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貧民街の神社(カルマティックあげるよ ♯162)
天候にも恵まれたある日、エツと二人で車を走らせながら、いくつもの神社を巡りお参りをしていた。カーブの続く山道を走り抜け、その日3社目の神社に辿り着いた。その神社は周辺でも有名な貧民街の中にあった。
車を降りて境内の入り口へと向かう。舗装もされていない土がむき出しの狭い峠道に面した入り口前には、拝殿のような小さな建物が佇んでいた。手前には賽銭箱があり、大勢の参拝客が参拝するために並んでいた。6人程
ナイト・オブ・シンクロニシティ:後編(カルマティックあげるよ ♯150)
不思議な一夜の記録、後編。
前編はこちら
真夜中の田舎道を、僕ら3人を乗せたジムニーは進んでいった。先ほどまで走っていた車通りの激しいバイパスとは打って変わって、周囲を走る車はほとんど見当たらない。時折対向車がビームライトに照らされながらすれ違っていくだけだ。あたりは田舎によくある敷地の広い民家ばかりで、すでに灯りを消している家も多く、点灯している家も広い庭ゆえ光は遠くに見えたのだった。植木が
ナイト・オブ・シンクロニシティ:前編(カルマティックあげるよ ♯148)
これから記すことは、僕とエツとトシが共に遭遇した、ある不思議な一夜についての記録である。
学生生活の終わりを目前に迎えた、大学4年生の3月。卒業制作展という美術系大学特有の一大イベントも終わり、学生達はみな新たな環境での生活に向け各自準備に追われつつも、残り少ない学生生活を謳歌していた。自分の周辺はどうだったかと言うと、エツは大学院への進学、トシは半年間の留年が決まっていた。そして僕はのらりくら
遠藤ミチロウさんの想い出・後編(カルマティックあげるよ ♯136)
前編はこちらから
「ジジイ!ジジイ!ニュージジイ!
トエンティワンセンチュリーイ!クソジジイ!」
激しくかき鳴らされるアコースティックギターの弦の音、そのボリュームに負けじと叫ぶ遠藤ミチロウの歌声がカフェの空間の中に響きわたった。マイクもアンプもない真のアンプラグドと呼ぶべき弾き語りだが、閉じられたカフェの中を音で満たすには十分すぎる音量だった。
「21世紀のニュージジイ!」
遠藤ミチロウさんの想い出・前編(カルマティックあげるよ ♯135)
筆:KOSSE
「4月22日・遠藤ミチロウLIVE、当店にて開催。店内にてチケット販売中。」
それは大学4年生に進級したばかりの、春風の吹く4月初旬の頃だった。散歩のテリトリーだった道を徘徊中、よく前を通るカフェの窓ガラスに、そう書かれたポスターが貼られているのを見つけた。
「えっミチロウさん来るの!?マジかよ!」
驚いた僕は、チケットを入手するため迷うことなくそのカフェの中へと入っ
秋田旅行記(2018.4)その4(カルマティックあげるよ ♯114)
2018年4月28日、15時頃。
四同舎1階のお座敷の部屋を見学し終わった僕は2階へと上がるため、階段のあるエントランスホールに向かった。
宙から降りてきた石板が、地表に落ちる寸前で止まったかのような、どこか神秘的な印象を漂わせる螺旋階段。
その1段目に足を乗せる。踏み込んだ感触から、ソリッドな見た目の印象よりとても頑丈な造りに感じられた。続けて、ゆっくりと2段目にもう片方の足を乗せる。さらに
秋田旅行記(2018.4)その3(カルマティックあげるよ ♯102)
2018年4月28日、14時過ぎ頃。
僕は見学をお願いした四同舎の中にいた。
四同舎のエントランスホールは吹き抜けの中を螺旋階段が通り、南側に設けられた大小複数の窓から光が差し込むという構造だった。視界のほとんどがモノトーンでまとめられたその空間は一見無機質で冷たい印象なれど、なんだか心がだんだんと晴れ晴れしていくような、不思議な居心地の良さがあった。
挨拶の後、管理者である清水川さんが白
16の秋 (カルマティックあげるよ ♯15)
高校に入学した当時、ろくに絵心もない分際で絵描きの道を志そうとした私は晴れて美術部に入部した。
しかしそこは実質的に活動する部員が3学年合わせて10名も存在しない、男子校の弱小美術部だった。
部内の空気もゆるゆるで顧問も先輩も「下手でも自分の好きなもの描いたらええやん」といったおおらかな考えの持ち主だった。
そんないい加減なスタンスの部活でのらりくらりと過ごす私に襲いかかった試練が秋の美術展だっ