労働協約を活用したあかるい未来 0506/1000
労働協約というものをご存知ですか?
ニュース等ではたまに耳にすると思いますが、労働協約とは、労働組合と会社との間の約束のことで、双方の記名押印等がある書面で作成された場合にその効力が発生します。
ここに定める労働条件等に違反する労働契約や就業規則は、その部分が法的に無効とされます。
つまり、会社と個人の間での労働契約よりも、会社が定めたルールである就業規則よりも、強い力を持つ「約束」です。
ここで重要になってくるのが「労働組合」という存在。
諸外国にも労働組合は存在しますが、日本の労働組合の特徴は、企業別であること。
諸外国はいわゆる「ジョブ型」雇用が多いため、そのジョブに基づく労働組合や産業別等が主流です。
産業別であれば、同じ産業は足並みを揃えることになり、一部の会社が抜け駆けすることは難しいですが、日本は企業別なので、それが可能です。
たとえば、家電量販店で、「うちは24時間365日営業します」といって、他の家電量販店と差別化することも仕組みとしては可能なのです。
ですが、日本でも、働き方改革のなかで、企業を超えた「労働協約の拡張適用」が徐々にひろがってきています。
これは、労働組合法第18条にもとづくものです。
この第18条は、労働協約が一定の要件を満たし、拡張適用を申し立てた上で厚生労働大臣又は都道府県知事がそれを決定したときは、労働協約の適用範囲をひとつの会社だけではなく、一の地域内で従業する他の同種の労働者及び使用者にも拡張するというものです。
そうすることで、労働条件の切下げ競争を防止し労働条件の維持改善を図るとともに、労働者間、使用者間の公正競争が確保できるというわけです。
この条文自体は昔からありましたが、活用されるようになったのはつい最近です。
最初の事案は茨城県で、昨年、大型家電量販店の無期雇用フルタイム労働者についての休日・割増賃金についてでした。
有効期間は1年間です。
それが、この令和5年にも、今度はひとつの都道府県ではなく、青森県・岩手県・秋田県にも、同様に家電量販店の休日と割増賃金について適用とされることになりました。こちらは2年間です。
ひとつの家電量販店が従業員に休日をしっかりとらせたいと思っても、他の店舗が働かせ方を変えなければ、対顧客を考えると休みを増やすことはできなくなります。
ですが、こういうかたちで協力体制を組めば、抜け駆けされることなく、安心して休ませることができるわけです。
いつでもお店が開いていたり、翌日にすぐ配達されたり、そういったサービスは顧客にとってありがたいもの。
企業もこれまではそんな顧客のニーズに応えようとしてきたのがこれまでの時代です。
ですが、よくよく考えれば、いますぐ欲しいというケースは限られますし、営業日や営業時間が限られているのが当たり前であれば、顧客もそれにあわせて行動すればよいわけです。
顧客のためにやったほうがいいと思うことはどんどんやっていくという時代から、労働力減少の時代となり、企業も顧客ももっと成熟して、お互い無理のないサステナブルなお付き合いができたら素敵ではないでしょうか。
そんなお付き合いを広げていくためのひとつのきっかけとして、労働協約の拡張適用はもっと活用しがいのある仕組みなのではと思います。