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エッセイ「株主様」

コロナ禍で、色々始めて色々やめた。

やめたこと、不必要な飲み会への参加、家事を頑張ること、不急の残業。
始めたこと、小説を書くこと、ルンバ、有給を使い切ること。

勿論ルンバを導入しても掃除機は手放せないわけだが、時間やお金の価値観が、コロナ前後で変わったことは間違いないと思う。私にとってコロナ禍は、見えない何かに怯える時間であると同時に「本当に大事なこと」を行うため「そこまで大事では無いこと」を削ぎ落とした期間だった気がする。

流行りのNISAにも手を出した。もともとiDeCoをゆるく続けていたので、あまり抵抗なく始めることができた。NISAは増えたり減ったりがリアルタイムで見えるので、お昼休みに見ている。ニヤニヤしながら毎日見ている。やばいやつである。

そしてNISAのみならず個別株にも手を出した。株主優待目当てで。コロナ禍の間は、飲食業関連の株価が廉価だったので、調子に乗って名の知れた企業のモノをいくつか買ってみた。そのうちの半分は今、軒並み塩漬け状態なので、NISAのプラスと相殺してプラマイゼロ、いやマイナスくらいだ。

サンマルクの株だけは唯一好調で、年2回の配当と、20%引きになる株主優待券が送られてくる。

有効期限は1年間。魔法のカード✨

そもそもサンマルクの株を買ったのは、幌平橋に住んでいた頃、近くの倉敷珈琲店で使いたかったから。残念ながら倉敷珈琲店も、お隣のサンマルクレストランも、既に閉店してしまった。

旧倉敷珈琲中島公園店の外観。雪やべーな。

この店舗の雰囲気とサイフォンコーヒー、それにモーニングのフレンチトーストが大好きで、休みの日によく行っていた。不思議と落ち着いて、大好きな空間だったので、とても残念。

お隣のサンマルクレストランも、私が子供の頃からある「ザ・洋食店」だった。亡き祖母と一緒に、食事に行ったことを覚えている。

株主優待はこちらのレストランでも使えたので、女友達とのクリスマスディナーや、同僚とのお疲れ様会に利用した。広い店内にグランドピアノがあって、ふかふかのソファ席、もしくは雪の庭が見えるテーブル席。素敵な空間だった。そこで食べる焼きたてのパンが美味しかった。もう食べられないのが、本当に残念すぎる。

倉敷珈琲と駐車場は共用で、お庭が綺麗だった。

そのため今、サンマルクの株主優待が使える場所は、近場ではル・トロワのサンマルクカフェだけになってしまった。おそらく鎌倉パスタなど使えるところはもっと色々あるはずなのだけど、行動圏内に店舗がない。

倉敷珈琲店は、もう新札幌まで行かないと店舗がない。飲食業の厳しさを、ちょっと垣間見た気がする。


さて件のサンマルクカフェ。買い物などの用事で街に出て「疲れたな、休もう」と思う時は、必ずサンマルクカフェに行くようになった。

だって優待持ってるし。
もったいないし。

そんな感じで、勝手に行きつけにしている。

ある日、いつものようにレジに並んでいると、
「ポイントカードをお持ちですか?」
「あ、あります… アプリの…」(スマホごそごそ)
「ありがとうございます、お会計、サンマルクブレンドホットで〇〇円でございます」
「あ、あの、すみません…、コレあります…」(優待券ごそごそ)
「あ、ありがとうございます。株主様でいらっしゃいますね」


か、か、か、株主様…!?

女性店員さんはそう言うと、颯爽とサンマルクブレンドを20%引きにしてくれた。

私は「株主様」のワードインパクトに一瞬呆然とし、慌ててコーヒーを受け取った。

株主様…
かぶぬしさま…

えー、うん、ちょっと悪くないんじゃない?

そんな些細なことですっかり気を良くした私は、すっかりサンマルクカフェのファンになった。しばらくサンマルクの株を売るのはやめておこう、と調子に乗った頭で考えながら、サンマルクブレンドを啜った。





おまけ。

NISAやiDeCoに抵抗がある方は、ふるさと納税がお勧め。悪策だという意見もたまに見かけるけれど、地域格差と日本産業を守ることを考えた、日本の中では割と真っ当な政策だと、個人的には思っている。

弟子屈のローストビーフはここ3年連続で頼んでいて、とても美味しいので、良ければ年末年始にいかがでしょう。わたしも勿論頼みました。(案件ではありません)


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