決め、労働者と共有する必要があります。
あらかじめ、というのは、制度をおこなうにあたり決めた一区切りの期間の最初の日の少なくとも30日前。
なので、この制度をとっている以上、「今週末は忙しそうだから土曜日出てね」というようなことはNG、ということです。
3.1年単位の変形労働時間制を有効に使えるケース
つまり、繁忙期、および、閑散期の両方がはっきりあらかじめわかっていて、その通りに働かせることのできる場合でないと、この制度はうまく運用できないということになります。
閑散期がはっきりしているケースは、たとえば日照時間が関係するケース(冬は明るい昼間にサーファーがいるだけの「海の家」など)や、夏休み、冬休みがきまっていて、1年間のイベントがあらかじめきまっている学校・幼稚園など。
そうではない会社で、この1年単位の変形労働時間制をつかって時間外労働や休日労働の割増賃金を払わなくてよいようにしようと思っても、運用が非常に不自由になるので、本来払わなければいけない割増賃金に気が付かず、あとから問題になる可能性が高いということです。
制度にはメリット・デメリットがあります。
導入するときには、企業側はついメリットばかりに目が向いていますが、社会保険労務士として相談された場合は、デメリットやルールを守れなかったときのリスクもしっかり同じ重みで伝えていきたいものです。
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今日の内容は社会保険労務士法人TENcolors主催給与計算体験型セミナーに参加しての所感にもとづきます。