介護離職ありは10社に1社、介護休業とらずに離職は5割〜東京商工リサーチ「介護離職に関するアンケート」
東京商工リサーチ「介護離職に関するアンケート」で、介護離職ありは10社に1社、介護休業等をとらずに離職している人が5割ほどいることがわかりました。
調査対象は下部に示した12項目。
介護と仕事の両立の現実が把握できる内容となっています。
会社へのアンケートなので、実際は介護だが会社にはそう言わず辞める場合や、その逆もある可能性はあります。
ですが、介護離職した人の5割が介護休業を取得していないという事実は重いと思います。
両立支援がすすまない理由
両立支援の取り組みが弱いと感じている企業が4割。
その弱い理由が「前例がない」であれば、具体的な事例をもってのサポートが有効ですが、それは複数回答で約半数。
最多は「代替要員を確保しにくい」の6割です。
離職ならば新規人員採用に動けるけれど、休業だと期間限定の雇用となるため、人探しが難しいという現実もありそうです。
ですが、採用したくても人が集まらない現状も、どんどん深刻になっています。
代替要員が必要な会社が集まれば、その代替要員期間を数珠つなぎにすることで、長期雇用になる。
いまは派遣社員さんがその繋ぎをしてくれているのかもしれませんが、そんな形ではなかなか難しいだろう、と思う点も以下の記事のようにあります。
もっと安心して代替要員として勤務できるような仕組みが整えられ、広がっていくことが今後絶対的に必要です。
調査で気になった点
私がこのアンケートで黄色マーカーをきゅっと引いたのは、以下のふたつです。
1.介護離職者は男性のほうが多いが5割
過去1年間の介護離職者は、「男性の方が多い」が51.6%(426社中、220社)、「女性の方が多い」が37.0%(158社)、「同じぐらい」が11.2%(48社)で、「男性の方が多い」が「女性の方が多い」を14.6ポイント上回ったとのこと。
この男性の属性等の情報まではありませんが、今の世の中で男性が辞めざるをえないということは、他の家族や親族から得られる力が弱いのではと推測できます。
ということは、離職により収入源がたたれた場合、周りで支える力も弱いということ。
生活が苦しくなる可能性が高いといえます。
早めのケアが必要です。
2.介護に直面したら両立より経営を退く経営が4割強
経営者が、自身の親族などの介護が必要となった場合、「介護と両立の道を探る」が53.4%と半数が経営を続ける意向を示したが、経営を退く回答が、「親族外の後継者に委ねる」の17.5%(531社)をはじめ、合計43.0%(1,304社)あったということ。
やりたいことをやりきったからあとは介護に専念、という方もいるかもしれませんが、介護の現実を知るといまの生活ではとても両立できないと感じている方もいそうです。
比較的裁量権のある経営者のかたがそう思うのであれば、労働者はなおさらです。
さらに、介護のハードルを下げていく必要を感じる結果です。
調査項目と回答
Q1.貴社で、過去1年間(2022年9月~2023年8月)に介護を理由とした退職者(以下、介護離職者)は発生しましたか?
介護離職 企業の1割で発生
Q2.過去1年間の介護離職者は何名ですか?
介護離職者数は規模に相関関係なし
Q3.過去1年間の介護離職者は男性と女性のどちらが多いですか?
介護離職 男性が中心も、中小企業ほど女性が増える
Q4.過去1年間の介護離職者は「正社員」と「非正規社員(パート・アルバイト、派遣社員など)」のどちらが多いですか?
大企業ほど正社員の介護離職が多い
Q5.過去1年間に発生した介護離職者のうち、介護休業(通算93日)・介護休暇(対象1人当たり年5日)のいずれかを利用していた人の割合はどの程度ですか?(0~10の整数で回答ください)
介護休業・介護休暇 介護離職者の5割超が利用せず
Q6.「仕事」と「介護」の両立支援に向け、貴社での取り組みや整備した制度は次のどれですか?(複数回答)
マニュアルなどで明文化が5割
Q7.「仕事」と「介護」の両立支援について、貴社の取り組みは十分だと思いますか?(択一回答)
取り組み十分とは思わないが約4割
Q8.Q7で「そう思わない」と回答した方に伺います。その理由は次のどれですか?(複数回答)
代替要員を確保しにくいが6割
Q9.介護離職者数は将来的にどうなっていくと思いますか?(択一回答)
増えると思うが6割超
Q10.介護休業は、現在最長で年93日取得が可能です。93日という期間についてどう思われますか?(択一回答)
短いが約4割
Q11. Q10で「短い」と回答された方に伺います。その理由は次のどれですか?(複数回答)
介護の「終わり」の予測が難しいが9割超
Q12.経営者の方に伺います。ご自身がどなたかの介護をする必要に迫られた場合、どのようなご決断をされますか?(択一回答)
廃業や承継、会社売却が計4割超
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