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「その世界にいる」ことが「働く」と溶け合うことに惹かれる〜築地市場の風景の写真展より


築地で社労士事務所をされている、岩野麻子先生の写真展にお邪魔した。

写真展のテーマは、いまはなき築地市場。


昨年9月、築地の写真とともに、岩野先生のお話を伺う機会があった。

その時、築地市場で、「存在する」=「働いている」なんだと自然に思える人の姿、「居場所」と「働く場所」が分けられないほどに混ざりあっている様子に、うたれたことを覚えている。

今度写真展があるとお聞きし、楽しみにしていた。

写真展の最初のほうで築地の当たり前の光景のひとつとして映りこんでいる長靴が、最後、豊洲の写真の中でちょっとよそ行きな顔をしているなど、伏線がはられている展示もとてもよかった。


岩野先生は社会保険労務士を長くなさっている。
だから、岩野先生の写真からは、岩野先生の「働く」ことへの深くまっすぐなまなざしが見える気がする。

築地という文化を味わいつつも、それだけではなく、「働く」とはどういうことかに考えがいくのは、岩野先生の写真の力だと思う。

学校を出てからひとつの会社に長く勤めるのは昭和のスタイル。
令和は、自分のキャリアは自分で考えながら、転職もするし、仕事をかけ持ちしたりもすることが珍しくなくなっている時代。

そんななか、「会社」に限らない「集まり」「場所」、いってみれば、「世界」そのものにずっと身をおいて、そこにいる時間がすべて働くことにつながる、そんなふうに私には見えるこの世界は、古いように見えて、実はこれからそれを望む人も多いのではと思う。

なぜなら、そこでは「能力」の高低はあまり大きな問題ではなく、それぞれの欠点も(もちろん長所も)のみこみながら、存在していることと働くことが溶け合っていそうで、安心できる場所のように思えるから。

私も、そんな場所を望む一員である。

事実を詳しく知っている訳ではないから、夢を見すぎかもしれない。
だが、この写真展にいると、それが100%あっていなくても、かけらは絶対ある、そんなふうに思える。

これから、自分はどんな場所にいたいと思うか。
この写真展は、そんなふうに、私に自分に問う力を授けてくれる場所となった。

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