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【本】村井貴子『職場問題グレーゾーンのトリセツ』

社会保険労務士の村井貴子先生による、現場のできごとを判断していくための法律の基礎が学べ、その応用のアイデアにも満ちた本です。


1.法律の基礎と応用の例

たとえばこんなケース。
「毎日数分だけ遅刻してくる後輩。モヤモヤします」

たちどころに勤務態度不良で解雇!なんてできないだろう、とは皆思います。
では、このモヤモヤをどう解決していけばいいのか?

この本では、「決められた契約を守れないと、懲戒の対象となります」
「毎日遅刻している後輩の人は契約違反の状態です」と、まずははっきりルールに照らして判断したあと、ではどうするとよいか、と方向性を示してくれています。

そしてこの項目を読むだけで、上の問題に対する解決のアイデアのほかにも、「ノーワーク・ノーペイの原則」という働く上で基本となる民法の考え方や、過去の判例もまなぶことができます。

ほか、以下のような例示があります。

・ストーカー行為で逮捕された人を会社がただちに解雇することはできない、刑が確定するまでは「推定無罪」として取り扱われることと、これまでの判例。

・お給料が少ないので副業したい、という相談には、本業の給与額が少ないのであれば最低賃金を割れていないかをチェック、ということで最低賃金の考え方を紹介。

・年休をとらせないのは労働基準法違反で、罰則があり、6ヶ月以下の懲役と30万円以下の罰金となる。1人につき1つの法違反なので、100名スタッフがいれば、最高で3000万円の罰金刑となること。

また、あいまのコラムでは、ハラスメントが起きる原因についての深い考察も示されています。

企業におけるインクルージョン(包含性)とは、所属する社員の属性が少ないほうが高まります。みんなが同じ背景を持ち、同じような考え方であれば共感性が発揮され、「みんなが仲間」という感覚が育まれるからです。一方で、多様な背景を持つ社員が増えてくる(=ダイバーシティが進む)と、この意識は育まれにくくなり、「違うこと」がハラスメントの温床になりやすくなります。

コラム「育休とハラスメントの根深い関係」より

2.トラブル前に押さえておきたい重要なポイントが付録に!

付録にあるのは
「困ったときの相談先」

「トラブル時の解決手段」。

たとえば、会社が残業代を払ってくれない!というときや、ハラスメント行為があったとき、どこに相談すればよいか?

一般人だと途方にくれてまずはGoogle検索してしまうかもしれませんが、この本には、公的機関でお金のかからないところ、お金はかかってもいいから着実にすすめたいところ、などの基準で、労働基準監督署等の公的機関から弁護士会、労働組合などを比較検討することができます。

また、トラブル時の解決手段として、あっせん制度や裁判など、どのような方法があるかの全体感がわかります。

知っているのと知らないのとでは、初動が違うこと間違いなしです。

これから社会人になる人や、新任の人事担当者は、最初に目を通しておくとそのあとの人生に大きく役立つ可能性大です。

社会人経験が長い人でも、こういう法律の背景があってこうなっているんだ、ということがわかり、おすすめです。



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