
女性の健康への対応、ナショナルセンターとともに進む?〜「女性版骨太の方針2024」②
政府は、2024/6/11、「すべての女性が輝く社会づくり本部」及び「男女共同参画推進本部」の合同会議を開催して、「女性版骨太の方針2024」を決定しました。
そこから、今回は女性の健康について取り上げます。
1.女性の健康にはどんな課題がある?
今回の骨太の方針では、「女性の所得向上・経済的自立に向けた取組の一層の推進」のひとつを「仕事と健康課題の両立の支援」としています。

この資料のなかでも、「健康の性差」を示しているグラフは、見て驚く方も多いのではないでしょうか?
生物学的に女性であるほうが、性別特有の病気の患者数が多いのです。

これはあくまで「患者数」のため、働き盛りの男性はまだまだ病院より仕事で、通院するきっかけが少ないということはあるでしょう。
それにしてもかなりの差があります。
特に女性の40代は、減少するものと増加するものがあり、難しい年代であることがわかるのに、このくらいの年代に、子育てや介護が加わることが多くなっています。
この「骨太の方針」では、
「働く女性の月経、妊娠・出産、更年期等、女性のライフステージごとの健康課題に起因する望まない離職等を防ぎ、女性の活躍を支援する」
と、そこへの支援を打ち出しています。
支援は大きく以下のふたつにわかれます。
① 健康診断の充実等による女性の就業継続等の支援
② 企業評価制度の更なる充実と普及
2.支援の内容は?
① 健康診断の充実等による女性の就業継続等の支援
まずは、健康診断にあわせたこんな支援があげられています。
・会社が行う健康診断で、月経随伴症状や更年期障害等の早期発見に資する項目を問診等に加える。
・主にお仕事を引退したかたを対象にした自治体検診で、骨粗鬆症検診の受診率向上に向けた取組を進める。
・更年期に係る症状を自己評価により把握し、受診などの適切な行動に結びつけられるセルフチェックの活用を企業や自治体に促す。
・事業所内に働く女性の相談に対応する担当者を配置するなど女性の健康を話題とする場
づくりを推進する。
・健康課題が把握された従業員に対し、事業主が行うことが望ましい対応についてガイドラインや指針などを作成することを検討する、女性の健康に関する取組の好事例等を事業主に周知する。
・病気休暇等の特別休暇制度の導入を推進するため、特別休暇制度導入事例集の作成・周知に取り組む。
・会社で、従業員の産婦人科受診に対するハードルを下げるための相談事業が行われることを促進する。
・女性特有の健康課題に関する取組を行っている企業を評価する仕組みを検討する。
・産業保健スタッフ、保健師、助産師、看護師、薬剤師、養護教諭等が、職場や地域、学校など様々な場で、更年期の健康課題を含め、女性のライフステージごとの健康課題とその対処法について知識の普及に取り組めるよう、人材育成を図る。
などなど。
まだ検討段階のものはありますが、体がつらい状況になるまえの「未病」段階からアプローチする取り組みが多く、実施できたらその効果は将来になればなるほど大きいのではと思われます。
また、プライバシーに十分配慮したうえで、ということも記されているのが特徴です。
② 企業評価制度の更なる充実と普及
ふたつめが、女性の健康支援に取り組み評価されている企業をコアにし、自主的な活動をうながす仕組みをさらに強化することです。
健康経営銘柄、健康経営優良法人、なでしこ銘柄等に選ばれ、評価されている企業などから好事例を集めて他の企業に周知すること、特に、小規模事業者にも参加するメリットを感じられるよう、優良法人に選ばれる要件を緩和すること、などが記されています。
3.期待する理由、女性の健康ナショナルセンターの設立
そういった取り組みを、大きく支援すると思われるのが、今年、国立成育医療研究センターを拡充して設立される「女性の健康ナショナルセンター」です。
「骨太の方針」の内容は、厚生労働省と、経済産業省とにわたっており、省庁をまたいでの取り組みとなります。
ですが、こうした専門の研究機関ができれば、その橋渡しもできますし、新しい機関ということで、成果も求められるはずです。

性特有の病があり、子育てや介護を担う世代の女性の「望まない離職を防ぐ」。
そのためには、ここに掲げた予防対策のほか、もちろん、長時間労働防止などの働き方の改善も必要です。
私たちもアンテナを高くし、「骨太の方針」の進展を見守っていきましょう。