ぺんぎんさんがいい。
やっぱりどーぶちゅえんにいきたい!
3歳になったばかりの姪っこのリクエストを受けて、ぼくは頭の中で速やかにプランを変更する。
水族館なら乗り換えまであと2つ。
動物園は...ここだ。
彼女の手を引き、電車を降りる。
足もと、すき間に気をつけてね。
そう。
せーの、ジャンプ!
無事ホームに降り立ち、彼女は誇らしげにぼくの顔を見上げる。
彼女が見ている景色。
それは何十年か前に、ぼくもここで見た景色だ。
祖父に連れていってもらった動物園。
はじめて見た、ぞうさん。
大迫力のインド象を前に、少年のぼくは言葉を失った。
こんなに大きいのに、その目はなんて優しい。
今日、彼女にもそんな思い出を作ってやることができるだろうか。
大人になっても色褪せないような、驚きと感動の記憶を。
動物園のゲートの前で、彼女に訊く。
さあ、何が見たい?
えーと、と瞳を宙に浮かせて、彼女は言った。
ぺんぎんさんがいい!
今日はぞうさんで勘弁してくれるかな...?
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