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詩 無責任で永い物語足裏の皮を擦り減らし 肉は削られ骨はひび割れた 赤黒いものが地面に浸みこんでいく もはや痛みと喜びの区別を見失った頭を支えて 歩き続けることに意味はあるのだろうか ある程度まで行くと靴が用意された こんな頭だから何足も履いてしまう 靴の上から靴を履き重ねるたびに 安心する感じがしてやめられないのだ 地面の感触が分からなくなってくる しまいには、足が在ることも忘れてしまった 余計に喪ってしまった しばらくの間は、痛みはないはず 物語のつづきは考えたく
詩 せんそうしまくりワールド人と人はせんそうしまくる おおきな銃をつくったり お金のかからないころしかたをかんがえたり 人ともりはせんそうしまくる 人とぞうはせんそうしまくる 人とみみずはせんそうしまくる もりとぞうとみみずはおのれをころす人のめをのぞきこむ 何千年も人のめをのぞきこみつづける もし だいち くも たいよう うみにおもいやりのこころがあって けいさんするあたまがあったならば (あるかもしれない) だいちは365日たてによこに揺れ くもは365日そっぽを
詩 はじまり優しいお父さんとお母さんのもとに生まれて すくすく五体満足 先生と友だちと出会って ふつうに結婚して 子どもを何人か授かって ほっこり死ぬ この街では僕の命はどうやらうまくいきそうにない わかってる そんなこと誰よりもわかっているさ 一人で逝こうとすると きみは現実や勇気 神までをももちだして救いについて語りだす わかってる けれども、だからといってこの身体はやめない 僕はそんなきみを圧倒的に支持する 満ち足りているのに奪いあう 拾った愛のために自由を棄
詩 やっぱり、すききみが、ぼくのことを、七回もふった夜。 ぼくの口のなかは渇ききっていて 呼吸はおちついていて 自分の血が管を流れる音がはっきり聞こえた。 ぼくの一回のすきに、きみは七回も「すきじゃない」と返した。 ついに、「一生涯、愛することはない」とも言った。 それでもぼくらは同じ布団の上で隣り合って寝ていた。 今夜が最後になるかもしれない。 きみの寝息をあとで思い出せるように、めいっぱい耳をそばだてた。 きみと同じ布団で寝ている自分を貧しく感じて、床で