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春、何度めかの #旅する日本語


すべてを投げうってもいいと思ったのは そう、忘れない
冬の寒さがすこし和らいだ
鈍色の空が街を覆った、あの日のことだった
東京、いつからか
あなたとふたり過ごした、あの
ちいさな部屋から眺めた景色、一面を
やさしく包む催花雨に、
ほころび咲いた、川辺の桜 ああ、また
あれから何度めかの
春が、はじまる

色のない景色を
薄桃のアーチが頼りなげに彩ってのち
祝福の嵐に舞うその色、若き緑へ季節を託すまで
いつもふたりで歩いた、あの
川辺で誓った
あたらしい季節、あたらしい未来
あたらしい、人生

ずっと続くと思っていた
川辺の道を
永遠にふたり、歩くと思っていた


すべてを投げうってもいいと思ったから そう、あの時は
冬へのかすかな未練をまとった
鈍色の空の下、仰げど桜の花は無く
ずっと、憶えてる
川辺をはるか見とおす、あの
ちいさな部屋を満たした春色、時は過ぎ
季節をわたす催花雨が
いざない包む、涙ひとひら ああ、また
あれから何度めかの、
春が
はじまる








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