契約期間が決まっている社員は知っておくべき、無期転換ルールとクーリング期間
2022年12月27日、厚労省で「今後の労働契約法制及び労働時間法制の在り方について」についての報告案がまとめられ、現在課題となっていることへの現時点での結論が公表されました。
結果、契約期間が決まっている有期労働契約社員の「無期転換ルール」と「クーリング期間」については、現状維持となりました。
課題は、まだまだ制度を知らない会社や社員の存在があるので、よりいっそう周知をすすめることと、決まりの趣旨に反するような使い方がされないよう、悪い例も広めていくこと。
そこで、その結論をみちびきだした現状はどうなのかを見てみました。
1.そもそもどういう制度?
無期転換ルールは、6ヶ月や1年など契約期間が定められて雇用されている人について、それが繰り返されて5年に至れば実態はほぼ常用と変わらないので、期間を決めた雇用ではなく、期間を決めない無期の雇用への転換をすすめる仕組みです。
有期雇用から無期雇用への転換には、本人が望むかどうかが重要なポイントとなります。
無期雇用への転換は労働者の権利であり、本人が望んで申し入れをすれば、会社は拒否することはできません。
また、逆に、本人が望まなければ、無期に転換する必要はありません。
今回、この「5年」が妥当かということも話し合われ、現時点では妥当だということになりました。
また、この「通算5年」の判断にかかわってくるのが、通算期間がリセットされる「クーリング期間」。
現在では、原則、6ヶ月以上で契約期間の通算はいったんリセットされることになります。
以下の図のとおりです。
クーリング期間の仕組みは、5年以上同じ企業に勤務した社員が一度会社をやめたあと、再度勤務したい思った場合などに、就業のハードルを下げるために必要となります。
このクーリング期間がないと、再度勤務の際にすぐ無期転換せねばならず、会社としては雇うハードルが上がるためです。
ですが、クーリング期間を設けるとすると、期間の長短も問題となります。
短すぎる場合には無期転換ルールの導入の効果を減らしてしまうし、長すぎる場合は労働者の雇用機会の確保等の観点から問題となるとされています。
バランスが難しいクーリング期間ですが、実際の運用はどうなっているのでしょう?
調査結果をみてみると、クーリング期間そのものを利用している会社がごく少ないことがわかりました。
2.クーリング期間使用実態
令和2年の厚労省による事業所調査でクーリング期間の有無をみると、「クーリング期間」を置いているのは事業所の割合は3.0%となっています。
クーリング期間を置いている場合の平均的なクーリング期間をみると、「2か月以内」が26.7%、次いで「6か月超~9か月以内」が26.6%という結果です。
平均的なクーリング期間で多いのが「2ヶ月以内」で6ヶ月ではないのは、そもそも通算する対象の契約期間が短いからです。
以下のとおり、2ヶ月から4ヶ月の契約期間しかなければ、クーリング期間は2ヶ月以上となるのです。
そもそものクーリング期間を置いている事業所が3%台なのを見ると、課題は、クーリング期間の悪用を懸念するよりも、この無機転換ルールをひろげていくことにありそうです。
ただし、そもそもが、ひとつ会社で長く働くことをよしとしない労働者も増えてきています。
制度は生き物。
時代にあわせて都度検討していくことが重要な制度のひとつではないでしょうか。