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『バジュランギおじさんと、小さな迷子』

SNSで気になる作品を見かけてもタイムラインでふーっと流れていき、そのまま一生ご対面なし。ということは往々にしてある。

この作品もそのうちのひとつになっていたはずだったが奇跡的にSNS上で再会を果たす。
公開が今週いっぱいだと知り、思い切ってチケットを予約した。

インド映画は初めてだったが圧倒的なスケール感と暑そうな中で歌い踊る明るさには元気をもらえた。

【ストーリー(ネタバレあり注意)】・・・
口をきくことのできないパキスタンの女の子シャーヒダーは口がきけるようご利益を求めてインドのモスクを目指す。国境付近で母親とはぐれ、インドをひとり彷徨っていると、ハヌマーンへの信仰を熱く歌う男、バジュランギと出会う。勉強はできないがまっすぐな男。デリーに出稼ぎに来ていて、寄宿先の娘と婚約をするべく実直に働き、家の購入資金を稼いでいた。

警察に届け出てもお手上げ。
数日だけ預かるはずだったが、家に帰す手立てがない。そもそも言葉を話せないので情報がほぼない。だが一緒に暮らすうちにシャーヒダーはインド人ではなくパキスタン人であることが分かった。
インドとパキスタンには歴史の確執があり、緊張状態にある。ビザを取ることも容易ではない。迷子なのだからパスポートがあるはずもない。正攻法では彼女を国へ帰すことはできないのは明白だった。

ツアーエージェントに相談すると「パスポートがなくても国に帰す方法がある」と法外な金を要求される。だがバジュランギは婚約者と話し合い、金を出すことにする。
エージェントにシャーヒダーを引き渡そうとするが彼女は離れたがらない。無理に別れを告げて雑踏を歩くバジュランギ。すると嫌な予感が脳裏をよぎる。慌てて来た道を引き返すと、シャーヒダーは置屋に売られる寸前だった。
腕のたつバジュランギは周りをボコボコにし、シャーヒダーを救出。間一髪。
シャーヒダーを無事に家に帰すには自分が送り届けるしかないと確信する。それはビザ無しでパキスタンに密入国することを意味していた。軍人に見つかれば銃殺されかねない。だが、明るく信心深いバジュランギは「ハヌマーン様が守ってくださる」と迷うことなくシャーヒダーと旅に出た。

初めはパキスタンでスパイとみなされ、散々危ない目に遭いかけるが、バジュランギの馬鹿正直さ加減にパキスタン人も心を動かされ始める。パキスタン警察や軍はバジュランギを逮捕しようと躍起になるが、国民はバジュランギを助け始める。ネットで彼のことが拡散され、インドとパキスタン両国に連帯感を与える。シャーヒダーは無事に家に帰ることができた。
・・・

インドとパキスタン。ヒンドゥー教とイスラム教。
隣国ながら相容れない価値観をもつ中で共通することは、信心深さ。
ヒンドゥー教であるバジュランギは抵抗がありつつも、シャーヒダーの為ならモスクへ足を踏み入れ、旅の途中にはムスリムに助けを求めた。
他人の為に危険な行動を顧みないことは現実には何の得にもならず、英雄にもなれず、何ならでしゃばりなおせっかいと思われる傾向にある。余計なことはしない方が良いのだ。だがバジュランギを見ていても偽善を感じない。信仰があるから。自分の満足の為に行うのではなく「ハヌマーン様との約束」であるから。

信じれられるものがあると人はここまで強くなれるだとグッときた。

 余談だが、滅多に映画を観に行かない私が急遽映画館に駆け込むだけの理由があった。自分の身の回りで受け止めきれないことが同時多発的に置き、それらを考えない時間が必要だった。没入できる何かを。スクリーンとダイナミックな音響。今の自分を映画館の外に置いて、作品に逃げ込みたかった。

東京の日常から、インドへの逃避行は無事に成功した。仕事終わりのレイトショー。疲れた体に終電ギリギリで帰宅したが心は晴れやかだった。ありがとうバジュランギ。

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