お給料と労働時間のなんとも難しい関係~雇用保険のこれから
コロナ禍でリモートワークや多様な働きかたがすすみ、これまでの働きかたをベースにした法律が古くなってきています。
労働関係の法律のなかでも、雇用保険は、会社を辞めさせられたり辞めたときの生活や、いま拡大中の育児休業期間の収入をささえる、会社員にとって身近で大切で気にすべき法律です。
その雇用保険にも、見直しの波がきています。
このたび、見直しを行なっている厚生労働省の雇用保険制度研究会から、途中のまとめである中間報告が公表されました。
そのなかから、気になる動きをふたつピックアップしました。
1.なにをもって生活を支える主な収入源とするか?
雇用保険は、いまのところ、働くだれもが対象になるわけではありません。
対象外となるひとはおもにこんな人です。
・会社の代表取締役や役員
・大学生、高校生
・週20時間未満の契約で働いている人
どういう人かというと、雇うがわで急に辞めさせられるおそれはない人や、そのお仕事が生活や収入のメインではない人です。
つまり、雇用保険からお金をもらえるのは、
・辞めさせられる可能性のあるひと
・そのお仕事がなくなると生活のささえがなくなる人
ということになります。
学生さんは学問が本業なのでともかくとして、いまの雇用保険は「そのお仕事が生活のささえである」ことを、労働時間でみています。
それが、「週20時間」のラインです。
ですが、働き方も多様になり、上がらないと言われていた賃金も上がりはじめています。
とすると、週20時間働いていなくても、それなりのお給料をかせいで、しかもそれがおもな収入であるひとも増えてきているのではないでしょうか?
また、週20時間未満の労働をするひとは、現実かなり増えてきています。
この増加の原因のひとつには、ひとりで20時間未満のお仕事をふたつかけもちする、という働きかたの増加も考えられます。
ですが、20時間未満のお仕事をいくらやっても、いまの制度では、65歳未満の場合は雇用保険の加入対象になりません。
65歳以上であれば、ふたつを合計して20時間以上であれば雇用保険にはいれるマルチジョブホルダーという制度があります。
逆に、ダブルワークしているひとで、両方が20時間以上というひとは、どちらかでしか雇用保険に入れないことになっています。
そしてそのどちらかは、働く時間の長さではなく、どちらのお給料が高いかで決まります。
このことからも、生活のメインの収入かどうかは、労働時間で決めるのではなくて、収入で決めるほうが現実的です。
フルタイムなみに働いているのに、雇用保険に加入できず、いざ困ったときに失業給付で救われない、そんな人を少なくする制度変更をのぞみます。
2.育児休業には給付金、育児短時間は?
もうひとつは、育児休業の人だけではなくて、育児のために短時間勤務をする人も、給付金をもらえるようにしてはという流れです。
育児休業の期間にもらえる給付金の制度は、雇用保険法で決められていますが、その雇用保険法の目的にはこうあります。
第一条 雇用保険は、労働者が失業した場合及び労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合に必要な給付を行うほか、労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合及び労働者が子を養育するための休業をした場合に必要な給付を行うことにより、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに、求職活動を容易にする等その就職を促進し、あわせて、労働者の職業の安定に資するため、失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図ることを目的とする。
労働者が子を養育するための休業をした場合に必要な給付、というのは、そのまま、子を養育するための短時間勤務としてもあてはまります。
子を養育するのは、赤ちゃんのうちももちろん大変ですが、大きくなってきて動き回れるようになったり、おしゃべりできるようになってからこそが本番だと思っています。
そこで、収入のために働き疲れてしまわないよう、子どもと向き合うゆとりができる給付は、これから必ず必要なものだと思います。
この育児短時間の給付は、正社員で短時間勤務をするひとはもちろん、契約社員で育児のために働く時間を短くせざるを得なかった人もカバーする制度として、作られることを切に願います。
アイキャッチは画像生成AIで作成しました。
プロンプト: 育児短時間で働いていてバタバタ忙しそうだけど楽しそうな母親と父親