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小雨降る喫茶にて


金沢は雨の街と言われる。
弁当忘れても傘忘れるなっていうくらい。個人的には傘よりお弁当の方が絶対に忘れたらいかんだろと思うけどね。お腹空いちゃうからね。

中学生のころは、小雨くらいなら傘をささずに歩いていた。雨の中、ほんのり湿った空気がすきだった。灰色の雲の裏に太陽があって、雲の間からたまに刺すように光るのを見るのがすきだった。

「雨降ってるのに、なんだか楽しそうに歩いてるのを見て、いいなあ、友だちになりたいなあって思ったんだよね」って言ってくれた稀有な子がいたなあ。中学卒業以来会ってないけど、どうしてるんだろう。一緒にクラリネットを吹いた、第二音楽室の景色がもう遥か彼方になってしまったけど、大事な思い出である。

茶室小雨

それはさておき雨の似合うカフェというものがあると思うのだがいかが。
名前のとおり、茶室小雨さんはしっとりとした雰囲気で、雨の日に静かに過ごしたいときにぴったり。


ここのミルクティー、本当にふわふわの口溶けで初雪みたいなんだよな…。

初めて行ったときに食べたのはジャスミンといちごのショートケーキ。いちごのショートってかわいいイメージだけど、これはエレガント。ひとりで優雅に過ごすこれ以上のお供はない。

小雨のお茶会

お紅茶すきな職場の先輩と後輩に、「紅茶とケーキがすっごいおいしいお店があるんですよ〜」と話したら、行きたい行こう行かねばと盛り上がり、計4人でお茶会に。

このときわたしはプリン🍮を頼んだのだけど、もうこのビジュアルから尊い。なんかもう完璧すぎてもはや神々しさすら感じるし、なんなら涙が出そう。美しい絵画を見てるよう。

前に座ってる後輩はかぼちゃのチーズケーキ。結構大きくどっしりしてて、それをあむっと食べてはとろけるような笑顔で「おいしいですねえ」って言う後輩がかわいすぎて「天使か?」って真顔で聞いてしまった。

先輩ともう1人の後輩は季節のショートケーキ。このときは、ナガノパープルとダージリンだったかな。見た目もシックで食べてないけど心ときめく。

後輩のひとりは、まだ19歳なのだけど「こんな大人なカフェ、はじめてきました…いつもチェーン店なので…」と目をキラキラさせていて、なんだか微笑ましくて眩しくて、意味もなく嬉しくて、でも少しだけノスタルジックな気持ちになったよ。

ご褒美小雨

先日上の親知らずを抜いてきまして、もうね、それについてはまた別の機会に語りたいのだけども、抜糸も終わって回復してきたので頑張ったご褒美に季節のショートケーキ食べてきたんだよね、えへへ。

洋梨とキャラメルのショートケーキ。インスタで見てからずっと食べたくて、ギリギリ間に合った。

洋梨の瑞々しい柔らかな甘さとキャラメルのコクのある甘さが絶妙で、優しさがとろけたミルクティーを合間に口に含んでは、ほっと一息ついていた。噛み締める喜び。頑張ってよかった。

金色に縁取られた器も本当にすき。本格的に寒くなってきたので、あたたかい紅茶が沁みるなあ。


雨とケーキと紅茶から

嬉しくていっぱい撮っちゃったんだよね


雨の思い出といえば、もう一つあって、大学の頃、授業が終わって外に出たら雨が降ってた。傘ないけどもう帰るだけだしなーとテクテク歩いてたら、見知らぬジェントルマンが「使いなさい。私は車だから」とビニール傘を有無を言わさずわたしに手渡して、颯爽と去って行ったのだった。

まだ入学間もなくて、慣れない一人暮らしにぽつんとたまに孤独を感じていた頃だった。なんだ今のは誰なんだ、と戸惑いつつもなんだか愉快で嬉しくて、母に電話して話したら、「アンブレラマンだね」って言うのがおかしくて、一人の部屋ではじめて声を出して笑った。

ああ、アンブレラマンのこと書いてたら思い出したんだけど、小学生の頃も通りすがりのおばちゃんに傘を貸してもらったことがあった。「返す時は、そこの電柱に立てかけておいてくれればいいからね」って。花柄の傘だった気がする。次の日にお手紙を書いて母と一緒に電柱に返しに行った。

最近は豪雨が多くて、雨に嫌なイメージしかなかったけど、自分の中にあった雨にまつわる思い出を取り出してみると、なんだか優しい気持ちになれた気がする。

雨の似合う喫茶で、おいしいケーキとミルクティーを楽しみながら、雨の日の記憶を眺めて、ほっこりする。たまにはいいよね、こんな時間も。そんな冬のおやつ時間でした。


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