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匿川 名
2022年12月6日 23:35
彼女の母親は、いつも疲れた顔をしていた。母親が俯いていない姿を彼女は見たことが無かった。だから自然と彼女も同じように俯くばかりの姿勢が身についた。下を見る生活。地面に向かう人生。そこには決して空に向けて開けるような明るい兆しなどは、どこにも見当たる事は無かった。人は社会的な生き物であり、社会はそこに住まう者に対して潤滑油を要求する。社会の潤滑油、すなわちカネだ。単純な事実なだけに、
2022年12月14日 23:08
1 ある会話少年はまたそこを訪れることにした。切り立った山の向こうに、その『ほこら』はある。そこは『禁忌の地』だ。彼の所属する『集団』には、そこに行くことは決して許されてはいなかった。少年は身軽に、少しの危なっかしさもなく岩と岩の間を飛び越え、その間に汗もほとんどかかないままだった。やがて辿り着いた岩山の切れ目に身を滑り込ませる。陽射しが届かなくなると、そこは完全な暗闇に包まれる。